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第17話 幸せの陰で

それから、私は安定期に入ってから日本に帰国した。


今は便利になって、地球の裏側にいても

何とか仕事は出来る。

優秀なスタッフが入れば、何とか仕事はまわるのだ。

ありがたいと感謝の気持ちでいっぱいだった。


そして極力仕事はセーブして、不安定な時期を乗り切ることが出来た。


新しい生命が、自分の中で息づいてる幸福感。

それは何ものにも換えがたいと感じていた。


福山は一度電話でこんな事を言った。


『俺、もうお役目果たしたんで用済みですかね・・。』

『・・何言ってるの!あなた、赤ちゃんの父親でしょ?』

『いいえ、赤ちゃんは黎子さんのものです。俺は手伝っただけ・・。』

『冗談言わないで・・あなたを愛してるのよ。私は・・』

『・・・・本当に?』

『ええ・・・本当よ。やだ、恥ずかしいじゃない。』

『・・・俺、あなたから、もう入らないって言われるかとずっと怯えてました。』

『・・・・』

『俺たち、結婚しましょう。』

『その言葉、待ってたのよ。ありがとう。あなた。』


私が帰国してから、私達は入籍した。

彼の方から、桐谷家の婿になると言う。私は一人娘だし

福山家は、立派な長男がいるのでかまわないと言うのだ。


すでに彼は、父のスタッフからは『婿殿』と呼ばれて可愛がられている。

職人気質で、気難しいスタッフも多いのに、彼の人柄だと感心していた。


(彼となら、これからの人生、乗り越えられる)


身内だけの簡単な挙式で、私達は新生活に入った。

私は自分の周りの全ての人間に、祝福されていると思っていたのだ。


ある日、仕事の打ち合わせの後、一人でお手洗いに行った。

パウダルームで誰かの声がする。


『ねえ、葉子、先生、よくやるよね。』


スタッフの由美子の声だ。


『ええ、海外まで行っちゃって、お金どんだけ積んだんだろうね。

 そんな金あるんだったら、私達の給料上げて欲しいよ。』

『だいたいさ、血の繋がらない子供産んで、何が嬉しいんだろ?』

『そうだよね、信じらんない。自分に似てない子供可愛いかね。』

『産んだら産んだで、私達に仕事のしわ寄せが来るんだよお~。』

『もう、やってらんない~。』


優秀なスタッフと信頼してきた葉子と由美子。

彼女たちの本音に愕然とした私。

足が震えたが立ち上がり、思い切りドアを開けた。

そして努めて、冷静な声で言った。


『ごめんね、あなたがたに迷惑かけて・・申し訳ない。』


『・・・先生。』


由美子と葉子はギョッとして目をむいていた。

メイク道具を落としてしまった。













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