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5話 ルーナ③


 「おや? おかえりなさい。 今日は随分とお早いですね」


 自宅のマンションに着くと今朝にもあった喋るドラゴンが玄関の前にいた。

 

 「えぇ・・まぁ、はい」

 「どうかされましたか? 今朝も思いましたがなんだか様子が少し変ですよ?」

 「いや、なんでもない・・です」

 「?」


 歯切れの悪い返事に首を傾げるドラゴンだが、生馬は再びドラゴンが会話する事もどうして玄関前にいるのという疑問を考える事ができないでした。

 それもこれも、先ほどまで一緒に肩を並べて帰宅していた本庄との関係を明確にする事ができなかったからである。


 「いやでも恋人でもない相手にダーリンなんて呼び方を変えるか? そもそも毎日一緒に待ち合わせをして帰っているような事もいっていたし、これはもう確信なのでは―――」

 「・・・あの~、(あるじ)様?」

 「でもな~しっかりと恋人同士だと結局の所は聞けなかったし・・・今なんて?」


 完全にドラゴンの事も忘れて家の鍵を出そうとした時に意識が一気に戻った。

 今このドラゴンは俺に対して(あるじ)と呼んだのか?


 「えぇそうですよ。 我が主、生馬冬至様。 (使い魔)のマスター様をお呼びしたんですよ」

 「つかいま・・・使い魔ッ?!」

 「おぉ・・びっくりした。 そんな驚かれます?」

 「そりゃ驚くよッ!!」


 使い魔とは確かファンタジーの魔法使いがカラスなどを使役している動物の事を指していたはずだ。

 そんな設定の使い魔が目の前にいる喋るドラゴン?

 しかも主君が俺?

 もう今朝から世界の常識がすべて書き換えられているような感覚で、まるで今も『 夢 』を見ているようだ。


 「主様、本当に大丈夫ですか? もしかして熱があるのでは?」

 「・・・いや。 大丈夫・・です」

 「大丈夫な人はそんな目を回しながら困惑しません。 ほら、とりあえず家の中に入りましょう。 御両親と御兄弟様はまだ帰られていませんので今日は私が家の雑務をさせて頂きますから」

 「雑務って、ドラゴンのキミが?」

 「また変な事を。 いつもご両親のいない日は私が雑務をしているではありませんか。 ほら、そんな事もボケてしまわれるくらい体調が悪いのですから早く家に入りましょう!」


 そういってドラゴンは無理矢理に俺の手から家の鍵を取り、背中を押して家の中に入れられた。



 ◆ ◇ ◆ ◇


 時刻は19時。

 どうやら今日は下兄弟も両親も帰りが遅くなると携帯のメッセージが届き、記憶にない使い魔のドラゴンと過ごす事になっていた。

 俺は準備ができるまで自分の部屋で寝ているように言われ、ベッドの上で寝転んでいる。

 今日は部活にも言ってないせいか、不思議と眠気もなく、ただジッと今日の出来事を振り返りながら見慣れた天井を見つめていた。


 (・・・うん。 やっぱりそうだ)


 そして導きだした答えは、今いるここは()()()()()()()()()()()()

 薄っすらとではあるが夢の中で扉を開けた気がする。

 覚えている訳ではないが、なんとなくそんな気がするのだ。

 そして俺の持つ常識の日常と、今日一日見ていたこの世界の常識があまりにもかけ離れ過ぎている。

 つまり、俺が本来知っている本庄さんから教わった異世界に繋がるアストラルの扉は実在したという事になる。

 

 (だとするともう一度、夢の世界でアストラルの扉を見つけて通れば元の世界に戻れるのか?)


 もしもそうだとしてもそんな都市伝説な物が連続で見つけられるものなのだろうか。

 そもそも元の世界に戻れる保証があるのか・・・。


 そんな今後の事を考えているとコンコンッと扉のノック音が聞こえる。

 入ってもいいかと尋ねられる声は使い魔のドラゴンの声だ。

 どうやら夕食の準備をしてくれたらしく、呼びに来てくれたようだ。

 俺は一度溢れ出てきた情報を整理する事も踏まえてベッドから起き上がりリビングに向かう事にした。


 「おや、もう来られたんですね。 食欲はあるという事で今日のレシピは肉料理にしました」

 「・・・」

 「すぐに白米も用意するので先に座って待っていてください」

 「・・・」

 「あ、それと飲み物はどうされますか? 麦茶なら今朝方に母上様が用意したものがありますが――」

 「ちょっと待って」

 

 情報を整理したい為にリビングに来てご飯を食べに来たのに、目の前にある光景に俺はまた頭が混乱してしまった。

 耳に聞こえる声と口調は確かにさっきまで空中にパタパタと飛んでいたドラゴンそのものだ。

 しかし目の前で白米をよそっているのは黒髪ロングの超絶美女がエプロンをしている姿だった。


 「一応聞かせて。 ・・・誰?」

 

 その質問にドラゴン?が心配そうな表情を向けながら近づいてきて、俺のおでこに手を当てる。

 

 「やはり熱があるのではないですか? 人間の姿の私が分からないなんてやっぱりおかしい。 何処かで変な魔道具でも持たされましたか? それとも呪いの類の魔術でもかけられたのでは」

 「ちょっ! 近い!」


 俺は後ずさって距離を置く。

 

 「主様。 やはり一度私に検診させてください。 私の魔術であればすぐに原因をハッキリさせる事ができますので」

 「だ、大丈夫だから! ほんと気にしないでッ」

 「気にします! 私は貴方の使い魔ですよ! 主君の異変に気付いていながら眺めているだけなど出来ません! さぁ、こちらに来てください」


 ジリジリと距離を縮めてくる美女。

 あまりの展開に俺はどうしたらいいのか分からずオドオドとしていると、部屋から携帯の着信音が鳴っている事に気が付く。


 「電話だ! もしかしたら家族の誰かからかも!」

 「あ! 主様ッ!!」


 なんとか隙を見つけてリビングから飛び出し、俺は部屋に駆け込んで鳴っている携帯を取る。

 急にあんな美女が目の前に現れて、あれやこれやと世話をしてもらうなんて年頃の男子高校生にはハードルが高すぎです!

 そんな状況の救世主(着信先)は一体誰なのかとみると、そこに表示されているのはまたも見覚えのない名前だった。


 「着信先・・ルーナ?」

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