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あいつの恋事情。  作者: 神崎結衣
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私の君の心は交わった。

 学校帰りのいつもの道。私の言った言葉を最後に、私と西条風月さいじょうふづきは静寂に包まれた。

「うそ……。」

それを破ったのは風月の今にも消えそうな、弱った(ひな)のような声だった。


 「本当。」

私はそれだけ言うと足元に視線を落とした。白いスニーカーが泥で黒くなっている。私は中学生だ。ふと思った。なんだか、得体の知れない別の世界に連れてこられた気分になっていた。それは、隣ですすり泣いている風月とすれ違う人たちの好奇な目つきのせいかもしれない。風月の肩にそっと腕を回す。風月に言わなけばよかった。まるで風月の悲しみが全身を締め付けるようだ。心が痛いことなんて本当にあるんだ。私の腕の中で震えている風月をそっと抱きしめた。


 『遊びだよ、あーそーび。いやぁ、好きじゃねぇけど彼女がいるっていいですなぁ。』

ふざけた大翔(ひろと)の声が頭の中を何往復もしている。

「ごめん。」

私の目にも涙が浮かんできた。静かに流れ落ちる私と風月の涙が地面で重なる。

「ちがう。」

風月は大きく首を横に振った。細い二つの髪が揺れる。しばらくして、ふーが悪かった、という言葉を付け足した。

「ありがとう。」

そう言って笑った風月は今までの風月ではないように感じられた。風月を覆っていた何かが今落ちたように思う。


 中学を卒業した今。私は県内のトップ高校に進学した。風月は私立高ではあったものの名門と呼ばれる学校に進学した。風月は今も恋をしているそうだ。毎日のように来る風月からの惚気(のろけ)メール。それでも、それが私の楽しみになっていた。今度はしっかり風月を愛してくれている人だそうだ。写真も送ってもらったが、顔はそれほどかっこいいと呼べるほどではなかった。面食いの風月らしくないと言ったら、人間の本当のかっこよさが見えた気がするなんてふざけたこと言ってけど。風月が幸せならそれでいいか。

お前も好きな人つくれよ、なんて大きなお世話だって。

全五話。『あいつの恋事情。』いかがだったでしょうか。

話がとっ散らかってしまいましたが……。

次回の小説も読んでいただけたら光栄です。

読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

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