台風の目
友人のUは中国の古典オタ。普段は陽気で良い奴なんだけど、ふとした拍子にスイッチが入る。するともう、お手上げ。相手が誰だろうがお構いなしに、論語やらなんやらの話を延々としゃべり続ける。
友達のDがフラれた時なんか「子曰く……」とか言って、なぐさめたらしい。聞いてたDは逆に落ち込んだとか。
そんなUと俺と、そしてもう一人の友人Hの三人で某駅の近くにいた時の話だ。
台風のせいで荒れた空模様だった。ただその時は台風の目に入っていたらしく、雨は降っていなかった。それでかどうかはわからんが、突如Uが古典トークを始めやがった。夜朗自大がどうのこうのって、こっちは全く興味ないんだけど。俺とHは、とりあえずふーんとか適当に相槌を打ちながら、いかにも所在なげに空を見上げていた。すると、だ。はるか頭上で何かが光っていた。最初は飛行機かなんかかと思ったが、全然ちがった。バカでかい本物の目ん玉が二個、はるか下界をグワっと見下ろしていたんだ。
俺とHはビビって、思わずあごをアゥアゥとさせた。そんな俺らを尻目に、Uはひたすらしゃべり続けている。
そしたら、その目ん玉から青い光線がピー……。Uを貫いた!
「うおー!」
俺とHが思わず叫ぶ。そしたらU、ん? とか言って話を中断した。
「おい、どうした!」
ってUに聞いたら、U何言おうとしたか忘れたって。俺とHは、それだけで済むのかよ、って思わず目で探り合ってしまった。
あん時は本当に驚いた。目はほんの十秒足らずで消えちまった。