【俺の右手には異能の力を打ち消す力なんてない。】
非日常3
【俺の右手には異能の力を打ち消す力なんてない。】
俺はそんなバカ笑いしながら笑い転げる彼女を見て思ってしまった。
あぁ、とうとう頭がいかれたか・・・
「いかれてないわよ」
さっきまでの、可愛らしい笑声ことは、
裏腹にドスのきいた冷たい声音が聞こえた。
こ、こいつ常時不安定な性格なのか・・・
ギロッ
と言う効果音が、お似合いだろう、
俺が思っていること考えていることを察しているかのようだ、
今までのが演技だったかのように、
さっきまで涙を貯めてクリッとした大きな目が、
長細い鋭い目つきに変わって、俺をにらめつけた。
「ご、ごめんなさい」
まるで、蛇に睨まれたカエルのようだった。
はは、早く終わらないかな・・・
恐怖と悲しみを持ち合わせて、即終了を心の中で願う俺。
彼女は座ったまま、棒立ち状態の俺を下から上へと、
舐めまわす・・・
は、卑猥だな。
観察しているように、視線を上下に動かしていた。
終わったのか、彼女が口を開く。
「さて、突然で悪いんだけど貴方、たま、知らない?」
た、たま・・・?
そんなのは、全人類の男に
時に例外もあるが常時備え付けられている
あの、きん・・・
「ち、違うわよっ!灰色の珠のことっ!」
俺の下半身をチラチラと、見ながら顔を赤らめ、
反論してきた、おいおい見るな。
また、口出してないのに、俺の心情を読まれた、
なにこれエスパーなの?
読心術にしては精度高すぎるだろう。
「あ、あぁ、あれなら部屋に・・・」
「取って来て」
俺の話を最後までを聞かずに、彼女の声が割ってはいる。
彼女の表情からは懸念しているような、表情が伺えた。
なにを考えているんだこの子は?
「は、はい」
俺は彼女に言われるがままに、自室に向かい、
机の上に置いてあった灰色の珠を手にとった。
あれ、気絶する前より、色が濃くなっている気がするが気のせいか?
俺は、すぐにズボンのポケットに入れ、リビングに戻る。
そこまで時間はかかってなかったはずだが、
彼女はいつの間にかソファーにはいなかった。
「はぁ?、あいつどこにいったんだ」
と、周りを見渡すと、冷蔵庫の扉が、開いてた。
彼女は扉を盾にして、何か中身をあさっている様子だった。
すまんが、冷蔵庫の中は何も入ってないぞ。
「もぅ、何もないじゃない」
バンッと荒々しく、冷蔵庫の扉をしめる彼女
おいおい、壊れかけなのに、これで壊れたらどうするの?
それに、人ん家に勝手に入っておいて、それはないだろう。
俺の存在に気づいた彼女は、なぜか頬が赤くなっていて、
早歩きでソファーに戻っていた。
彼女が、ソファーに腰掛けて、口を開いた。
「で、珠は?」
「あぁ、ここにあるぞ」
率直の質問に、素早く受け答えし行動する俺は、
本当に紳士かもなと思いながら、ポケットに入れてあった、
灰色の珠を彼女に手渡した。
珠を手にした彼女は、無言で親指と人差し指で、
珠を挟み、彼女の目線の目の前にかざす。
俺が、昨日していたのと、同じことを彼女はしていた、
まぁ状況は違えど、何か見えるのか?
「はぁ、本物のようね」
彼女が、ほっとしたように、手を顔からおろして、
珠をすぐさま制服のスカートについているポケットに入れた。
いや、別に偽物を渡してもどうもならんだろう。
と思ったら、彼女はまたすぐに珠をポケットから取り出し
手の平に添えて観察していた。
「ちょっと、待ってこれ何か色が変・・・濃くなっている?」
彼女の独り言が、漏れる。
正直、この状況についてこれておりません、昨日もしかり、
全く理解ができないのだがどうすればいいのだ?
俺は、ボケーっと彼女見つめていた。
俺の熱い眼差しに気づいたのか彼女が、口を開く。
「あ、ごめん、ほっといたままにして」
「い、いや別に大丈夫」
まぁ、むしろほっといてくれたほうがいいのだが、そうも行かなかった。
「あなたは、これをどこで拾ったのか覚えてる?」
ん、これは素直に答えたほうがいいよな、
下手な嘘をついても高性能読心術?で読まれるのだから・・・
「あぁ、昨日とあるベンチで、寝てて起きたら、目の前に落ちてあったんだ。」
一応嘘偽りはない・・・はず。
俺の顔をまじまじと見てくる彼女、
そんな綺麗な顔を向けないでくれ、勘違いしちゃうだろう。
「そう、じゃあこれで最後の質問にするわ、これに聞き覚えないかしら?」
彼女がそう言って、一息して、深呼吸をした
聞き覚え?、何が始まるんだと思ったら、
「孤高に燃え盛りし、焔よ。理がごとし、されど、この宝玉へと、我の魂を注がれし、焼き尽くせ。ディムブレイズ。」
ぶふぅ、俺は心の中で吹いてしまった。
鋭い声音から発せられた、言葉の数々、何か聞き覚えがあれ?
・・・・どこかで、あ、こいつのオリジナル呪文だっけか?
あ、こいつ高性能読心術があるの忘れてた、俺の心情を読み取って・・・
「う、うわぁぁぁあああ、やっぱり聞かれてた!最悪最悪!」
彼女は、狂ったように頭を抱えながら、頭を振りまし、叫んでいた。
ここで、俺は爆弾を落としてしまった。
「大丈夫、何も聞いてないから!」
「はぁぁああ?」
・・・しまった、俺バカだ、心読まれて、
聞いたことバレているのに、今更嘘ついてどうすんだ!
「・・・ってことは、見たのね?」
「は、はい?」
み、見たって何をだ?
もしかして、こいつが手から炎を出してたこと・・・
あっ。
「見られてた、見られてた、どうしようどうしよう」
彼女は、さらに気が動転したかのように、
ブツブツと独り言をつぶやいている、正直怖い。
流石に、これはまずいと思い声をかける。
「お、おい大丈夫か?」
彼女は、急に黙り込んで、静かになった。
こえーよと心の中で思い、どうすればいいんだと考えを巡らせていたら、
彼女の口からはっきりと聞こえる言葉が俺の耳へと入っていった。
「燃やすしかないか・・・」
え?ちょっちょっ待って!
また、俺は危機的状況に陥ってしまってるんだ?!
おいおい、なにこの急展開!
「と、とりあえず、落ち着こう、話せばわかりゅ!」
安易な言葉たちを並べて、しかも舌を噛んでしまう。
俺の声は彼女に届いておらず、
彼女は、ゆっくりと自分の胸元へと手をかざす。
すると、手の周りに蜉蝣うずまき、空気がゆらゆらと揺れる。
「ま、まじかよ・・・」
彼女は、本気かもしれない、いや本気だ。
本当に俺を燃やすつもりだ!ど、どうする?
俺は、なんかの能力とかもないし、
それに異能の力を打ち消す右手を持っているわけでもない。
これは、所謂、絶対絶命?
はは、足がすくんで動けないや、
今なら動けばまだ間に合うだろうに・・・
そう思った瞬間、爆発に似た轟音が響いた。
バァァァァァンッッ
爆風と共にとても熱い熱気をまき散らしながら、
彼女の手には孤高と燃える炎があった。
「さぁ、消えてもらうわよっ!」
彼女が、手を大きく振りかぶり、俺に巨大な炎をぶつけようとしていた。
あぁ、俺、ここで終わっちまうのかよ、
異常なことが起きて、俺の日常が終わるってのかよ。
本当なんだよ、こんなこと、ラノベやアニメ、
ゲームでしかないくせに、何で現実に起きてんだ。
今、こうして、遺書みたいに語っているけどさ、
今大変な状況だぞ?
普通、こんな語ってられないよでも、案外こう言う状況なると、
時間がすごく遅く感じるような、変に思考が素早く働くんだな。
すごいわ、ってなに、納得してんだ、どうにかしないとどうにか・・・
どうもできないわ、もう諦めモードしかないだろう、
あぁこれはきっと、バットエンドルートなんだな。
彼女が、手を振り下ろすと、炎は真っ直ぐに轟音を鳴らしながら
俺に向かってくる。
そしてすぐに体、全体を包、飲み込んだ。
うわぁ・・・すげー俺燃えてるわ。
まさか、この歳で、早くも火葬を経験するとは、なんとも言えないな。
はは、このまま燃えていくのか・・・
彼女が、炎のあいだから、かすかに見えたりする。
どこぞの、ラブコメとかだと、
あぁ、こんな可愛い子に殺されるなら本望だよとか思ったりするのかな?
いやー、それにしても暑いな・・・暑いな?
「ん?俺、燃えてるんじゃないのか?」
業火の炎を思わせるように轟音を撒き散らし、
荒々しく巻き上げすべてを燃やし尽くしてしまいそうな
炎の中に俺は、いるはずなのに・・・
肌、いや衣類すらも燃えていなかった。
どう言うことだ?、俺は、巻き上げる炎に手をかざした。
「あ、あたたけぇ・・・」
程よい、ぬくもりを感じさせてくれるような感覚が、手に伝わり広がる。
何回も、炎へと手を出し入れする。
当然のように、手には外傷もなく、
生暖かいぬくもりが感じるだけだった。
本当にどういうことだ??