羽は生えなかった、それでも天使だった
掲載日:2025/12/23
ここ、セラフィム学院には羽のない天使が存在する。
その名は『ルシア』。
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白い雲が校庭のように広がり、鐘の音が鳴ると、天使たちは一斉に背中の羽を広げた。光を含んだ羽音が重なり、空気が震える。その中で、私はいつも地面に立っている。
「ルシア、貴方は今日も見学です。」
ーー今日もか。
わかってる事だ。だって私には羽がないんだから。
「分かっています。」と答えながら空を見上げる。
見えるのは、純白・淡い青・淡い黄色。同じ人は誰一人としていない。皆自分だけの羽を持っている。
「……私だけ、」
口から溢れ出るのは惨め以外に似合わないであろう言葉ばかり。そんな自分がより惨めになる。
『羽が生えないのは私が悪い子だから』
私の背中は痛みや違和感は微塵もなく、静かだ。でも平和ではない。
「落ちこぼれ」
風に混ざってそんな声が聞こえた。振り返れば誰かが目をそらす。その仕草さえも、もう見慣れていた。最初は辛かった。何度も泣いた。でも、今はもう期待しない。私の味方は私だけ。自分を守れるのも自分。そう思えば楽になった。
私は空を飛べない天使ルシア。二つ名は落ちこぼれ。
地で歩むことしかできない出来損ない。




