第4話「チョコレートの城と、記憶の扉」
ひかりが辿り着いたのは、黒くそびえる《チョコレートの城》。
壁も柱もチョコでできており、触れるとほんのり温かい。
城内は静まり返り、どこか寂しげな気配が漂っていた。
「……こんにちは。誰か、いますか?」
返事はない。
ただ、奥から微かな足音と、重く閉ざされた扉の軋む音だけが響いた。
そこにいたのは――ひとりの青年だった。
深紅のマントを羽織り、額には金色のカカオの紋章。
青年は無言でひかりを見つめ、やがて低く囁いた。
「……君は、誰かの“記憶”か?」
「え?」
青年は背を向ける。
「この城は、“忘れられた記憶”の墓場。僕の記憶は、甘くも苦くもない。ただ空虚だ」
彼の名は、“カカオの騎士”。
かつて王に仕え、チョコレートの国を守っていた。
だが、王が消えた日を境に、彼の記憶も失われたという。
「もし、君が“記憶の扉”を開けられるなら……この苦さに意味を与えてくれ」
ひかりはそっと、バッグから小瓶を取り出した。
それは、湖でプリン姫からもらった“涙のカラメル”。
それをほんの少し、騎士の差し出したチョコに垂らすと――
パキン……と音がして、ひび割れた扉が開き始めた。
「……この香り……昔、王がくれた“甘くて少し苦いチョコ”……」
記憶の断片が、騎士の中に流れ込む。
彼はゆっくりと顔を上げ、目に光を宿してつぶやいた。
「王は最後に言った。“甘さとは、誰かのことを思う苦さでもある”と……」
その瞬間、城中にほんのりと甘い香りが満ちていく。
扉の先、祭壇に置かれていたのは――黄金色の板チョコだった。
> 《甘さレベル:42》
“想いを思い出させた者に、調律の力が与えられる”
騎士は膝をつき、ひかりに礼を告げる。
「君の優しさが、僕に“甘さ”を教えてくれた」
ひかりは微笑んだ。
「甘さって、味だけじゃないんですね」
そして、チョコの香りに包まれながら、次の旅へと足を踏み出すのだった。
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今回のレシピ:ビター&スイート板チョコ
材料:
チョコレート(ビター)…100g
チョコレート(ミルク)…50g
砂糖…大さじ1(お好みで)
無塩バター…10g
ナッツ・ドライフルーツ…適量
作り方:
1. チョコを細かく刻み、湯せんでゆっくり溶かす。
2. バターと砂糖を加え、滑らかになるまで混ぜる。
3. 型に流し入れ、ナッツやフルーツをトッピング。
4. 冷蔵庫で2〜3時間冷やし固める。
**ワンポイント:**苦みと甘さの“バランス”がポイント。甘くなりすぎたら、塩をひとつまみ加えると味が締まります。