第23話 正夢の予感
キッチンで、夕飯の用意をしている私。
その日は、誰かの誕生日のようで、腕をふるいテーブルの上に
ご馳走を並べている。
湯気の立つ鍋、甘いイチゴのケーキ。
後は家族が帰るのを待つだけだった。
『ママ、ただいま!』
その時、不意に後ろから声がする。
振り向くと、窓を叩く男の子姿。
『お帰り~、一星~!』
私はにこやかに窓を開ける。
大きな身体に、小さなランドセルを背負う男の子が
入ってきた。
ごく当たり前に、違和感ない風景。
しかし、リビングは2階のはず?
日当たりがよいからと、私達が結婚したとき改築したはず。
開け放した窓を閉めようと何気なく覗いたら、
家の外にはたくさんの人だかり。
携帯カメラをしまう人の姿。
何やら、口々に騒ぐ。
『今の見たか?人が飛んでたぞ!!この家に入っていった!!』
『見た!見た!確かに人間の子供が飛んでた!』
その騒いでる人達が、一斉に、うちの前に押し掛けてきた。
『桐谷さん!桐谷さん!インタビューお願いできませんか!』
『桐谷さん!桐谷さん!ご子息の事をお聞きしたいのですが~!!』
ドンドンとドアを叩く音、ひっきりなしに鳴らされる
インターホン・・・
『どうしたの?黎子さん!魘されてたよ。』
横に寝ていた彼に起こされて、我に返った私
(ア・・・・夢だったんだ。)
すごくリアルな夢。
現実に起こりうる可能性のある夢だった。
『一星の夢見たの?』
『ええ・・心配なの、とても・・。』
『・・心配してもキリがないよ。飛んだって、何だって
ボクら二人の子供には変わりないんだから。』
『それは、そうだけど・・・。』
『僕ら家族がビビって、どうすんの?一星に申し訳ないよ。』
『そうね、そうよね。』
情けない・・自分で選択した事じゃないかと思う。
例えば一星が、成人して姿を人から鳥に変わっても
私の息子であるのは変わりない。
それから、数日後、父の薦めで
あのもうろくジジイ?と加世子さんが称した人類学者の佐々木教授の所に、
夫婦で相談に行った。
『へえ~。そうですか・・・へえ~~。』
ただただ驚くそぶりの教授を見てると
(大丈夫か?このジジイ)
少し後悔してしまった私