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 春。桜。それは新しい始まりを象徴する明るいもの。

 そう、世間一般では…




「はぁ…」

 私の中では春、特に今はものすごく億劫で悲しくて嫌なものだ。桜が舞う中楽しげに登校する生徒をよそに私は重苦しい表情のまま校門前で立ちつくいていた。




 目の前にそびえたつ巨大な学校、この学校は私に関係する学校ではないとずっと思っていた。多種多様な種族が集まり学問を学ぶ学校『トルガスア』…そこは普通の学問だけではなく様々な専門コースにより分かれていてその選考に特化した生徒を世に送り出すエリート学校。バカでのろまでスタイルも顔もよくなくて…言い出すときりがないほどに劣等生な私にはまるで関係のない超人集団の入る学校なのだ。


 何故私がこんな学校の目の前にいるのか…私にもよくわからない。私は地元の公立学校に進学するつもりでいたのだが進路決定直前にトルガスアへの推薦特待入学通知表とトルガスアの制服が急に送られてきたのだ。

 もちろん天下無敵の進学校からの逆指名だ。そのうえ特待生ということは入学金や宿代授業料まですべてサポートされて実質タダだ。それは私の両親は狂喜乱舞していやがる私の反対を振り切って書類にサインをしたのだ。

 そこからはとんとん拍子で話が進展していった。入寮が決定し、荷物を送り入学式に必要な物を持って私は門の前まで来たのだった。

 私がこの学校へ来るのを拒んだ理由は二つある。一つはもともとエリートとは無縁の家系で育ってきた関係上、どうもエリートチックな。言ってしまえば高飛車な人種が反吐が出そうになるほど嫌いなのだ。

 そしてもう一つ。一つ目は耐えられたとしてもこっちは絶対に耐えられない理由なのだ。というのも…







 『女であることを隠し男として入学すること』が条件だったからだ。冗談じゃない。私は本気でそう怒鳴った。しかし両親はいくら私が抗議しても聞き入れてくれずにそのままサインを決め込んだのだ。これを悪夢と言わずして何と呼ぼう。

 私は女としてではなく男として校門の前で今立ち尽くしている。お気に入りだった長い髪を肩くらいまでバッサリ切って…

 今思い出すだけでも涙が出てきそうだ…しかしもう踏み出さなくちゃならない。止まっていても時間は進んでしまうのだから…私は深く深呼吸をして大きく足を校門の中に踏み入れた。

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