第15話 潮風に吹かれて思うこと
そして、その数ヶ月後
私は、福山とアメリカの西海岸にいた。
海に面したシーフードレストランで、ある人を待っている。
福山は海の幸をふんだんに使ったパスタにご満悦。
屈託無くよく話す。気怠い浜風に、美味しい料理。
私は、ここに来るまでの数ヶ月の仕事の疲れがどっと
押し寄せてきたかのように、軽いアクビをしたくなる。
ここに来た目的は一つ。
もちろん卵子提供を受けて、妊娠する事。
昨日は二人して、卵子提供のコーディネーターに会った。
そのコーディネーターは小太りな中年の男性で、片言の日本語が話せた。
名前はチャールズ。彼は親しげに、ここは日本人の依頼者も多いと話す。
彼は、私達が日本人なので、日系の女性がいいかと尋ねてきた。
『別にいいわ。血液型がA型(二人共がA型)で、若い人ならいいの。』
そう、若い人なら卵子も元気で、成功する可能性が高いのでは?と
単純にそう思っていた。
しかし、少し思い直して言った。
『ごめん、黒人は外して。あ・・それから、出来れば美人がいいかしら。
・・・それから、変な病歴のない人がいいわね。』
そうだ、もし、肌の色が極端に違えば虐めにあうかもしれない。
それでなくても、エキゾチックな顔になるはずなのだから・・
とメンメンと思いが浮かび、少し不安になってきた。
でも、ここまで来てしまったからには、もう後戻りは出来ないと
感じる。
『わかった、ユーのお好みの顔の女性、このリストの中にある?』
彼は、分厚いリストを見せてくれた。
写真入りで、容姿、学歴、職歴、血液型などの詳細なプロフィールが
そえてある。コード番号で分類され個人名はわからない。
こんな短時間で気に入った提供者が見つかるのか?
しかし、決めねばならないので、福山と二人ページを繰って
話し合った。
そして一人、目に止まったのは、結局アジア系らしき女性。
思慮深く、澄んだ目をしている若い女性に心惹かれた。
この女性は、なんで卵子バンクに登録したのかしら?
まずそれが疑問に思うが、コーディネーターの彼は、
『そりゃ、彼女たちのそれぞれの事情があるの。留学するための資金にするなんて子もいるさ。』
とこともなげに言う。
ふ~ん、そうね。
そうかも。
とりあえず、卵子提供者も決めて、病院に入院する日も決めたので
後はリラックスして、その日を待つばかりだった。
『黎子~、久しぶりだね~。』
懐かしい声が聞こえた。振り向くと大好きな祖母が立っていた。