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第4話 迷子の子猫

それから数日後、その日も暑い日だったと思う。


私が帰宅したら、リビングのソファーの上に男の子が寝ていた。

不審に思って覗き込むと、先日見かけたあの男の子だった。


うっすらと寝汗をかき、よく眠っている。

私は驚いて、加世子さんを捜した。


『黎子ちゃん、お帰り・・』


加世子さんは、なにくわぬ顔で部屋に入ってくる。

シャワーを浴びてたらしい。髪が濡れていた。


『この子、どうしたの?この間の家の子でしょ?』

『ええ、そうよ。スイカ食べようねって言って連れてきた。』

『ええ?この子の母親は知ってるの?』


加世子さんは、曖昧に笑い首を振る。


(まさか・・誘拐???)


驚いて立ちすくむ私を後目に、加世子さんは

どさっとソファーに座って、父の煙草に火をつけて吸いだした。

普段はめったに吸わないのに。

そして、少し気持ちが落ち着いたのか


『あんまり可愛いので、連れて来ちゃった。』と悪びれずに言った。


確かに、無防備な寝顔を見てると、その気持ちはわからないでもないが、

相手の母親である女も心配してるだろう。


『で、どうすんの?』

『え?どうもしないけど・・でも本当に先生の子供なら、引き取って育てちゃおうか。』

『・・・本気?それ・・』


加世子さんは少しおどけて笑う。


『先生、男の子も欲しかったのかなって思うと・・足が勝手に

あの家に向かってしまったの。』


どうやら公園で一人で遊んでる彼を見つけて、話かけて連れてきたらしい。


『簡単についてきて・・危ないったらないわ・・。』


少し汗をかいたマー君とやらの髪を優しくなでる加世子さん。

しかしその時、少し力を入れて、彼の毛を引き抜いたのを

私は見てしまった。

ソレが何を意味するのかは、その当時の私は気づかなかったけれど。


しばらくするとマー君は目を覚ました。不思議そうに辺りを見回す。


『ここ、どこ??』

『オジサンのお家。さあ、スイカ食べましょう。』

『ママは??』

『ママはお仕事みたいよ。オジサンが送ってくれるから心配しないで。』


加世子さんは、子供に有無を言わさず、言い聞かせる。凄みがあった。

それに圧倒されたか、黙ってスイカを食べ始めるマー君。


夜になると、父が帰ってきた。

加世子さんは父に連絡したらしい。慌てて帰ってきたみたい。


『マー君、遠いところまで来てくれたんだね。』

父は苦笑い。少し卑屈に見えた。


『うん。』

『さ、ママが心配してるよ。お家に帰ろうか。』


父は逃げ出すかのように、あたふたとマー君を連れ出したのだ。


『マー君、また遊びに来てね~。』


加世子さんは、鷹揚に手を振り、二人を余裕で見送った。








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