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むかしむかしの物語
むかしむかしあるところに…
そんなふうに始まる物語。寝る前に母が子に読んで聞かせる物語。現実ではない、ありえはしない物語。語られ尽くした物語。
それを
何度も
何度も
何度も何度も何度も何度も
何度も、
繰り返している
この小さな子共二人きり
あまりにも大き過ぎる部屋で
何度も
何度も
繰り返す
繰り返す繰り返すくりかえす
むかしむかし
お姫様と王子様
何度も何度も
むかしむかし
お姫様
王子様
お姫様
王子様
何度も
何度も
なんども
くりかえすから、
ついに僕は彼女に声をかけた
どうしたかったのかはわからない
どうなりたかったのかも
どうにもならないと思っていたかも
それでも僕は
「お姫さま、たまにはお外で遊びませんか」
お姫様
そう呼んだのは
きっとイジワルからだった
揶揄ったのだ
同じことを繰り返す彼女を
何度も何度も繰り返す彼女を
怒るかと思った
泣くかと思った
無視されるかと思った
けれど
彼女は…
だから
だから僕は、彼女を本物にすると誓った
きっと彼女を本物にしてあげるのだ
そうしたらきっと彼女は…