あいつとあいつの好きな奴。
昨日からずっと気になっていたこと。全然聞くことができないまま学校が終わった。なかなか話を切り出すことのできない私のせいか、それとも全く話の進まない西条風月のせいか。別にどっちのせいでも構わないけど。
「帰ろー。」
風月は教室のドアから私の名前を呼んだ。うん、と短かく返事を返してから終わっていない帰りの支度を再開した。
「まだー? 」
あからさまに不機嫌な風月の声が私を急かす。誰のせいで支度ができていないと思っているんだ? お前に貸した英語のノートがなかなか返ってこないせいだろ。私のイライラは募るばかりだ。
「ごめんね。お待たせ。」
私は小走りで仏頂面の風月の元へ行った。笑ってればまぁまぁ可愛いとは思うのに。仏頂面の風月は女子特有の『怖さ』を放っている。まぁ、風月はいわゆる裏を支配しているボスみたいなものだけど……
「ねぇ? 結局、聞けなかったんだけど。前も大翔と付き合ってなかったけ? 」
帰り道で私は風月に問う。今日は教科が多くて鞄が重い。鞄に弁当箱とペンケースしか入っていない風月の足取りは軽快だ。
「うん? 付き合ってたよ? 」
なぜ、お前は質問に疑問形で返すんだ? っていうか、軽すぎないか?
「えっ、あ、うん。そっか。でも、別れたんでしょ? って言うか、もうあんなヤツ知らないって言ってたじゃん。」
「でもー、好きって言われちゃったらー。しょーがないじゃん? 」
あぁ、そうですか。
「そっか。やっぱり、好きだったんじゃないの? ずっと付き合ってればよかったのに。そうすれば、もう三か月くらいじゃない? 」
私って結構言う方だな、と改めて思った。そんなに仲の良い間柄ではない風月にここまで言うなんて。自分でも驚いた。
「うん。そーだね。」
機嫌の悪い風月の声が返ってきた。当たり前か。人に指図されるの嫌いだからな、風月は。風月のそんな性分を知っているのに、わざと風月の機嫌を悪くするような言葉を言った私は本当に性格悪いな。
「あっ、でもさ。」
私は思い出したように呟いた。本当に思い出したんだけど。自分でも思うほどわざとらしいものだった。
「なに? 」
何をそこまで怒っているんだよ。もう少し、心を大きくした方がいい。なんて私は言える立場じゃないか。
「――も大翔のこと好きって言ってないけっか? 」
私の声は横を通り過ぎた大型トラックにまたも遮られた。
「えっ? 何? 聞こえない。」
風月の相変わらず不機嫌な声がトラックの過ぎ去った静かな住宅地に響いた。




