恋したあいつ。
恋の季節はいつだろう? 『青春』と書くくらいだから春なのだろうか?
いや、一年中だと思う。だって、隣を歩くこいつは一年中、恋をしているから。
西条風月の二つ結びの細い髪が大きく揺れた。
「マジで、ヤバくない? 」
風月は興奮状態。男子からメールが来たらしい。
「へぇ、誰から? 」
風月の恋事情にそれほど興味はなかったが、その後の空気も考えると聞いておいた方がいいと判断した。
「大翔。」
風月は短く答えると手元のスマホと睨めっこを始めた。大翔、ああ隣のクラスの。
丸刈り頭が印象的のいわゆる可愛い系男子。大翔のこと好きだったのか、初めて知ったな。
別に、何で教えてくれなかったの? なんて叫ぶ間柄でもないだろう。大翔とのやり取りに夢中なのはわかるけど、私は短気なんですけど?
「大翔、何だって? 」
しびれを切らした私が聞いた。
「ねーねー、聞いてよー。」
満面の笑みを浮かべながら風月は言った。うん、だから聞いたじゃん。って言いたくなっけど、なんとかその言葉を飲み込んだ。
「好きだって。もー、どしよっ? 」
ぴょんぴょんと可愛らしく跳ねる風月。言ったら悪いけど、全然合ってない。
身長百六十五で体格もしっかりとしている風月にその仕草は似合わないと感じた。
「よかったじゃん。大翔のこと好きだったんでしょ? 」
そんな私に間を置いてから風月が言った。
「えっ? 」
「えっ? 」
風月の言葉を繰り返してしまった。でも、『えっ? 』ってどういいう意味だろう。
「好きじゃないよー。気になってもなかったしー。」
風月はそう言いながら、スマホを鞄にしまった。でも、まるで好きな人に告られたかのように嬉しそうだ。
「好きじゃないの? 」
思わず聞き返した。家はもうすぐのところまで来ていた。
「うん。でもー、今好きになっちゃった! 」
恥ずかしそうに笑う風月。健康的な色の頬が赤く染まっているように見える。
「そう。」
私は短くそう言った。それ以上、話を広げたくなかった私の救いはもう目の前に家があったという事だ。
「じゃあね。また明日。」
私と風月はお互いに手を振りつつ別れた。
二階の自分の部屋に上がってからふと思い出した。風月って前、大翔と付き合ってなかったけ?




