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海の匂い

作者: 人間

にんげんまめさんの初音ミクのイラストにインスパイアを受けこの文章を書きました。初投稿なので多分しょうもない文章です。読まない方がいいです。読むなら、作品にボカロの歌詞を何個か入れてるので探してみてください。

 その日は、とても蒸し暑い日だった。テレビでは、何とか地点で史上最高気温を更新、というニュースが流れていた。やけに五月蝿い蝉の声だけを覚えていた。仲良くしていた女友達が、今住んでいる田舎から都会に引っ越すことになった。引っ越しの前日は、彼女と一日中遊んだ最後の日だった。昼間からずっと一緒に過ごし、日が暮れる頃には疲れ切っていた。翌日には彼女が引っ越すと分かっていたからこそ、終わりたくない気持ちが強くなっていた。


 すっかり日も暮れてしまい、涼しくなった。昼間の暑さが嘘のようだ。田舎はアスファルトが少ないから、夜に気温が下がりやすいのである。「そろそろ帰ろっか。」「そ、そうだな…。」彼女に言われて、私たちは帰路に着いた。だが、私の足取りはとても重いものだった。なぜなら、私は彼女と別れるのが嫌だったからだ。この時間が終わって欲しくなかった。このまま帰らなければ、この時間が永遠に終わらないのではないか、と思ってしまったのだ。こんな身勝手なことを考えるのは良くないと分かっていても、どうしても考えてしまう。彼女も同じ気持ちでいてくれたらな…。そんなことを考えながら歩いていると、彼女が突然立ち止まった。


 立ち止まったことに気付かず、数歩歩いてから振り返り、こう尋ねる。「どうしたの?」って。彼女は少し躊躇ってから、口を開いた。「このまま、逃げちゃおっか」電車には、私たち2人以外には誰も乗っていなかった。当然である。こんな田舎には、夜中に出かけるような場所などないのである。正直私はものすごく興奮していた。私はこの町から1回も出たことがなく、これが初めての遠出である。しかも相手は好きな相手である。これほどまでに理想的で興奮できるシチュエーションはあるだろうか?いやない。断言出来る。このまま、どこまでも下って行ってくれないだろうか。学校も親も手が届かないぐらい、うんと遠い場所までどこまでも。だが、そんなことは起こるはずもなく、電車は無情にも終着駅にたどり着いてしまった。駅に降り立つとそこは、海岸沿いにある小さな無人駅だった。規則的な波の音とともに漂う「海の匂い」が2人を包み込んだ。その匂いは当時の私にはただの「海に来たんだ!!」という興奮を呼び起こすものでしかなかった。しかし、今思えば、その匂いは実は死臭であり、私たちの逃避行の終わりを暗示するものだったのだろう。海の静けさとその匂いが、逃避行の最後を暗示していたのだと、今となって感じる。静寂の中、波の音だけが静かにそして寂しく響いていた。「行こう!」紅潮した頬の彼女に手を引かれるまま走る。夜風が冷たかったがそんなことはどうでもよかった。今思えば、人と関わろうとしなかった私にとって、これが青春と呼べる唯一のものだったのだろう。サーフボードも持たないまま、2人で海に飛び込む。静かな海辺に、水しぶきが2つ。静かな海に2人の笑い声と波の音だけが響き渡り、その声が夜の静寂を柔らかく彩っていた。その後は、砂浜に寝転がって、ただ彼女と語り合った。その間にもいくつもの星が東の空にものすごい速度で飲み込まれていく。実際はいつもと変わらないのだが、この時の私には恐ろしく早く見えたのだ。夜が明けないでほしかった。夜明けが来たらこの夢のような時間が無くなってしまうような気がした。「あぁ神様、私は何も望みません、何もいりません、だから私から彼女を奪わないでください。」と心の中でいのる。時の流れが止まって、この時間が永遠に続いて欲しいと思った。だが、そんなことは起こり得ないと、頭ではわかっていた。


 そんな私の想いも虚しく太陽が昇って来ていた。夜明けがすぐそこまで迫っている。当然である。私たちは終電でここに来たから、ここに到着した時点で既に1時を過ぎていた。それに加え、今は7月の初めである。つまり、夜明けが早いのである。そのため、夜明けまでは3時間程の猶予しか無かったのだ。僕が朝日を眺めていると、彼女が突然口を開いてこう言った。「このまま、一緒に逃げ続けてくれない?」私は一瞬、ほんの一瞬逡巡した。正直、彼女と一緒に逃げるのは、私が今まで受けてきた提案の中で、圧倒的に1番魅力的な提案であるのと同時に、その提案を飲めば、この先の自分の人生が大きく狂うであろうことは容易に想像できた。逃げきれたとしても、逃げきれなかったとしてもだ。そんな私の心中を彼女は感じ取ったのだろう。私が答えるよりも先に、彼女はバツが悪そうに笑いながら、こう言った。「変なこと言っちゃってごめんね。こんなことに君を巻き込めないよ。さっ!早く帰ろ?お母さんたち絶対怒ってるよ。」


 無理して気丈に振る舞う彼女に僕は何も言い返せなかった。朝日に照らされた彼女は、ただただ美しかった。世界のどんな美術品も敵わない。モナリザも、真珠の耳飾りの少女も、ヴィーナスの誕生だって敵わない。僕にとって、唯一無二にして最高の美しさがそこにはあった。


 そこから私たちは、一言も喋らなかった。始発を待つ時間も、電車に乗っている時間も。それぞれ2時間近くあったのにも関わらずだ。駅に着いたら、それぞれの両親が待ち構えていた。私は厳しく叱責されたが、無事に帰ってきて安心したのか、両親は泣きながら抱きしめてきた。一方彼女の親は、彼女が家出をしたことに怒っているというよりも、引っ越しの準備に追われる中、予定が狂わされたことに対してご立腹の様子だった。彼女が半日行方をくらましたことに対しては、心配する素振りも見せず、ただ叱責するばかりだった。私たちは親に連れられて、言葉を交わすことなく別れた。その日の夕方に、彼女は出発した。クラスメイトがみんな集まっていたが、私は行かなかった。怒っていた親も「最後ぐらい会ってきたら」と言っていたが無視して会わなかった。今彼女と会えば、私はこの感情を抑えることが出来ないと思ったからだ。


 大人になった今となっては、彼女の顔を思い出すことはできないが、あの日感じた激情だけは今も忘れることができない。私はきっとあのシャボン玉のように華麗ではかない時間を死ぬまで忘れることは無いだろう。

10年後に絶対に黒歴史になるからいずれ消えます。映画は何もパクったつもりはないです。なんかこれあの映画まんまじゃねって思ったら感想とかに書いてください。別になんもしません。

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