出現した木の龍
東方projectの二次創作作品です。
できるだけ東方を知らない人にでも楽しめるように書いてみますが、二次創作でありストーリー以外はオリジナルでないのでお気をつけ下さい。
ある日、幻想郷に突如巨大な大木が現れた。
地に突き刺さった尻尾のような幹と根から、天高く伸びそれは天人達の住む場所までを突き伸び天辺を見たという妖怪たちの話からするとまるで龍のような頭の形をしているらしい。
「どう考えても異変ですよこれは!」
「別に悪さしてる妖怪もいないじゃない、幻想郷にこれといった問題も起きてないしほっといていいのよ」
必死にこれは異変だ、解決しろと訴えかけているのは−伝統の幻想ブン屋−烏天狗の射命丸文である。異変があれば姿を現し、新聞を売り歩く新聞屋を生業としている。今こうして異変だということを主張しているのも幻想郷の心配ではなくただ新聞のネタがないからだろう。
そして講義を受けているのは−楽園の素敵な巫女−人間の博麗霊夢だ。博麗神社の巫女であり幻想郷には決して欠かせない存在であり、幻想郷と外の世界を隔てる博麗大結界の様子を見張る管理するものでもある。
「お願いしますよ! 最近は平和で平和で新聞が埋まらないんです!」
「さらっと本音が出たわね……めんどくさいし何言われようと今回は何もしないわよ。それじゃバイバイ」
そう言って涙目の文を横目に霊夢は神社の奥に行ってしまう。しかもピシャッと音をたてて襖も閉められた。
それもそのはずである、突如姿を現した龍の大木は摩天龍と名付けられ、人里の人間や人間と親睦の深い妖怪などがこぞって見にやってくるような観光地になっているのだ。しかも龍というだけで連想された龍神を祀る場所とまで言われている。
幻想郷の絶対的な存在である龍神に似た形の大木に向かって異変だといって向かうなど、かなりの罰当たりである。
「さて、今日はお賽銭あるかな〜?」
神社の前に一応置いてある賽銭箱の中を確認する霊夢、だが神が確実に存在している幻想郷の神社になら確実にあるであろうお賽銭が一文たりとも入っていない。いつものことではあるが、これでは生活もろくにできない霊夢はがっくりと肩を落とす。
「今日の晩御飯もどうにもできないのに異変解決とかしてる場合じゃないわよ、でも生活費がどうもねえ」
そんな独り言をつぶやく霊夢の前に、箒に乗った濃い金髪の少女が飛んできた。白黒の服を着ていかにも魔法使いですといってそうな高い三角帽をかぶっているのは−普通の魔法使い−人間の霧雨魔理沙だ。霊夢とは良き友でありライバルに当たる少女で、人間ではあるが魔法のセンスはいい、特に火力が。
「よお霊夢、また生活費が枯渇してんのか?」
「見ての通りよ、なによ奢ってくれんの?」
「あたしは借りることははするが決して貸さないぜ、そんなに飯が食いたいならレミリアのとこにでも泣きついたらどうだ?」
−永遠に幼き紅い月−レミリア・スカーレット、紅魔館という幻想郷では珍しい洋館に住む吸血鬼だ。確かに彼女の家は毎日のように豪勢な食事が出るような見た目の大きな家に何百人ものメイド、門番や地下には大きな大図書館まである。
だが、妖怪の家に金がないから飯をくれというほど霊夢もバカではないが。それも相手の家の主人は吸血鬼、人の血や人肉を出されても食えたものではない。専属のメイドは人間だがお嬢様一筋、どうも頼み込んで食べ物を分けてくれるような人ではない。
「あんたが頼んでみてよ、きっとその体にいっぱいボディピアスがつくわよ」
「物騒なこと言うなよ、あたしはまだ死にたくない」
「じゃあ守矢神社……は行きたくないし、命蓮寺も修行させられるのがオチでしょ。はぁ〜もうどこへ行けば私のご飯はあるの……あ!」
「どうしたんだ霊夢、何か思いついたか?」
「霖之助にたかってくるのが一番早いわよ!」
そして二人が向かったのは妖怪の山の近辺に位置するガラクタ屋といえば言い方が悪いが幻想郷に入ってきたものを集め、店で売る物売りの商売をしている香霖堂という店だ。そこの店主、森近霖之助に会いに来た。
「霖之助さんいるー?」
「どうしたんだい霊夢、お祓い棒でも壊した?」
「違うわよ、お金がなくて困ってるの」
「ああ、じゃあとりあえずお客さんが来たら適当に商品の紹介をしてくれるだけでも」
「バイト紹介しろって言ってるんじゃないわよ! 私の分の晩御飯を出しなさいって言ってるの!」
「霊夢、今のお前ただのクズだぜ……」
金のない巫女はここまで腐るのかと、久しぶりに霊夢のダメな部分を見た魔理沙は大きくため息をついた。
「それならあの異変を解決すればいいじゃないか、あの摩天龍だっけ?」
「異変じゃないと思うから解決してないのよ、まず元凶もわからないのに適当に飛び回っても意味ないじゃない」
「でもな霊夢、そうやって放っておくといつの間にか大変なことになるんだ」
そんな会話を交わしながら霖之助、霊夢、魔理沙(ちゃっかり食べてる)の三人で香霖堂にいた。
それから数十分、飯だけ食べてお茶を飲んだ霊夢はささっと神社帰ってしまった。まあ昔ながらの友人ということで今回は世話を見た霖之助も少し苦笑いだ。
「おっと、もう月が傾き始めてるわね。早く帰らないとめんどくさいことになるかもしれないしちょっと急がないと」
博麗神社に向かう途中に横断している妖怪の山の木の陰から何者かの視線を感じつつ、霊夢は神社まで飛ぶ速度を上げた。