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家庭の変化と心の闇
日々が過ぎ、武之の家庭環境はさらに厳しくなっていった。父の真は以前のように朝早く家を出て行くことがなく、毎日何かを考えるようにリビングで静かに過ごしていた。母のめぐみは忙しさを増し、家を留守にする時間が長くなる。武之は、家に帰るといつも両親の姿がない寂しさを感じていた。
学校では、武之の立場も変わり始める。いじめの対象となり、かつての友人たちも彼を避けるようになる。武之は自分の置かれた状況を理解しようとするが、心の中に積もる孤独感と理不尽さを拭い去ることができなかった。
ある日の晩、家族での食事の席で、武之は父の真に質問を投げかける。
「パパ、どうして最近、いつも家にいるの?」
その問いに、真は一瞬言葉を失う。めぐみも黙ってうつむき、重苦しい沈黙が部屋を包む。ついに、真はゆっくりと口を開き、静かに告げる。
「ごめん、武之。父さん、会社を辞めたんだ。」
武之はその言葉の意味をすぐには理解できなかった。しかし、父の表情と母の悲しげな目から、何か大きな問題が起こっていることを感じ取った。武之の心には、不安と混乱が渦巻く。