第14話 彼女の選択
それまで、私は第3者の介入など考えもしなかったのだ。
まだ、自分の可能性を信じていたかった。
福山と私の子供、その唯一無二なる者の誕生を心から
待ち望んでいたのだ。
しかし・・・それも限界か?
私は考え込んでしまう。
日本ではまだ代理出産も卵子提供も公では認められていない。
無関係な誰かを巻き添えにして、自分の望みを叶えてよいのか?
私は思い悩んでしまった。
以前何気なく見たテレビ。
貧しい国のある地方の村に、大挙として外国人夫婦が訪れる。
代理出産をするためだ。
代理出産を受け入れた妻は大金を手にし、家を新築した。
夫の年収の何倍ものお金が入ってくる。
リスクを抱える羽目になるが、目の前のお金には換えがたい。
そしてようやく赤ちゃんを手に入れた夫婦は満面の笑みを浮かべた。
その顔を見ても、出産までの苦労は癒されるだろう。
お金をもらって、人助けも出来る。少々のトラブルには目をつぶる。
善意と欲の両天秤が、その地方の村に蔓延していた。
しかし、自分の卵子は長年の不妊治療で随分疲れている。
果たして、その村に行っても成功できるかと疑問だった。
それに、自分で産んでみないと実感が湧かない気がする。
子宮がないと言う理由のない自分は、選択する道ではない気もした。
それでは、健康な女性の卵子を借りる?
そして、自分で産む?を選択するべきか・・・と思う。
しかし、自分のDNAを引き継がない子供でも愛せるのか?
また新しい疑念がわき起こってしまうのだ。
私は思いあまって、継母の加世子さんに聞いてみる。
彼女はまだ30代の頃に病気のために子宮を失った。
そして父と再婚し、中学校入学前の私の継母になったのだ。
継母と言うよりは、年の離れた姉のように接してくれ、
私を可愛がってくれた。
加世子さんは、私の話を聞くと少し考え込む。
そして、私をじっと見つめて話し出した。
『血のつながりはそう問題ではないよ。現に私と黎子ちゃんは
とてもうまくいってるもの。ただ、全てうまくいくわけじゃないのは確か。
けれど、産めるものなら、私は黎子ちゃんに産んで欲しいわ。』
『・・・加世子さん。』
『福山君のDNA引き継いだ子なら、顔見てみたいじゃない?
面白いわよ、きっと・・・私達の人生まで楽しくなりそう。』
『そうかな・・・。』
『でも、その反対のケースもあるよ。その全てを受け入れる覚悟が
できれば、やってみてもいいんじゃない?』
『・・・・』
『私は、いつも黎子ちゃんを応援するよ。それだけは忘れないで・・。』
『加世子さん・・』
私達は互いの手を握りしめ、絆を確認した。