16話 反逆の好美
「おま、この私を裏切るなんて良い度胸してるわね。命が惜しくないの。」
そう、理恵の目の前には少し身体を震わせている好美が立っていた。愛理、桃子、瞳子、真由の4人はもちろん天音も彼女の方を見る。
「理恵を裏切ってただで済むと思うなよ。」、そう言って懐からナイフを取り出す。
「何ちゅーもの持ってやがるんだ、あいつ」と愛理。天音はナイフを自身の魔法で大きくして、好美の心臓部めがけて振り下ろした。彼女の手を真由が抑えた。透かさず理恵が真由の後ろに狙いを定め、銃弾を放とうとするのを瞳子は見逃さなかった。反射的に身体が動いた。銃弾をかわすため真由を突き飛ばした。彼女を銃弾から守ることには成功したが右腕の肘辺りに痛みが走った。少量の血が飛び散る。理恵の銃弾が腕を掠ったのだ。
「瞳子、大丈夫?」、真由が真っ先に駆け寄ってきた。
「うん、平気」
「ごめんね。私がしっかりしていなかったから…」
そう、白石真由は本来こういう人間だった。自分のことより人のため。友達が傷つけられたら自分のことのように、いや、自分のこと以上に怒ってくれる人なのだ。
「私の友達をこれ以上傷つけたりしたら、許さないから」、いつも通りの毅然とした態度に変わって入れ替わった。
「はぁん、ならその友達とやらの代わりにテメェ自身が傷を負って貰おうか。私とサシで勝負しな」と理恵。
「言われなくても、あんたは絶対私が倒すわ。」
勝負は早々にはつかなかった。どちらも決め手に欠ける互角の戦闘が続いていた。傍らでは好美と天音も死闘を繰り広げていた。
「仲間割れとは哀れね」、桃子が瞳子の怪我を手当てしながら呟いた。愛理は好美と天音の決着が付くのを待っている様子だった。勝った方を倒せば効率が良いと見ているのだ。ふと瞳子は後ろに殺気を感じた。愛理の背中を誰かが狙っている。近くにいたカラスが鳴いた。危険が迫っているサインだ。愛理も危険を察知した。が、時既に遅し。吹き矢が後方から飛んでくる。彼女は覚悟を決めた。瞳子は決死の覚悟で愛理の前に立ちはだかった。その瞳子の身体を桃子が強引に突き飛ばした。銃弾は桃子の心臓部の右辺りを貫通した。辺り一面が血の海に染まる。魔法少女たちは一斉に戦いをやめて桃子の方を見た。
「おい、馬鹿。何やってんだ。」と愛理。瞳子が真っ先に桃子を抱き起した。
「桃子、何で…」