【俺の影の薄さは誰にも負けない。】
非日常1
【俺の影の薄さは誰にも負けない。】
枯れ草を撥ね除るときになるような、
ガサガサとした音がすぐさま俺の耳元に聞こえた。
俺は、困惑した。
人が来ないと絶対確信し宣言までしておいて、
あっさり人が来るなんて・・・
警察とか、ホームレスとか勘弁だ。
いや、まて動物のの可能性もある。
そうさ、可愛い猫たんが出てきて、にゃー、
って鳴いてくれるはずだ。
人嫌いな俺が、やってくる存在はどんなものかなど考え
内心ビクビクしながら身を硬直させじっとしていた。
少しずつ少しずつ大きくなる音。
正直な話、俺は感づいている。
これは、可愛い猫とか、犬とかではなくて、人間ではないのかと。
小動物が、ここを抜けるにはそこそこ、面倒だろうし。
まして、こんなに草木が伸びきっているのだ。
本能的にこのプチ森林には、入らないだろうと考えていたら。
ガサガサとなる音も既に近くに聞こえてきて、
少しばかりか草も無造作に揺れている。
呆然と、揺れが激しくなる草に出口であろう場所まで
近づこうとし無理やり草を撥ね除け大きくなる音。
揺れる草を、首を横にひねり見つめ続ける。
俺は今すごく、恐怖している。
何が出るのかわからない、恐怖なのか、夜だからなのかなど。
だが、少し自分ではなく相手を気にかけるような疑問が浮かぶ、
ぼそっと口から言葉に出てしまった。
「で、出てくるの遅すぎやしないか・・・」
そこまで、長くない距離だと思うし。
単純に、草木が多いから、歩きにくいだけかなと相手の心配しだす俺。
ぼーっと眺める、草の揺れはなくなっていた。
どうしたんだ、と思った瞬間。
ガサッッッ、と音が鳴ると共に人間の声帯から発せられる
少し甲高い声が聞こえた。
「ん、うっ・・・うわっ!」
ビックッッッッ!
俺の身体が跳ねる、心臓も跳ねる、俺の心拍数が、
脈拍が驚きのあまり大変なことになっていた。
俺は素早く、身を背もたれに隠れるよう沈めた。
草むらから出てきた人は、きっと出口が見えたから、
一気に飛び出しそして草は大きな音をたてたのだろう。
冷静になれ、冷静に、そう冷静に、
相手に聞こえないように深呼吸をする。
ひっひっふー、ひっひっふー。
ふぅ、さすがラマーズ法・・・
おい、深呼吸じゃねーぞこれ。
まてまて、落ち着け、落ち着け!餅つけ!
よし、大丈夫のはず。そうさ、大丈夫だ。
身を沈めたまま、体を少しひねり顔と目線を少しばかり、
人間が出てきたであろう、その出処に目線をやった。
草木のプチ森林から、出てきたのは当然小動物などではなく。
ましては、警察やホームレスなどの大人の人ではなかった。
林から出てきたのは、ぱっと見ると女の子と言う分類の人間だった。
月明かりで照らされる彼女は、制服らしきものを着ており、
中学生か?と考えたが、一般的な中学生が着用するセーラー服ではなく、
スカートを短くしており、カーディガンを羽織っている下から覗くのは
今時の学生用ブレザーを彼女は着用していた。
近くの中学は制服は、ブレザーではないから、
きっと高校生ではないかと考察する。
俺はこうして、隠れながら彼女を見ているのだが、
彼女は草むらから出てもなおずっと立ったままだ。
この場所から見れる夜景を忘れないように
自分の瞳に焼き付けているようだった。
呆然としているのか、唖然としているのかよくわからないが、
俺から見れば彼女は、安堵したような表情をしてた。
彼女は今もなおこの夜景を見ている。
まっすぐと視線を何かから外さないように遠くを
見つめる彼女の大きな目は月明かりでキラキラと照らされる。
月の光が彼女を照らすからなのか、彼女が元々の容姿がいいからなのか、
それともこの夜景と共に彼女が映っているからなのか、
月明かりに照らされる彼女は、
とても綺麗で幻想的な雰囲気を醸し出している。
少し風が吹くと、黒髪であろう彼女の髪が美しく靡く。
三次元の女の子を見て、
ここまで美しいとか綺麗だとおったのは初めてかもしれない。
なぜか彼女がそっとまぶたを閉じる、その何気ない行動にも、
何らかの魅力を感じてしまう。
俺の目からは、美しく見えてしまう綺麗に映ってしまう。
俺は、彼女を時間など気に止めず眺めていた。
突然、彼女がいきなり、
目をあけたので少し俺は驚いて向けていた視線を外してしまう。
そそくさと俺はまた彼女に視線をやる。
何やら彼女は、自分自身の少し盛り上がった胸の場所に
並ぶよう右手の手のひらを空へ向けていた。
彼女の、手のひらには灰色がかって見える、
ビー玉程度の大きさをした、珠が乗せられていた。
彼女は、そのビー玉を見つめ続け、そして口を開く。
「孤高に燃え盛りし、焔よ。理がごとし、されど、
この宝玉へと、我の魂を注がれし、焼き尽くせ。ディムブレイズ。」
彼女の口から発せられ、思いっきり中二病じみた言葉の数々、
俺は目を見開いた。
こんな、可愛い子でも青春こじらせるとこうなるのかと
勝手になっとくしてた、
そのとき、
彼女の手のひらにある珠を囲むように、炎がともっていた。
俺は、さらに目を見開き、時折目をこすり、
唖然とした光景を俺はしっかりとこの目で見てしまった。
そんな光景に言葉が漏れる
「ま、まじかよ、こんなのアニメとか、ゲームでしかねーだろ」
自分に訴えかけるよう、独り言をつぶやいたおり、
その訴えはもなしくも、ここを現実だと言う事を分からせてくれる。
彼女は今もなお、珠に炎をともし続けている。
少しばかりか、焦りのような、苛立ちのような交わった、
表情をのぞかせる。
「ん・・・、あー、もうっ!」
可愛らしい声から出てきた、諦めたような声音が彼女の口から漏れ出し、
手にのひらにともしてあった炎は既に消えており、
残っていたのは、灰色の珠だけだった。
灰色の珠は、特に見た目の変化も見られず、
中の灰色が、うずまくように動いて見えた。
彼女は、珠をぐっと握り締め、投球のポーズをとる。
そそのまま、振りかぶろうとして、すぐさま力の入った手がとまる。
「はぁ・・・でもこれが本物なのは確かなのよね・・・」
ため息と共に、珠を見つめ改めて確認するかのよう声音をはいていた。
珠を握り締め、
彼女は、珠を握り締めた手をスカートのポケットにつっこみ、
すぐに手を取り出す。
どうやら、ポケットに宝玉とやらを入れたようだ。
俺は、さっきまでの一部始終が、にわかに信じられなかった、
きっと科学の実験なんかと思いはせるが、
手袋も何もつけずに炎をのせ、
しかもいきなり、発火したのだから、地味な現実逃避はすぐさま終わる。
彼女は、疲れたかのように肩がうなだれていた。口からは、
「あー、疲れたー、いやー久しぶりにオリジナルの呪文を唱えて、
使ってみたけど、案外よかったわね。
ふふ、でも誰にも見られてないかしら、もし見られたら・・・うっ」
一応、彼女にも羞恥心があったようだ、
だけどごめん俺思いっきり聞いてしまった。
しかも、あなたのオリジナルなんですね、
てっきり、昔から使われている呪文とか思ったけど、
まぁあそこまで現代風ではないか。
心の謝罪をしていたら、ザサッと土の擦れる音がした、
やばっと思った俺は、すぐにベンチの背に身を潜め、
帽子を深く被り、所謂寝たふりをかますことにしたのであった。
ザサッ、ザサッと小石など擦れる音が近くなる。
ヤバイ、このまま俺の狸寝入りがバレず
事なき終を迎えてくれと願いながら、
心臓の小道具ばみるみると早くなる。
砂や小石が擦れる音はなくなりベンチに腰掛けた、彼女の声が響いた
「ふぅ、疲れた・・・」
一息入れるように、ため息をついた彼女、
彼女は俺のことに気づいてないのか?、
確かに影は薄いと、自分でも自負してるが、
そこそこの距離でこうも気づかれないとなんだか・・・・
少しガサゴソと体が動いてしまう。
ヤバイと、思っていた矢先、
横からガサッと音が鳴る彼女が立ち上がった音なのだろうか?
横にいるはずの彼女、口から突如、言葉漏れる。
「ん、わっ!。・・・って、人がいる!えっ!なんで?!、
どうしよう!・・・てか、私が気づかないくらい影薄いってどうなのよっ!」
驚きに満ちた言葉が、次々に出てきた物の最後は、
少し俺が気にしていたことを、彼女は早速痛いところをついてきた。
彼女は、それから黙っている、
俺は寝たふりをしているので彼女の様子も伺えない、
ただ言えるのは、凄まじオーラを、俺の正面から、感じる。
静かに吹く風が微妙に邪魔をしながら、
ぼそっと彼女の口から発せられた言葉が俺の耳元に聞こえた。
「燃やすしかないかしら・・・」
おいおいおいおい、
俺は心のそこから焦りだした、
いきなり人を燃やすなんて正気か、正気の沙汰じゃないぞ、
確かに俺は所謂社会のゴミだが、まだ火葬はされたくない!
心臓の鼓動、が今さっきよりさらに早く、大きくなり、
このままでは、
焼かられるより心臓が先にとまって死んじゃうのではないかと思うほど、
俺の中では危機的状況が迫り狂っていてた。
だが、俺は目をつぶったまま狸寝入りを続ける、
まぁここで死んだら死んだでしかないか・・・
アニメを見れなくなるのは辛いが。
など死を半信に覚悟していたのだが、彼女は一行に行動を示さなかった。
様子を伺えない俺にとっては、死刑宣告を迫られる囚人のようだ。
いや、今さっき死刑宣告、受けましたね。
だったら、死刑執行に迫られる囚人のような気持ちだ。
ガサッと音が鳴る。
彼女が近づいたのであろう、一言も発せず近づいてくるので、
より恐怖が増す。
これは、覚悟しないとなと思った瞬間、
俺の腕をツンツンと誰かが指先でつつくような感覚がする。
すぐにつつき主の正体がわかった、彼女だ。
彼女は、俺の腕をツンツンとしながら、しゃべりだした。
「さ、流石に燃やすのはダメよね・・・
んー、寝てるのかな、眠っていたのならいいんだけど」
俺は、心の安堵をついた、よかった、燃やされずにすんで!
この間も、彼女は俺の体をツンツンとつついてくる。
正直、く、くすぐったい。
女の子にこんなに、つつかれたこともないし、
つついたこともない・・・
なんか、卑猥。
数分ご、彼女はつつくのをやめ、
俺は正真正銘の安堵をついたのであった、
だが、すぐさまそれはなくなるのであった。
「本当に、寝ているのかしら、つついても反応はないし・・・
この帽子、深くかぶってるわね、わざと顔を隠して、
本当は起きているって可能性も・・・」
彼女の発した言葉に、手汗がどっと出る、
ヤバイ俺のアイディンティティーである
帽子を脱がされるとこになったら、
まぁ、どうにもならないが・・・
なんだか、顔を見られるのが恥ずかしい、
そして、少しでも顔とかが動いたらすぐにバレてしまう、ヤバイヤバイ。
第二の危機が迫り狂いまくっている、
時は、刻々と近づき、その時はきた・・・
「ふふ、あなたの顔ちょっと拝ませてもらいますねぇ・・・えいっ!」
サッと彼女に取られた帽子、幸い外は暗かったので突然の光が、
目を刺激することなく、まぶたは一ミリも動かず、
本当に熟睡しているかのような、姿を彼女にさらすことができただろう。
彼女は特に言葉も発することなく、俺の前にいるはずだ、
薄目をしてもすぐにバレそうだから、絶対にしない。
だが、俺の想像では彼女は俺の目の前にいるだろう。
俺は、彼女が帽子をさっさと返して、この場をさることを願いながら、
岩のごとし体を静止させていた。
また、数分の時間が流れる、短い時間のはずだか、
俺には長く長く感じられる。
は、早く俺を開放してくれっ!
と懇願し、その願いを受け入れたかのように、
まずは帽子が俺の頭に戻っていった。
ここで、二度目の安堵についた、心の中でため息をする。
そのとき、頬に暖かい感覚が、広がっていく。
「もぅ、こんなところで寝たら、風邪ひきますよ・・・」
さっきの、末恐ろしい、声音と違い、優しに満ちあふれた声音が聞こえた。
その優しが、俺の体内へ流れているのか、俺の体が芯から温まってきた。
俺の頬から、手を放した、彼女はザッザッと土を踏み込む音をならし、
ガサガサと草が音をたていた、その音も次第に小さくなり、
最終的にはまったく聞こえなくなっていた。
草の軋む音がならなくなってから、帽子を脱ぎ、目を開けた。
勿論、彼女は、いなかった。
なんか、本当に現実なのかと思えきたりもした、
本当に俺は眠っていたりしていて、ははなんて思って自分の頬に手をやる。
彼女の柔らかい手の感触がまだ残っている気がする、
彼女はここにいないのに、暖かさだは、ずっと感じていた。
ぼーっと、頬の感触に浸っていると、
目の前にきらりと光るビー玉を見つけた。
俺は、すぐに拾い上げ、手のひらに転がす、
灰色のビー玉・・・
まさかな、と思いビー玉を人差し指と親指で挟み、
月にかざしてみた、そのビー玉は灰色がかっていて中身がうずまいていた。
「どうしたものか・・・」
少し悩んだ末に、
灰色の珠をポケットにいれ、俺は自宅に帰宅することにしたのであった。