episode2 アイリッテ
入学式。それは学生にとって新たな一歩を迎える場…ラキシスはそう言っていたけど私にとっては大して興味のない学校だし周りの生徒の香水のにおいできもちわるい…
なにはともあれ最高に帰りたい…
「はぁっ…」
「どうかしましたか?」
無意識のうちについたため息があまりにも大きかったせいか隣にいたラキシスが顔を覗き込んでくる。間近に迫ってきていたラキシスの顔を改めてまじまじと観察する。大きくて吸い込まれそうな瞳やぷにぷにそうなほっぺた、つやつやしたくちびる…女の私から見てもわかるがラキシスは完璧だ。
「あ、あの…私の顔に何かついていますか?」
ラキシスは顔をまっかにして目をそらす。
「ああ、悪い…にしても長くないか?」
私の視線からラキシスは察してくれたのか苦笑を浮かべてこたえる。
「そうですね…ちょっとタイクツしてきました…」
さすがにラキシスも長いと感じていたのか…なら私がすぐにでも帰って寝たいという気持ちを持っていても神様もお咎めなしで許してくれるはずだ。
「そういえばサナさん。さっきの校長先生のお話にあった特待生ってサナさんのことですよね?」
そんな話してたのか…私はずっと香水のにおいと死闘を繰り広げていたから記憶がない。
「ん、たぶんそうだと思うぞ」
「すごいですねっ!」
そうだ、私の頭の中でいまだに答えが出でいない疑問があったのだ…
「それなんだけどさ…オレ推薦される理由がないんだよね…」
「どういうことですか?」
「いや、オレ成績よかったわけでもないしそもそもマホウなんて別世界のものだと思ってたし…」
私とラキシスはうーんと考え込んでしまう…するとうしろから能天気な声が聞こえる。
「それって悩む必要あるんすか?」
「「えっ?」」
私たちは声のしたほうを振り返る。するとそこにいたのは…
「いや、個人的にはあんたら美形だしこんなつまんない入学式うけてるよりは見てておもしろそうだから大いに悩んでもらっててもかまわないんすけどね」
にひひと笑いながら私たちに話しかける少女がいた。後ろできっちり結った銀髪にぴょこぴょこと意思を持つように動く獣耳。そして無邪気な瞳をもつラキシスとはタイプが異なるがなかなかきれいな少女だ。
「あれ?お兄さんリースを見るのははじめてっすか?」
リースとは彼女のように獣のような耳を持つ種族で確かに私の周りにはいなかった。
「にひひ。耳、さわりたいっすか?」
少女はいたずらっぽい瞳でそんな提案をしてくる。ふさふさで柔らかそうな毛に包まれた耳はさわったらやみつきになってしまいそうだ…
「い、いや…遠慮しておく…」
「そっすか?ならいいんすけどね。」
少女はあらかじめ答えを知ってたかのようにけらけらと笑いながらわざと残念そうなそぶりを見せる。
「あ、あの…さっきの悩まなくてもいいってどういうことですか?」
いままでだまってやり取りを見ていたラキシスが口を開く。
「ああ、それっすか?ここで悩まずともあとでわかる。私はそう思うんすよ」
確かに彼女の言うことも一理あるのかもしれない。
「ん、やっと終わったみたいっすね」
彼女と会話をしているうちにどうやら入学式は終わっていたらしい。
少女は大きく伸びをするとすぐにかばんを持って席を立った。
「どこに行くんだ?」
「席とりっすよ。さっさと行かないと最前列になるっすよ」
「え?そんなこと聞いていませんよ?」
確かにそんな話一切聞いていないし解散になって間もないなか席を立って講堂を出ようとしているのは彼女だけだ。
「ま、信じる信じないはおまかせするっす」
そう言って少女は駆け出そうとしたが少し行ったところでこちらを振り返り楽しそうな笑顔で言う。
「名前、アイリッテっていうんす!席近くになれるといいっすね!!」
それだけ言って彼女は講堂から飛び出していった。
講堂に残された私とラキシスはすこしぽかんとしていた。
「ふ、不思議な人でしたね…」
「ああ。オレたちもそろそろ行こうか」
周りの生徒たちも移動を始めたようなので私たちも席を立つ。




