表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

第11話 恋は巻き巻き?

『それで、進展はあったの?』


加世子さんは、横のベットで横たわりながら聞く。

エステシャンの指が加世子さんの背中の上を軽やかに動く。


『なあんにもない。』

『え?嘘でしょ。』

『彼、タッパにバラ寿司の残りを嬉々として詰め込んで帰って行ったわ。

仕事があるからってさ。』

『そう、変な奴ね。でも可愛いじゃない。じゃあ、今度先生と一緒に食事させて、固めるか。』

『う~ん、パパの威力を借りてってこと??それもどうかな~?』


カメラマンなら、映画監督の父に会うことは魅力に違いない。

でも、父が目的で近づいてきたなら、ちょっとショックな自分に

とまどってしまう。


『ええ、じゃあ、黎子ちゃんもかなりその気なわけね。』

『やだ~、からかわないで~、加世子さん。』

『そうかあ、可愛い黎子ちゃんの為に、継母ががんばりますかあ。』

『・・・・。』


加世子さん、いつもありがとう。

感涙だよ。


私は、恥ずかしさで、枕に顔を伏してそう思った。

そして数日後には、加世子さんが、4人で食事をする段取りをしてくれた。


海外ロケで帰国したばかりの父は

私の料理を食べたいと言うので自宅にしたのだった。


福山は父相手に屈託なく笑い、よく飲んだ。

撮り終えたばかりの映画の事を語る相手が欲しかったのか、

父はいつになく饒舌だった。


『いや~、今日は君に会えて楽しかったよ。』

『僕も監督に会えて光栄でした。』


佐藤の時は、ニコリともしなかったくせに、福山がいたく

気に入ったようだ。

やはり同業者には親近感がわくのか?それとも福山が

好青年だからか?と思うが、悪くない反応だった。

そして酒宴が終わる。父は酔いつぶれて眠ってしまい、加世子さんが

介抱してる間、そっと福山は私にささやいた。


『今度の日曜日、お弁当持って出かけませんか。』

『え?』

『俺、黎子さんの巻き寿司が食べてみたい~。』


場所は近くの大きな公園、今頃はバラがきれいに咲いてるとか・・


(ずいぶん、チープなデートだこと・・)


母親が多忙だったので、弁当に巻き寿司を入れてもらった

思い出がないと話す福山の無邪気な顔。


『いいわよ。もちろん。』

こうなれば、上巻きでも、細巻でも何でもいいや

と思ってしまう。


(あなた、私は若くもないの。恋は巻き巻き・・巻いて巻いて急がなきゃ

いけないの~!!)


そう心で叫んでいた。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ