episode1 ラキシス
さて、いざ校舎に足を踏み入れてみるとそこは王侯貴族の住む宮殿のように豪華で美しいものだった。
「おっきい…」
私が感嘆の声を漏らすと…
「そ、そうですね…」
同じく隣で呆ける声が聞こえた。
「!?」
条件反射で私は大きくさがってしまった。
「ご、ごめんなさいっ!」
「い、いやこっちこそすまなかった…」
その場で何度もぺこぺこと頭を下げる相手についこちらも低姿勢になってしまう…
「あ、あの…新入生の方…ですか?」
私の言葉で頭を下げるのをやめた相手はそんなことを尋ねて来る。小柄で小動物のような顔立ち、黒色の髪に深い藍色のように見える大きな瞳、そして少し尖った耳。どうやらエルフの少女のようだった。
「ええ…い、いや…ああ。そうだがもしかして君も?」
女言葉になりそうなのを何とかごまかしながら少女に聞き返す。
「はい、私この学校にずっと憧れていてすごく勉強を頑張って入学できることになったんです」
少女はきらきらとした瞳でこちらを見ている。あっ、視線がまぶしい…
「そ、そうなのか…オレは別の学校に行こうと思っていたんだけど親が勝手に決めていたんだ」
「そうなんですか…あ、自己紹介が遅れてしまいまいましたね。私ラキシス・コヴェントリーと申します。あなたのお名前は?」
少女、ラキシス・コヴェントリーは恭しく礼をして可愛らしい笑顔で私に問いかけてきた。
「あ、悪い。オレはサナ。サナ=キサラギ。ラキシスはどこの出身なんだ?」
「私はヴァナヘイムです。サナさんはお名前から察するにジャパリカのご出身ですか?」
ヴァナヘイムとはここよりもっと北にある雪国だ。そして彼女の言うとおり私の出身のジャパリカはこの大陸で唯一四季のある小さな島国だ。
「ご名答。ところでラキシス、入学式の会場はどこかわかる?」
「あ、こっちの大講堂ですよ。案内しましょうか?」
「ん、悪いお願いできるかな?」
「お安いご用です」
ラキシスは胸を軽く叩いて少し誇らしげな表情をした。
「ささ、お話は歩きながらしましょう」
そう言ってラキシスは歩き始めた。私もそのあとに続いて歩き始める。
校舎は中世をイメージさせるような石造りでひんやりとしたイメージを持たせる。しかしそれでいて格調高く気品にあふれた造りだ。
「そういえばキサラギさん…」
「サナでいいよ、オレもラキシスって呼んでいい?」
半ば事後承諾だがラキシスに問いかけると彼女は快く承諾してくれた。
「はい。それではサナさん、サナさんはどこの学科なのですか?」
「あれ?そういやどこだっけ?」
私、そういえば父さんと母さんに渡された書類に一歳目を問うしてなかったんだ…
「ち、ちょっと待っててね…」
私は必要書類の中から学科にかかわる書類を引っ張り出して見てみる。
「総合魔法学科って書いてある」
「本当ですかっ!?」
ラキシスがずずいっと寄ってくる。
「え、どうかした?」
「あ、私も総合魔法学科なんですっ!」
「そうなんだ」
早速知り合いができたのは少し心強い。
「私、こっちには知り合いもいませんしみなさん貴族の方々ばかりで怖い人なのかと思っていたんですけどサナさんみたいな優しい方とお知り合いになれて良かったです」
ラキシスは安堵の表情で私にそういう。
「俺もかな。オレ、家が貧乏で貴族やらエリートやらとはそりが合わなくてさ…だからラキシスみたいな良い子と知り合えてよかったよ」
「そういわれると照れてしまいますっ…」
ラキシスは頭から湯気が見えそうなくらい顔を真っ赤にしてうつむいた。この子すっごく可愛いなぁ…
「あ、そろそろ入学式が始まりますっ!いきましょう!!」
誤魔化すようにして歩くスピードを速める。
「あ、待ってラキシス!」
そのスピードに引き離されないように私も少し小走りで大講堂へと向かった。




