12話 不吉な予兆
真由たちは今日もイーグルたちと戦っていた。もちろん報酬はなしだ。真由たちが戦っている傍を理恵たちが何食わぬ顔で通過する。理恵がすれ違いざまに真由の耳元で呟いた。「お前みたいなブス、早く死んじゃえば良いのに。まぁ、せいぜい頑張ることね。」
「私は死なないし、少なくともあなたよりは可愛いわ。」、真由は澄ました顔で言い返した
「その通りよ。あんたなんか真由の足元にも及ばないんだから。」、愛理も便乗して言い返す。
理恵の顔が引き攣った。このやり取りは最近お決まりになっている。理恵は特に用もないのに真由の隣をわざとらしく通り過ぎて暴言を吐く。
「真由に対して余程何らかのコンプレックスを抱いているのだろう。」と瞳子は思った。
「あんなのは私の敵じゃないわ。みんな、早いとこ片づけるわよ。」
真由たちは真由の掛け声と共に魔法少女に変身を遂げた。戦いは無事終わった。そこまで苦戦することもなく、あっさりとイーグルを倒した。だが、と瞳子は思った。イーグルにとどめを刺した時に放った真由の弓に違和感を感じた。色が以前よりくすんで見えたのだ。前はもっと輝きを放っていた筈なのだ。少し嫌な予感がした。
「いやぁ、今日も格好良かったよ。真由がいれば、私たち、必要ないね。」、桃子が声を弾ませる。」
「ありがとう、でもみんながいてくれた方が心強いわ。」、と真由。手を振って皆と別れる。家に帰る。自分の部屋に入る。ため息をつく。
「ブスとか死ねとかきもいとか、ほんと、何のんだよ。私が何かしたわけ?そんなに私のことが嫌いなのかよ。」心の中で毒づく。ここ最近、身体の不調を感じることが多い。脳の中に倦怠感とでも言うべき鉛のような疲れが溜まっているのだ。それに、見えないはずのものが見えたり、聞こえないはずの声や叫び声が聞こえたりするのだ。幻聴や幻覚と言ったら良いのだろうか。また、夜も眠れない日々が続いていた。度重なる悪夢によって毎日のように魘されるのだ。表では明るく振舞っているが、最近は常に神経をすり減らしていた。精神的に疲弊していることは誰にも相談していない。その日、彼女は睡眠薬を買いに行った。