Ⅰ
『アリスの涙』
時の権力者は『アリスの涙』世界の全てを治めることができる宝石を求めて世界を旅したという。しかし、アリスの涙は宝石ではなかった。『アリス』という名の少女の涙だったのだ。それを知った権力者たちは嘆き悲しんだ。アリスは世界最強の王と言われた『日本』の八重國博の妃だった。
『アリスの涙』はここから始まる
近代技術と昔からの伝統が混合した国 『日本』 そこを治めるのは王の八重國博そして世界の全てを治められる涙を持つアリスという名の少女だった。
宮廷内
アリスはパタパタと軽やかな足取りで國博のもとへと来た。國博はアリスのことを抱き上げた。
「どうかしたのか?アリス。何か欲しいものでもあるのか?」
國博は無表情で言った。それに対してアリスはニコニコしながら「そんなんじゃないよ」と言うと國博は不思議そうに首を傾げた。アリスは國博に降ろしてと言った。國博はまだアリスのことを抱っこしていたかったようで中々降ろそうとしなかった。アリスはここで必殺上目遣いをした。國博は少し顔を歪めるとアリスのことをゆっくり下へ降ろした。アリスは腕を大きく広げると助走を付けて國博に抱き着いた。國博は予想外の行動だったらしく驚きを隠せていなかった。
「ア、アリス!?」
「へへ、驚いた?」
「ああ。」
「今日は、國博様のことを甘やかそうと思って!でも、國博様は抱き着く前に私のこと抱っこしてこっちがびっくりしたんだよ。もう!って聞いてるー?」
國博は「甘やかす」という単語にニヤニヤしていた。今までアリスのことを散々甘やかしてきた國博はアリスから甘やかされる前に甘やかしていたから、アリスの一言は國博にとって甘美な響となっていた。
アリスは怒りながら「なので、今日はお仕事は終わりです。早く、お部屋に戻りますよ!」と言いながら足をばたつかせていた。國博は愛おし気にふっと笑った。