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113話 決着っぽい

(´・ω・`)やあ

更新停滞していた原因が一段落したので(言い訳)

で、一気に更新するために書き溜めしようとしたけど、流石に三年近く待たせるのに書き溜めとか草も生えないので……というか、書き溜めとか性に合わなかった(本音)

これからチマチマ更新したいです(願望)


筆とノリがかなりひどいもので、ブクマ削除とかブラウザバックとかしちゃいそうになるけど、次話には治ってるからちょっと待ってて……

「はっ!」


 強斎が膝をついて、地面・・を殴る。

 その衝撃で地面にひびが入り、しまいには割れてしまった。

 地面が割れたことによって、無数の土やら石が樹の方に飛んでいく。


「うお、やべっ」


 樹は咄嗟に飛び上がり、間一髪で回避するが、それがいけなかった。


「もらった!!」

「くっ!」


 強斎はジャンプした樹に向かって自分もジャンプする。

 今の二人は人間だ。

 空が飛べないこの状況で、先に飛び上がった樹の方が空中戦では圧倒的に不利であることは明らかである。

 強斎は樹に自身が追いつく寸前で一回転をし、そのまま踵落としを頭にぶつけた。


 防御も間に合わず、樹は地面に少しめり込む力で叩き落とされてしまった。

 だが……。


「いっつ……。脳天に遠慮なしに踵落としとか、容赦ないな」

「ちっ、生きてやがったか」


 樹は若干ふらついているが、致命傷とまではいっていない。


「流石に生きてるよ」

「早急にくたばればいいものを……」


 強斎は樹の懐に潜り込み、全力で腹を殴った。

 続けて顎を蹴り上げ、少し宙に浮いたところで樹の顔を鷲掴みにする。

 眉間にシワを寄せ、少し考えてから樹を地面に叩きつけた。


「どういうつもりだ」


 少し前にも同じように問いかけたが、雰囲気がまるで違う。

そんな雰囲気をあしらいながら樹はへらへらと笑いながら起き上がる。


「どうって……なにが?」

「とぼけるな、何故攻撃を仕掛けてこない」


 強斎は樹の胸ぐらを掴み、引き寄せる。


「そんなの簡単だよ……強斎、お前の攻撃は全く殺気がない。そんな覇気のない攻撃、何度喰らおうがお前が疲れるだけだ」

「……ちっ」


 先程強斎が樹に与えた傷は、いつの間にか塞がっていた。

 いや、そもそも――――。


「傷すら……与えられてなかったのか?」

「ピンポーン。お前が勝手に俺を傷つけたと錯覚したんだよ」


 樹は強斎の左肩に手を置き……軽く押した。


「!!??」


 唐突に来た左肩の激痛に、強斎は思わず後退する。

 あの一瞬で何かしたのかと思うが、樹は本当にただ軽く押しただけ・・・・・・・・・なのだ。


「どうやら、俺が攻撃していないという錯覚までしていたようだな」

「いつの間に……」


 そう、あの一瞬では軽く押しただけだが、強斎の攻撃を受けながらも着々と強斎にダメージを重ねていたのだ。


「お前は昔からそうだったよな。思い込みが激しく、錯覚しやすい」

「知ったような口を……!」

「ああ、知っているさ。ずっと見てきたからな……」


 強斎の胸ぐらをつかみ、校舎に投げつける。


「言ったろ、鈴木優花はお前に恋心を抱いてるって……。その相手が気になるのは当たり前のことだろうが」

「いっつ……。好きな人を振り向かせる為に殺しまくったキチガイストーカーに目をつけられていたとはな……ゾッとするぜ」

「ははっ、酷い言われようだが……そうだな、その通りだ」


 樹はその場で土を蹴る。

 その土は勢いを持って強斎に襲いかかった。


「っ!」


 強斎は急いで立ち上がり、その場から離れる。

 ……が、しかし。


「遅いぞ、小鳥遊強斎」

「嘘だろ……!?」


 逃げた先には樹が立っており、そのまま蹴りを入れられてしまった。

 強斎は吹っ飛ばされずにそのまま立ち止まり、反撃を試みる。


「お前、本気で戦ったことないだろ」

「だから……どうした!」

「一対一での戦いで相手に集中することに慣れていないから、動きが露骨すぎるんだよ」


 確かに強斎は地球にいた頃も含め、本気で殴り合い等したことがなかった。


「スペックは強斎。お前のほうが上だろうな。俺はお前みたいに天性的に力を持っていたわけじゃない……訓練で手に入れたものだからな。天才にはどうしても勝てんよ……だがな」


 強斎の攻撃を紙一重で避け続け、最小限の動きで確実にダメージを与える樹。


「経験の差はあまりにも大きい。死ぬか生きるかの戦いをしてきた俺に、お前は絶対に勝てない」

「訊いてもいないのにベラベラと……!」

「それだけ余裕があるってことだ」


 強斎は一旦距離をとり、息を整える。


(実力は俺より下だ……? 力も動きも俺と同等以上じゃねぇか……っ)


 そう心の中で愚痴るが、そうしたところで状況は変わっていない。

 樹の言うとおり、強斎は地球にいた頃も異世界に転移した後も、命をかけた戦いなどしたこともなかった。

 強斎は武術に関して天才という型では言葉では収まらないほどのセンスを宿していた。

 その飛び抜けた才能はある程度自覚しており、理由も考えたこともある。が、結果として優花に育て上げられ、優花が規格外だったという結論に至ってしまったのだ。


「なぁ、強斎よ。なんで鈴木優花という存在がお前……いや、お前たちを気にかけていたと思う? いや、それ以前に――――何故、天賦の才能という範疇に収まらないお前たちが同じ時代、同じ場所に集まっていたと思う?」

「何を……知っている」


 強斎は警戒しながらも樹の言葉に耳を傾けていた。

 この言葉の続きは……どうしても聞かなければならない。直感でそう感じ取ってしまったのだ。


「何を……か。そうだな。俺が今教えられるのは……お前の生まれた場所ぐらいなら教えてやってもいい」

「俺の生まれた場所? そんなの、地球の――――」

「いや、もうその時点で違うんだよ」

「――」


 強斎は何も言葉にしなかった。

 思考が一瞬だけ止まってしまったのだ。

 樹はそんなものお構いなしに話を続ける。


「強斎、お前はな。地球人じゃない。いや、そもそも人間ですら危ういところだよ」

「ど、どういうことだ!?」


 人間ではない。

 強斎は確かに散々そう言われてきたが、今までとはわけが違う。


「お前と優花……ああ、鈴木勇志もそうだな。お前たち三人は育ちは地球だが……生まれはココ。今は崩壊しちまってるが、俺が管理しているこの異世界だよ」

「なん……だと?」

「ついでにお前は神と人間のハーフだ。俺の親戚だな」


 ケラケラと笑う樹だが、強斎自身は全く笑えない事実だった。


「考えてもみろ。お前の初期ステータス、割と高かっただろ」

「俺の初期ステータスがか……? いや、勇志たちに比べれば――――」

「はっ、あれは別世界に来た時にお節介な神の恩恵だ。お前は自身の特殊能力のせいでその恩恵を突っぱねたんだよ。まぁ、こっちの世界に再転移したらステータスが生まれたばかりの赤ん坊と同じになっていたことには驚きだったな」


 樹は急に真面目な顔つきになり、強斎を睨みつけるように「だが――」と言葉を紡ぐ。


「最も予想外だったのは、お前がこの世界の核にたどり着き、更に書き換えプログラムを起動させ更にはそのバグを偶然見つけてお前自体がバグとなった……どれだけ低い確率でそこまでたどり着くと思う? 前提として神クラスのLUKに加え、お前みたいな一度転移してまた戻ってきた奴用のID更新も不具合を起こさないとスタートラインすら立てないんだぞ? なにしてくれてんの? お前」


 樹の話は途中からほぼ愚痴になっていた。

 だが、強斎はその愚痴に付き合っているような心境ではなかった。


(そうか……俺は……)


 強斎は何かを見つけ、何かに納得した。

 今まで引っかかっていた、その何かを――――。


「星川樹。お前に感謝するぜ」

「……」


 強斎は必要以上に人間にこだわっていた。

 鈴木優花が人間であるなら、自分も人間であるべきだと。

 だが、鈴木優花はゼロであり、生まれたこの世界で魔神として生きていた。

 そして、自分は地球人ではなく人間ですら危うい。

 ならば――――。


「俺は、人間をやめさせてもらう!」


 地球というしがらみに縛られる必要のなくなった強斎は……強かった。


 強斎は一瞬にして樹の背後に回り、脇腹を蹴る。


「っ!!」


 簡単に受け止められるだろうと思っていたが、その蹴りは綺麗に樹に入った。

 先ほどのように錯覚などではない。樹の苦痛に歪む顔がそれを物語っている。


「消えた……だと?」

「知らんがな」


 強斎はよろめく樹の足を払い、体勢が崩れたところで蹴り上げた。


「お前、さっき言ったよな。多少実力が離れていても経験の差がそれを埋めるって」


 宙に浮いた樹の胸ぐらを掴み、地面に叩きつける。


「なら……俺はその経験ごと……実力ステータスで覆してやるよ!」


 強斎はイザナギの……星川樹の魔術すら無効化しようと――――いや、既にしていた・・・・

 強斎の体を鈍らせていたのは全て『迷い』。

 バグ(強斎)は製作者(樹)をも殺す。

 それが、対処不可能まで成長してしまっては……もう、何もすることはなかった。


 そんな中、星川樹は――――少しだけ、笑っていた。


「そう、それだよ。強斎」

「何笑ってやがる……」


 直ぐに起き上がるだろうと身構えていたが、樹にはその予兆が全く見られない。


「――――3つ」

「?」


 急におとなしくなったと思ったら、樹は不意に語り始めた。


「強斎。お前が俺の正体に気づいた世界線だ。心当たりはないか?」

「……全くないな」


 強斎は空中に水球を作ると、それを樹の顔面にぶつける。

 全く威力は無いが、それは紛れもない『魔術』。強斎の本来の・・・姿だ。

 樹は特に驚くこともなく、ゆっくりと立ち上がって両手を振る。


「降参。俺の負けだよ。俺のほぼ全ての力を使った術式を覆されちゃ勝目なんてありゃしない」

「……そうか」


 と、そこで強斎はふと思ってしまった。

(俺は何のために戦っていたんだ?)


「……」

「ん? どうした?」

「いや、俺は何のためにお前と戦っていたんだろうって」

「あー……その領域まできちゃったか」


 樹は濡れた頭を掻くと、一つため息を吐いてから話し始める。


「お前は、強さを求めすぎたんだよ」

「……なんだと?」

「今、お前の身に起こっているのは『真神化』。俺みたいな一つの世界しか管理していない『神』なんかじゃい。『神』を管理する『神』そんな存在になろうとしているんだ」

「主神みたいなもんか?」

「主神なんてせいぜい神様の大将みたいなもんだ。お前はそんなレベルじゃねぇよ……ったく、今までよく人間でいられたもんだ」


 樹は座り直すと、強斎にもそうするように促した。


「お前がなろうとしているのは『真神』。概念そのものになろうとしている」

「概念か……それはちょっと嫌だな。だが、それと記憶が何の関係がある?」

「『真神』に個々の記憶なんて必要ない。知ろうと思えばなんでも知ることが出来るからな……ありとあらゆる経験、記憶、命。全て『真神』の前じゃ等しくなっちまうんだ。だから、『真神』という概念がお前から記憶を消そうとしている。今は俺の世界にいるからいいが、それも時間の問題だ」

「……」


 強斎は今まであったことを思い出そうとする……が、上手く思い出すことができない。

 何故この世界に来たのか、どうやってこの世界で暮らしたのか、誰とこの世界で過ごしたのか。

 はっきりと、思い出せない。


「どうしたら……いい」

「それはお前が一番わかっているだろう。……もう、手遅れだ」


 それはわかっている。

 だが、それでも――――。


「俺は、あいつらを……救いたい。今、この世界には俺とお前しかいないんだろう?」

「……確かに。世界は『無』になった。俺ももうじき死んで、新たな『神』になって別の世界を管理することになるだろうな」


 強斎の記憶にはもう誰もない。

 だが、記憶は無いが『存在』までは忘れていなかった。

 ありとあらゆるモノから超越した存在になってまで失いたくないもの。


「お前の望みは、自分の『記憶』じゃなくて。仲間の『存在』なのか?」

「ああ」

「……ひとつだけ、方法がある」

「っ! 本当か!?」

「身体はどうにもならんが、お前の記憶を保ったまま、そしてこの世界を元に戻す方法はある。……だが、『真神』の宿命として、永遠にあらゆる世界を回らなくてはならない。全知を能力で頼らずに取得するのは……困難だぞ?」

「ああ、わかっている」


 迷いなく肯定した強斎に、樹は苦笑い気味に息を吐く。


「お前が何度もこの世界をやり直しているというのは知っているな? やることはそれと同じ。『時間逆行』だ」

「……できるのか?」

「はっ、舐められたものだな。俺はこう見えても『真神』になる一歩手前だったんだよ。……その俺の存在全てを使って『世界の再構築』『時間逆行』『記憶の定着化』を行う」


 わかっていた。わかっていたが――――。


「やはり、お前の『存在』が必要なのか」

「おうおう、そんな悲しい顔すんなや。俺は全てをやりきったんだ。もう悔いなんてこれっぽっちもありゃしねぇ」

「ゆう……か? は諦めたのか?」

「……覚えてるじゃねーか」

「答えろ」


 樹は立ち上がり、軽く背伸びをする。


「お前に託したよ。『真神』」

「……」

「自分の記憶より仲間の存在を大切に出来るお前なら――――いや、これ以上は絶対に言わねぇ」

「そうか」


 強斎も立ち上がり、樹と対峙する。


「人の恋人を寝取ったんだ。ここは俺からお前に一つ、でっけぇ呪いをかけてやる」

「ほう、俺に効くのか?」

「だから舐めるなって。ここは俺の世界で、しかもお前はまだ未完成。これぐらいなら何とかなる」

「それで? どんな呪いをかけたんだ?」

「……死ねる呪いだ」

「……」

「『真神』として生きていくのにその残った『記憶』は余りにも大きすぎる枷だ。『真神』は基本的に死ねない……だが、本気で死にたくなったときは強く願え。そうしたらお前は死ぬことができる」


 樹は微笑んでから強斎に背を向けた。


「じゃあな、強斎。後のことは……頼んだぜ」











「あのサイコパス野郎が……こんなの、呪いでもなんでもねぇよ」

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