思春期のおとこのこ?
ある日、そこには一人の男の子がいました。彼は昨日14歳になったばかりでした。この世界は「記憶」が通貨として使われ、人々は「記憶結晶装置」を持って、今日も自分の記憶でいろいろ交換していました。
その男の子には、いい記憶がたくさんありました。10歳のころ、遊園地に連れていって、ジェットコースターに乗った記憶、年もわからないころ、初めて立てたときの記憶..まぁ、悪い記憶もあったけど..
この世界での「いい記憶」は高値になり、逆に「わるい記憶」は安値で売られていたりしていました。
この世界で、男の子は人助けをしようと考えました。もっとこのいい記憶をみんなにもって、みんなが幸せになるような世界になればいいな、そんなことを、純粋に考えていました。
「すいません、私と交換をしませんか?」
とある、美しい女性が話しかけてきました。男の子は喜んで、自分のよい記憶を交換し、食べ物をもらいました。
「どうも、自分と何か交換をしませんか?」
とある、普通の青年が話しかけてきました。男の子はまた、自分のよい記憶を交換し、今度はものをもらいました。
しかし、もうあまりいい記憶が、男の子には浮かばなくなってしまいました。親が虐待をし、わるい記憶の方が多かったからです。
ただ、隣を見ると、そこにはホームレスの幼い女の子がいました。段ボールを布団にして、なんだか寒そうです。
男の子は勇気をもって話しかけ、彼女に無償で自分の「いい記憶」を渡しました。
..もう、おとこのこはじぶんがだれだかわからなくなってしまいました。でも、これでおとこのこはいいのです。なぜなら、みんなしあわせをおくることができたのですから。
..一方、あの女の子がすぐにその場を離れ、近くにある犯罪組織へと行き、ボスにそのいい記憶をそのまま渡していたのは…でも、それを知ることは、もうできない。
「自分自身が貧しかったとしても、他の人に何かを恵むべきだろうか?」
「たとえ自分が裕福であっても、誰かすらわからないような人間に何かを分け与えてもいいのだろうか?」
自己とは何か、アイデンティティとは何か。




