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第2話 初VRMMO

「MIDNIGHT EDGE」。そのゲームはかつて人気を誇ったゲームであった。


 19XX年。世の中に「アーケードゲーム」というものが稼働し、「本当の感覚で操作できる」として話題になった。

 中でも、太鼓を叩いてリズムを取る”音楽ゲーム”だとか、敵を銃で打って戦う”シューティングゲーム”だとか、普通のスポーツに大きな点数をつけてその点数で競い合う”スポーツゲーム”だとか、色々とある。


「MIDNIGHT EDGE」、通称ミッドエッジは、その中でも最も人気を誇る、車で速さを決めるレースゲームだった。


 ミッドエッジ以外にもレースゲームはあるのだが、そんな中でも爽快感のある操作で、他のアーケードゲームとは違う現実味のない操作感で、ファンを魅了した。



 20XX年。「MIDNIGHT EDGE 2」の稼働開始と同時に、怜司はミッドエッジを知る。

 認知だけはしていたが、流石にやろうとまでは思わなかった。

 当時、親には「ゲームセンターに行くな!」と叩きつけられていたからだ。


 そんな中、怜司は友達と家を抜け出し、初めて「ゲームセンター」というものを知り、初めて「MIDNIGHT EDGE」というものを知る。


 そこからミッドエッジにどハマりし、親がいない隙に財布から500円玉を握りしめ、家を飛び出し、ゲームセンターに向かうという日々を過ごしていた。


 まずはストーリー攻略。ここからやらないと何もかもが始まらない。

 ミッドエッジの最高馬力は840。ストーリーを80話クリアしないと840馬力には及ばない。

 そして一番大事なのは、”馬力を変えられる”ということ。

 馬力を減らして、その分ハンドリングを強化できるのだ。

 ハンドリングを強化するイコール、コーナーで曲がりやすくなり、グリップが良くなるのだ。

 なぜハンドリングを強化するのかと言うと、「コースやプレイスタイルに合わせ、最適化するため」である。

 例えば、箱根などのコーナーが多いコースで、840馬力で攻めると言ったら、速すぎて壁に当たるのは目に見えてしまう。

 だから、わざと700馬力くらいに落とし、ハンドリング性能を上げるのだ。

 加速は劣るものの、コーナーで差をつけることができる。

 まぁプレイヤーは、そんなこと常識として頭に入れているから、最初から840馬力で挑むことはないが。


 そして分身対戦。

 特に「速くなる」と言った機能は無いが、「ドレスアップポイント」を稼ぐことができる。

 ドレスアップとは、エアロパーツというものを通して車の外見を好きに弄れることで、ミッドエッジでは「ドレスアップポイント」が一定数集まると、そのエアロパーツをゲットできるという仕組みだ。

 怜司は分身対戦で次々と勝っていき、ついにはエアロパーツをすべてゲットした。

 だが、怜司的に純正が好きなので、そのエアロパーツは付けなかった。


 最後に乱入対戦。

 店内における対人戦で、対戦相手とのリアルなレースの駆け引きが試されるモードである。

 分身対戦では、”隣に相手がいる”と言った緊張感が無い。

 けど、隣に相手がいるだけで不安が一気に上がり、緊張感が増す。

 分身対戦でも実装されているが、その緊張感を一気に増すために、レースが始まる前のロード画面で、”一度BGMを鳴りやませる”と言った機能もある。

 乱入対戦の楽しさを知った怜司は、人が集まる時間帯を予測し、その時間帯にゲームセンターに行き、乱入対戦を飽きるまでやっていた。

 そんな中でプレイヤーから付けられたあだ名は「白の悪魔」。

 R33の白いボディ、乱入対戦を無理にでも要求してくることから、そのような名前が付けられた。


 まぁそんなこんなで、ミッドエッジの虜になった怜司は、ずっと筐体に居座り、どんどん強くなって強いやつを倒しまくり、最終的には全国1位を取ることになる。


 そして、ミッドエッジを通して、1位2位の座を奪い合う”友達”もできた。

 その友達とは、「NN」だった。


 学校も何も知らない。どこに住んでいるのかも知らない。本名すらも。

 でも、ミッドエッジを通して仲良くなり、話していくごとにどんどんと仲は深まっていった。



 そこから結構な月日がたち、最新作の「MIDNIGHT EDGE」。

 名前が変わっていないのは、初代ミッドエッジのリメイク版だからだ。

 その理由として、もう「アーケードゲームは古い」とされ、ゲームセンターに行く人の数は減っていったからだと予想される。

 最後くらい本気で作りたいと、ミッドエッジ作成者が思い、最初から夢に思っていたものを完全に再現させたのだ。


 だが、そんな作成者の思いは届かず、ゲームセンターに行くプレイヤーは少なくなる一方だった。

 そんな中でも、唯一ミッドエッジを愛していたのは、怜司とNNだけだった。



 ◇ ◇ ◇



「ここか…」


 怜司はNNに言われていた「MXO」というVRMMOを購入しに来ていた。

 中古でもよかったが、ネットにあった「VRMMOは新しいものでないと脳ミソが破壊される」という情報に脅かされ、最終的に新しいものを購入することになった。



「すいません。MXOというVRMMOはありますか?」

「え、MXO…ですか?」


「…ちょっと待っててください……」

「…?」



 怜司がレジにいる店員に聞くと、びっくりした表情を出した。

 そんな表情に疑問を思いながらも、怜司は近くにあったちっちゃな椅子に腰を掛けた。


 スマホを見ながら店員を待っていると、レジの向こうからデカい箱を持ちながら、さっきの店員とは違う店員が出てきた。


「こちらが、MXOが内蔵されているヘッドギアですね」

「内蔵されているんですか?」


 この人が持ってきたのはMXOが内蔵されている、カセットを入れ替えしなくてもOKなヘッドギアだった。

 怜司的には、MXO以外のゲームはやらないと考えていたため、内心少しうれしそうに考えながらも、そのヘッドギアを見つめた。


「えぇっと…」

「…???」


 ヘッドギアを見つめていた怜司に対して、店員は少し戸惑いながらも何か言いたげにしていた。

 そんな姿を怜司は見て、すごく疑問に思った。


「なにかあるんですか?」

「あぁー、えぇ…」


 怜司がそう問うと、その店員はまた戸惑う。

「何か言いたいのなら、言ってもらっても結構ですけど…」と控えめに言う怜司に対し、また少し戸惑いながらも、店員は決意を決める。


「知らないと思うのですが…」

「はい…」



「このゲームソフト、”呪われている”と言われてるのです…」


 ゴクリと喉を鳴らして店員が言うのを待っていた怜司は、その言葉を聞いてゾクッと来た。

 “呪われている”。どこかで聞いたことがあったのだが、そんなのも思い出せずに怜司は店員に質問する。


「…”呪われている”、とは?」

「…えぇっと、話せば長くなるのですが…」



 MXOは、他のゲームソフトよりも現実感が高いらしい。

 現実感が高すぎて、脳に損傷が起きるほど、らしい。

 ちゃんと事故ったら車のボディはへこむし、体になにか傷ができたら、本当にその傷が再現され、痛いらしい。

 MXOの中で派手に事故ったら、脳が損傷し、本当に死んでしまう可能性がある。だそうだ。

 実際に海外勢が300kmで走り、アザーカーに直撃して死んでしまった事例があるそう。

 他のソフトは多少痛いだけであり、”死んでしまう”という事例はなかった。



「そ、そうなんですか…」

「”死んだ”という報告を受けて販売中止にしようと考えていた運営ですが、その”考えている”という報告から運営は息を途絶えているのですよ…」


 そのMXOの公式サイトを見てもらったらわかるが、「販売中止の予定」の報告から息が途絶えている。

「いつか販売中止になる」と書いていて、「その”いつか”はまた後ほど、この公式サイトで知らせる」とあった。

 だが、その”後ほど”がまだ来てないのである。


「…でもなんで在庫が?」

「…それは、その報告を受けて買う人が激減したからです……」


 まぁそんな報告を受けて「買いたい!」と思うプレイヤーはいない。

 それで買う人がいなくなり、在庫が今日まで残ったということだ。



「…なので、あまり買うのはお勧めしないのですが……」



 そう言われ、怜司は頭を悩ませた。


 だが——



「か、買います」



 怜司はそう口に出していた。


「そ、そうですか…」


 店員はまた少し驚きながらも、そのヘッドギアのバーコードを読み込んでいく。


「お、お会計、113400円です…」


 怜司は、「ミッドエイジ何回出来るんだ…」と陽気なことを考えながらも、お年玉でそのヘッドギアを購入した。




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