恋のライバルなんて可愛いよ。
「――も大翔のこと好きって。」
そんな私の声はトラックの騒音でかき消された。もともと、声の大きい方ではない私。ただ、『聞こえない』と言われるのは心底嫌だ。生徒会の書記局員兼バスケ部の部長の私の立場からすると、本当に気に入らない。隣で髪いじりを始めた西条風月並みに、いやそれ以上に自尊心が高いと自覚している。
「えっ? 何? 聞こえない。」
その言葉が私の嫌いな言葉だとも知らずに風月は何気なく言い放つ。まぁ、それを知っていたところで言うのを躊躇うほど風月は性格が良くない事も私は知っているが。
「だから、乙川愛菜も好きだって言ってた。」
愛菜は私達のクラスメートだ。肩先ほどのボブカットで赤いふちの眼鏡をかけている。可愛らしい女の子だ。
「乙川!? 」
いきなり大声を出した風月。予想外の私の言葉にうろたえているようにも見える。
「マジ……で……」
突っかかりながら風月が呟く。私はそんな風月を見ていない振りをした。傷ついているようにも見える風月を直視できるほど私の心は強くない。それに、私は風月に大翔を諦めてほしかったのだ。愛菜、女子力の塊みないな女の子と対等に戦うことができないと風月自身も痛いほど自覚していることを私は知っている。だから私はあえて愛菜の名前を出した。もちろん嘘なんかじゃあない。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
数学の再テストを受けている風月をぼんやり窓の外を眺めながら待っていた。今日は暑いな、なんて思いながら綺麗に広がる青空を見上げた。
「なぁ、大翔? 」
そんな男子の声に視線を目の前の道路に落とすと、大翔とその友達の天海佑真だった。
「ん? 」
聞こうとしなくても聞こえてしまう大翔の声。
「お前、西条と付き合ってるんだって? 」
佑真が足元の石を蹴りながら、冷やかすように言った。
「あぁ、うん、まぁね。でも……」
その後の言葉に私は驚愕した。大翔ってそんな奴だったんだ。風月とそれほど仲が良いという訳ではないけれど、私だって女だから。
「最低。」
心の底からそう思った。口にも出たけど。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
さっき私が言った言葉に落ち込んでいるであろう風月に私は言った。
「ねぇ、風月。」




