第3話 新たなスター
新たな期待の新星は打ち合せたかのようにタイミング良く同時に出現した。1人は白石真由。強さとともに優しさ、万能さ、容姿の端麗さも持ち合わせている彼女はあの伊藤絵里を彷彿させる。彼女の圧倒的な強さ、優しさ、万能さを目にして人々はこう言った。
「新たなる正義のスターが現れた。」
だが、彼女と伊藤絵里との間には1つの大きな違いがある。絵里は最後まで1人で戦い抜いたのに対し、真由はできるだけ仲間と戦い、チームワークを大切にしていたのだ。一度仲間になったら何があっても最後まで見捨てない、これは彼女が心の中で決めていた信条でもあった。だが、その点、迂闊には動けないという問題が介在した。仲間に何かあったら自身の責任になるのだから。よって理恵との直接対決は決行できていない。
もう1人のスターに命を助けられた男は思わず一言目にこう言った。
「男の魔法少女?」
「失礼な。俺は女じゃないんだから魔法少年とでも呼んでほしいね。」
そう、彼はこの街に出現した初の男の救世主だ。西園寺和樹。その名に聞き覚えのある人も多かった。将棋、囲碁、オセロ、あらゆるボードゲームで最年少記録を次々と更新する天才少年。テレビ、メディアでの出演も多いちょっとした有名人だ。過去に「松下理恵は僕の敵ではありません。彼女の攻撃はすべて読み切っていますから。生きている間に彼女と是非お手合わせしてみたいですね」と発言し、話題になったこともある。新たなる2人のスターの出現により、勢力の三すくみ状態ができあがった。理恵は余裕の表情も見せるも内心焦っていた。自分が一番信頼されていないことが分かっていたからだ。半ば実力があるだけに一定の支持は得ていたが、一番人望が少ないことは傍目から見ても明らかだった。そんな彼女の第一の施策は西園寺和樹を潰すこと。彼とイーグルが戦っている最中に彼の命を貰おうという算段だ。そしてついに決行の日が訪れた。計画は誰の目から見ても上手くいっているかのように見えた。しかし、彼の真の実力を見誤ったのが理恵にとっては最大の誤算となった。
避けた?
彼女の放ったライフルの弾丸を彼は綺麗に交わしたのだ。一瞬怯んだ彼女の隙をついてイーグルをも倒して見せた。
「お目にかかれて光栄だよ、悪徳魔法少女さん。前にも言った通り君の攻撃はすべて読み切っているよ」
理恵の顔が憎悪で引き攣った。
「誰が悪徳よ?あんたたち、こいつを殺すわよ」
そう言うと他4人、いや、他3人とともに彼に飛びかかった。というのは嘉穂だけは物陰に逃げ隠れていたからだ。だが、彼の実力は本物だった。4人を相手にしても全くの互角。吹き矢もすべて綺麗に交わして見せた。
「松下理恵、これで分かった、あんたは1人の力だけじゃ、俺には勝てねぇ。」
これを聞いた理恵は頭にきて、他のメンバーに下がるように命じた。これで1対1の実力だけの戦いが実現した。最初こそ絵里も善戦したものの、徐々に端に追い込まれていった。和樹が理恵の首元にナイフを突きつけた。
「負けを認めな。あんた、その性格どうにかしないと、後に痛い目を見るぜ。」