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105話 スライムの改造っぽい

「ね、ねぇ……レイア」

「私に聞かないで」


 ミーシャの問いの内容も聞かずにレイアは即答した。

 ミーシャもその事にたいして怒ってはいない。というか、気にもとめなかった。


「……私、聞いてきます」

「「ルナちゃん!?」」


 三人は今、物凄く戸惑っていた。


「ふふ……ふふふ…………! これで……ようやく……! ふふふふふ……」


 端から見て、強斎が壊れているからだ。


「いや、ルナちゃん! それはダメだよ!」

「ですがミーシャさん……この状況、どう考えたって非常事態……あんな主様、見たことありません」

「で、でも……!」

「大丈夫です。お二人はそこで見ていてください。それだけで私、何も怖くありませんから」


 ルナは可愛らしい笑顔を向けると、そのまま踵を返してしまった。

 その小さな背中を、ミーシャとレイアは見つめることしかできなかった……。



(大丈夫……大丈夫です。ちょっと気持ち悪いけど、私の大好きな主様なのです……それに、いくら主様でも、世界を崩壊させるような事はしないはず……多分。あ、ちょっと不安になってきました)


 今からでも引き返せるのでは? と思うが、後ろの二人にあそこまでカッコつけてしまった手前、引き返すのも癪である。


「これを……こうして……ん? こうか……?」


 そんな事を思っているうちに、とうとう強斎の前までたどり着いてしまった。


「すー……はー……。あ、あの────」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 ルナが声をかけた瞬間……強斎の前で何かが爆散した。

 その余波がルナにも襲いかかってしまったのだ。


「な、なんですかこれ……? べとべとして……っ!? これ、動いて……きゃっ!」

「ん? ルナか? すまん、ちょっと視界が……」

「だ、だめ……です……んっ! み、見ないで……くだ……さい……はふぅっ」

「え、ちょ。マジでどんな状況になってんの!?」

「あっ、う、動かない……で……」

「待ってろ! 今すぐ魔術で──」

「動かないでって──言ってるでしょう!!」


 そんな声と共に、ルナから圧倒的な魔力が放出された。

 ルナは強斎によってステータスを強化されている。よって──。


「ルナ! ちょっと静まれ! 精霊たちがどんどん失神している!」

「ふぅーふぅー!」


 怒っているのか、それともただ疲れたのか。ルナの顔は色っぽく紅潮していた。

 だが、強斎もルナも、自分に付着していた何かは綺麗さっぱり取れている。


「主様」

「はい」

「これは……スライムですか」

「はい」

「何やってたんですか?」

「……」


 強斎が黙秘した瞬間……。


 ────ドォン!!


 地響きが迷宮全体に届くかのような強さで、スライムを踏み潰した。

 隕石が落ちてきたかのようなクレーターが出来上がり、今にでもこの階層そのものが崩れ落ちそうだった。


「何やってたんですか?」

「スライムを改造していました」

「……え?」

「い、いや。俺のいた世界ではさ、スライムって最弱のイメージがあるんだよ」

「え、ええ。確かに、スライムはゴブリンと並ぶ……いえ、群れないですからゴブリンより弱い魔物ですね。まぁ、進化もしますし、核を潰さない限り死にませんし、なにより主様がテイムしているスライムに関してはドラゴンすら凌ぐ化物ですが」


 強斎はニヤリと笑みを浮かべると、ルナに足をあげるように促した。


「!?」

「だけど……防御力に関しては中々満足のいく結果は出せなかった。ルナもそう思ってたからこそ踏み潰したスライムを確認すらしなかったんだろ?」


 ルナは心底驚愕した。

 あの一撃はむしゃくしゃして放った一撃のため、かなり力を込めたはずだ。


「なんで……無傷なんですか……!?」


 ルナのその一言に、スライムがうねうねと動く。他のスライムが動いていないところを見ると、このスライムが核のようだ。

 先程、このスライムにあんなことをされたと思うと、急に恥ずかしさが込み上げてくる。


「ルナ……? 顔が赤いが……」

「な、なんでもありません! 私の体は主様だけのものです!」

「お、おう」


 そんなことを言っているうちに、スライムが飛び散った体を集めて、やがて元の大きさに戻る。

 ルナはそんなスライムから離れようと、少し引きぎみになっていた。


「これ……なんですか? もとに戻る速度も、それに……核の耐久度だって……けた違いじゃないですか」

「まぁな。なにせ、物理攻撃無効を目標に改造したスライムだし。攻撃力は全くないが」

「物理攻撃無効!?」


 ルナは更にスライムから距離を取った。


「何やってるんですか!! そんなことしたら世界が滅びますよ!?」

「そこまで壮大じゃなくね!? それに、色々と条件が厳しい上に失敗してるから」

「条件……? 失敗……?」

「そ、条件はこの迷宮にいるか俺のそばで魔力を吸い続けないと、ただのスライムと変わらないということ。失敗は俺のデコピンで破裂したこと。だな」

「あ、主様のデコピンって私の本気に近い足踏みより強いのですか……知ってましたけど……知ってましたけど!」


 ルナは頬を可愛らしく膨らませて、スライムを強く睨む。

 スライムはただただプルプルと震えるだけだ。


「なんか、このスライムに笑われている気がします」

「気のせいだろ」

「いえ、絶対笑ってます」

「気のせいだって」

「主様、このスライム蹴ってもいいですか?」

「え? あ、うん。別にいいけど」


 ルナは強斎から許可をもらうと、右足に魔力を込める。そして──。


「せぇい!!」


 可愛らしい声を裏切るかのように、物凄いエネルギーを持った蹴りがスライムに直撃した……が。


「わぷっ!」


 そのまま破裂し、ルナにスライムが大量にかかってしまった。


「うわぁぁぁん……。またベトベトです……っ!? え、ちょっ……んっ……この展開、さっきも……んんん!!」

「だから言っただろ……失敗だって。核以外は普通のスライムよりちょっと強いぐらいなんだ。……ていうか、ルナ。なんかエロいな……」

「ふえぇぇぇん……見ないでくださいぃぃ……」



………

……



「ルナちゃん……大丈夫?」

「ミーシャさん……ミーシャさぁぁぁん!!」

「うんうん……災難だったね……」

「見てたなら助けてくださいよ……主様に恥ずかしいところ見られちゃいましたよ!」

「あ、いや……その……。ルナちゃんが可愛かったから……ついつい見ちゃってたというか……」

「私、スライムに犯されていたんですよ!? スライムの○○○が○○○になって私に○○○した後に○○○されていたかもしれないんですよ!? そんなんで孕んでしまったらどうするんです!」

「あー……その発想はちょっとなかった……」


 ルナの危ない妄想に若干引いていたミーシャだが、スライムを見ているとふと真剣な表情に戻った。


(キョウサイ様は本気であの作戦を実行するつもりなのでしょうか……? 今まで私はキョウサイ様のすることは全て正しいと信じて疑いませんでしたが……)


「……ミーシャさん?」

「ん? どうしたの?」

「あ、いえ……少しだけ、ミーシャさんが怖かったので……」


(まぁ、今は考えないでおきましょう。いざとなったら私は──)

「ミーシャ」

「!?」


 今までずっと黙っていたレイアがようやく口を開いた。


「ミーシャは動かなくていい。そのために、ゼロたちが頑張っているんだからな」


 ミーシャもレイアも、奴隷になってはじめて強斎をの提案を否定したのだ。

 いや、この二人だけではない。ルナやゼロまでもが否定的だった。

 唯一賛成したのは戦闘狂のヨミぐらいだ。


「魔界と人間界の戦争。そして、ラグナロク……あんな終わり方は……私だって嫌だからな」

「「……」」


 先程の空気とはまるで違う、重みのある沈黙。

 そして、レイアが間を置いて話を続けた。


「全世界の敵になる……か。場合によっては奴隷契約も解除するとも言っていたな。私たちに敵を作らせないために」


 レイアは天を仰ぎ、静かに呟く。


「私は、こんなにも愛しているというのに……それでも、ご主人は自身を犠牲にして私たちに危害が及ばないようにするというのか……? そんなの……あんまりだ。誰もがご主人を憎み、恨み、恐怖するそんな世界……。私は、生きていける自信がない……。色んな事に気がつくご主人が、なぜこんな簡単な事に気がついてくれないのだ……」


 レイアは涙を流しそうになるが、天を仰いでいたため、なんとか堪えることができた。

はい、二巻決定しました。

発売は2月とのことです。

それと、肋間神経痛でした。痛かったです。

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