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116話 奴隷たちの向かう先っぽい

シリアス抜けたから……!いける……っ!

 世界の時間が巻き戻ったその日、とある奴隷市場は混乱に陥っていた。


「奴隷が逃げ出したぁ!? 枷はしてあったんだろ!?」

「は、はい! 普通の枷だけでなくしっかりと魔術による枷も……」

「ちっ……それで? どの奴隷が逃げた?」

「え、えっと、ミーシャという亜人で種族は――――「親方ぁ! レイア・アンジェリークが檻だけじゃなく建物もろともぶっ壊しやがった!!」」

「なっ、建物ごとだと!? いくらアンジェリーク家の始祖返りとはいえ、そんなことができるわけ――――「まぁ、以前の私にはできなかっただろうな」」


 男たちが全員声のした方を振り向く……そこには。


「初めまして親方さん? ちょっと脱走するから挨拶に来ました」

「私の方は一度会ったことがある……と思うが……どうだっけ?」


 銀狼の少女と金孤の少女がいつの間にか立っていた。


「き、貴様ら! なんで脱走なんてしたんだ!!」

「え、そりゃあ奴隷なんて……なぁ」

「普通に考えれば逃げ出したいと思うでしょう?」


 それはほとんどの奴隷が思っているだろうのこと……しかし。


「では……何故ここに戻ってきた? 普通は挨拶などせずに混乱に紛れて逃げるだろう?」

「んー……理由は二つほどありまして……」


 銀狼の少女は二本の指を立てて微笑む。


「一つはあなた方が何千、何万と私たちに奴隷魔術をかけようとそれを跳ねのける自信があったため、そしてもう一つは――――」

「キョウサイと名乗るお方が来た時、こう伝えろ『レイアとミーシャはあなたの事を覚えています』とな」

「――――残念ですが、それは間違いですよ? レイアさん、ミーシャさん」


 そんな声が聞こえると同時に、どこからともなく魔法陣が現れ、そこからウサギ耳がぴょこんと飛び出ている。

 と思ったら、そのウサギ耳がくっついている小さな顔の兎族の少女が魔法陣から出てきた。


「兎族だと……?」


 親方と呼ばれた奴隷商はそんな兎族を見てニンマリと笑みを浮かべる。


「お前、ギアスの兎族だな? ちょうどいい、苦しみたくなければそこの逃亡奴隷を捕まえろ!」

「……え? 誰?」

「なっ……ええい! 身の程を知れ!」


 奴隷商は魔力を込めた手を兎族の少女に向けるが、少女は一切堪えた様子はない。


「き、効いてないのか……?」

「いえ、バッチリ効果は出てますよ? ほら」


 兎族の少女は肩を出してその証拠を見せる。

 歪なその紋章は刻印者を苦しませる色……どす黒い色を帯びていた。


「ね? ちゃんと使えているでしょ?」

「な、な、な……」


 兎族の少女は身だしなみをと整え、その理由を淡々と語る。


ギアスの特性は全ステータスを四分の一にし、ギアス発同時に一定数のHPを減らし続け、所有者がいる限りなにがあっても(・・・・・・・)HPを1で止める……私の場合は極端にHPが低かったから、秒間1ずつ減らされていたみたいですね? ……やっぱり悪質ですね、これ……ま、たかが四分の一にされたところでどうとも思いませんし、減る以上に回復してるので実害はないのですよ」


 兎族の少女はそう語り終わると、今度は可愛らしい笑みを浮かべた。


「ところで、さっきのお二人が言った伝言ですが、訂正箇所があるんですよねぇ」


 兎族の少女はミーシャとレイアの方に向き直る。


「私、ルナも主様の事覚えているんですよ。そのことも付け加えていただけません?」


 ミーシャとレイアは肩をすくめると…………めちゃくちゃルナを撫でまわした。


………

……


「しかし、何でいきなり過去に………あ、いえ、恐らく主様のせいなのでしょうが、過去に戻す理由がわかりません……」


 ルナたちは一度街を離れ、ルナと初めて会った雪山に腰を据えていた。


「んー……ゼロとキョウサイ様が何かしらの衝突があった……ということぐらいしかわからないわねぇ」

「私もそんな感じだな。おっきなぶつかり合いがあったと思ったら、急に暗くなって、その後白くなって気が付いたら過去って……口に出しても意味わかんね」

「私も同じです……」


「「「……」」」


「これはもうアレしかないですね」

「だな」

「ですね」


「キョウサイ様を」

「ご主人様を」

「主様を」

「「「探しましょう!」」」


 三人は頷き合ってある方角に視線を向ける。


「そうと決まればドレット王国に行くわよ!」

「カチコミだぁぁ!!」

「アイエエエ!? カチコミ!? カチコミナンデ!?」


………

……


「侵入します! ドレット城!」

「ミオたちの魔力反応アリだ! かなり小さいが確かにいる!」

「ええぇ……このノリでいくんですかぁ?」


 そう意気込んでドレット城に侵入する三人だが、入った途端に違和感を覚える。


「……静かすぎますね。とりあえずミオとリンのところに行きましょうか。どうやら動いていないみたいですし」

「どうやら城内のほとんどが眠っているみたいだ……ミーシャ」


 ミーシャとレイアはお互いに頷き合って………。


「「カチコミだぁぁぁ!!」」

「この雰囲気でまだやるんですか!? というかミーシャさんキャラブレてません!?」

「大丈夫、魔術で聞こえないようにしてるし、万一漏れてても、皆眠ってるから恥ずかしくないわ」

「……さいですか」


 三人は魔力を辿り、とある扉の前に立つ。


「ここね」

「ここだな」


 ミーシャとレイアは頷き合って息を吸い込み――――。



「失礼するわよ」

「入るぞー」

「普通に入るのぉぉぉ!? ここにきて普通に入るんですか!?」


 そんな事を言うルナに、ミーシャとレイアは可哀そうなものを見るような視線を向ける。


「おかしいです……絶対におかしいです……ぐすっ」


………

……


 ガチャり、と扉が開く音がする。

 疲れて眠ってしまった澪を膝枕していた鈴は、そちらの方に顔を向け声をかける。


「おかえりなさ――――」

「失礼するわよ」

「入るぞー」

「普通に入るのぉぉぉ!? ここにきて普通に入るんですか!?」


 予想外の入室者に鈴は目を見開く。


「あ、あなたたちは……!」


 鈴の言葉に、ミーシャとレイアはルナに向けていた視線を鈴に向ける。

 ルナはなにかブツブツ言っていた。


「ミーシャさん、レイアさん、ルナさん……」


 鈴は三人の姿を見て身震いをする。


(私たちのステータスは初期値に戻ってしまった……だけど、この感覚……三人は戻ってないっていうの!?)


 そもそも、今の時点のミーシャたちを鈴は知らない。

 だが、強斎というイレギュラーに会う前……普通の奴隷の頃からこんな存在だったと言われれば……この世界はインフレしすぎて泣きたくなるだろう。


「と、というか! 三人は私たちの事覚えているの!?」


 いち早く確認したいことはそれだった。

 過去に戻り、今までの事は夢だったんじゃないかと思ってしまうような朧げな感覚……。

 転移者である鈴ですらこれなのだから、元々この世界の住人である三人は抵抗なく受け入れるものだと思っていたのだが……。


「え、まぁ……いきなり暗転したところまでしか覚えていませんが……」

「あ、暗転?」

「ええ、でも、ステータスはそのままですが身体は本当に過去に戻ったみたいですよ?」

「ず、ずるい……」


 ミーシャの言葉通りなら、この三人はステータスはそのままで過去にもどってきたらしい。


(な、なによその『強くてニューゲーム』は……ただでさえ反則級に強いってのに………)


 鈴が頬を膨らませ、ミーシャに一言言ってやろうと口を開きかけたその時――。


「ようやくきたか……さて、もう一人は誰だろうな?」

「え?」


 レイアの呟きに疑問を持ったその瞬間、ドアが開かれた。


酔ってないよ?ホントだよ?

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