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ダンジョン・ブレイカー  作者: さわZ
1/10

プロローグ 新人類さん「こいつは何を言っているんだ?」

西暦 2XXX年


地球のあちこちで幻想的な動物。ゴブリンやオーク。巨大な狼や鳥。なんでも溶かすスライム。といったファンタジーなモンスター達が現れた。

初めは大陸の人気のない所でUMA(未確認動物)かと騒がれたが、一年もしないうちにモンスターの発見と確認。そして、被害はあちこちで発生。

各国は事態を重く見て、軍を派遣。事態の収拾に動き、原因を突き止めた。

その一つ。あたり一帯が砂漠だというのに見たことが無い鉱物で出来た洞穴。風化はしているが舗装された道路の真ん中。とある廃れた観光名所のはずれ。明らかに不自然に発生した、自然的な巨大な洞窟。ぎりぎり戦車が通れるくらいの洞窟。

そこから多種多様のモンスターが這い出てきている。それらのモンスターは明らかに種類が違うというのにいがみ合うことなく地上へ出てくると同時に近隣の人間や家畜を襲っていた。

とある大国がモンスターを一掃し、謎の洞窟をろくに調べずに爆破し、その穴を塞ごうとした。だが、どんな爆薬を用いてもその洞窟は崩れることはなかった。

とある大国が、爆破はせずにモンスターを生み出し続ける洞窟の内部へ進行するとそこは異世界だった。そうとしか言い表せない程に内部は広大だった。物理法則など超越し、深さも高さも空間を広げたとしか思えない洞穴が続いていた。

その内部も少量に発光しているのか、日の届かない場所だというのに百メートル先まで見える不思議な空間。そして、その床や壁、天井から漏水のようにこぼれ出る何かがあった。

それは漏れ出ている間に人の形を取り、最後はゴブリンやオークに。獣の形を取り巨大な人喰い狼や猿に。巨大な甲虫に。不定形なスライムに変化して軍に襲い掛かってきた。

それらを何とか撃退しながら洞窟の奥へ進んだ軍。その途中で、時折落ちている明らかに人工物の小瓶や剣。防具が落ちており、それらを回収。そして、モンスターの死骸をしながらも行進を続けた。

下へ下へと、まるで地獄にいざなうかのような悪路を踏破してきた。下るたびに遭遇するモンスターは凶悪なものが出現した。だが、不屈の精神で踏破した彼等は最奥で不気味に。もしくは神秘的に光る巨大な球を見つけた。

 その光は心臓の鼓動のように光を発しているかと思えば、その球の中から一匹の生物が現れた。高さ3メートル。全長は十メートル。頭だけでも二メートルはある。イグアナに似た。だが、イグアナにしては大きすぎる。その上、その口からはチロチロと火を噴いていた。


 後にドラゴンと呼ばれる。生物が調査団と軍に向かって襲い掛かってきた。


 その巨大に見合った膂力。その口から吐き出された炎に調査団と軍は苦しめられたが、あくまでも相手は生物。軍が持ち込んだ重火器の殆どをつぎ込んでどうにか倒すことが出来た。軍は半壊という被害を出した。

 それを見計らったように巨大な球は光始めた。その光からまたあのドラゴンを思わせる影が見えた。それをみた一人の兵が今日のあまり、バズーカを使い、光る巨大な球を破壊した。光る球はまるでガラス玉のように砕け散る。ドラゴンが出てくる気配はない。

 危機が去ったのだと彼等は安堵した瞬間。どんな工作をしようとも壊れる事のなかった洞窟全体が大きく地響きを起こした。こんな大変な時に地震。下手したら脱出前に生き埋めとなる。それどころか、これまでの悪路やモンスター相手に半壊した自分達では帰還できないと絶望の中。地響きで誰もが立っていられない程の鳴動で思わず目を閉じてしまった彼等が次に見た光景は、突入する洞窟の前。つまり、地上だった。


 これが人類初めての転移になる。


 神の奇跡か、悪戯か。とにかく脱出することが出来た彼等は歓喜に沸いた。と、同時に壊れる事のなかった洞窟が音を立てて崩れ落ちると、まるで水のように地面に溶けて消失。まるでそこには何もなかったかのように消えた。

 だが、それらは確かにあったのだと。…自分達の被害が物語っていた。

 半死半生の軍が持ち帰れたのは洞窟の中で拾ってきた人工物と回収したモンスターの死骸。あの光る球の残骸。そして、今にも死にそうになっている仲間達。

 洞窟前では軍も関与していたため、医療スタッフや機器はそろっていたが、間に合わないとわかるほどに重傷だった。無事だった兵は負傷した仲間を輸送するが間に合わない。助からない。奇跡が起こらない限り助からない。それでも願わずにはいられなかった。奇跡を。

 その想いからだろうか。奇跡は起こった。

 帰還した兵士の一人の周りが。いや、あの光る球の残骸が強く輝く。その光は石を持っているかのように吹き荒れ、その行く先は負傷した兵を包み込んだ。すると、負傷した兵の傷はみるみる塞がり、意識を失っていたはずの兵も目をかっと開き、上半身を起こせるほどに回復した。残念ながら命を落とした兵だけは目を覚まさなかったが、その奇跡で仲間が助かった。

 その異常事態に次ぐ異常事態だが。彼等の生還に誰も歓喜した。

 そして、調査から一ヶ月後。更なる異常事態が起こる。

 歩兵といったモンスターを倒した兵士たちの身体能力が明らかに上昇した。常に鍛えている軍人だからでは説明できない程の身体能力を。そして、衛生兵を務めていた兵の一人の手が鈍く光り、その光を負傷した肉体に当てるとその傷が塞がった。


 それが地球初の魔法となる。


 洞窟をダンジョンと呼称。

 ダンジョンから発生した生物をモンスター。その中で生成される石。大小様々形があるが、のちの研究で様々なエネルギーに変換できる万能資源。魔石と呼称。

 ダンジョンから生まれたモンスターを倒したことにより身体能力が上がる現象をレベルアップと呼称。

 あの光の玉を。願望器。ダンジョンコアと呼ばれることになる。


 それから約三百年後。黎明歴178年。

 人類はこれまでに発生し続けているダンジョンを知恵と勇気で踏破。

 エネルギー問題はダンジョンから発生する魔石とダンジョンコアで解決。人類は更なる発展をした。食糧問題もモンスターの肉が食べられると判明し、解決。そんな中で、中にはダンジョンの利権をめぐって戦争なども起きたが、今では全世界、全人類で対応する事で決着なる。

 ダンジョンの解決は、軍から民間。個人で解決する事になる。

その中で民間。個人でダンジョンを攻略し続ける人達の事を、ギルド。冒険者と呼ばれるようになる。




 そんなギルド。荒くれ者とは真逆の印象を持つ市役所じみたギルドに一人の男がダンジョンでの戦利品を換金の手続きを行っていた。

 現代では珍しい短く切りそろえられた黒髪、鋭すぎる目つきの黒目。世界男性よりも少し低い身長と低い鼻。

初めてダンジョン踏破した国の人間。ニホンジン。

その特徴を持った男は全身から鉄と油の匂いを振りまきながら、戦利品の魔物の毛皮や牙。抉り出した魔石を買い取り受付の台に置いた。


「換金を頼む」


二十歳前後と思われる男。基本的に日本人は優しく礼儀正しいと評価されがちだが、彼の目つきがそれを否定するように力強く、周囲に畏怖を蔓延させていた。男がここに来所してから比較的に穏やかだったギルドに緊張が走る。男には強者のオーラのようなものがまとわりついていた。それこそ一般人にも変わるくらいの「なんかやべー奴」なオーラが。

彼がこのギルドに来たのは現在、この国で発生しているダンジョンの最寄りギルドがここだったという事だからだが、彼がここにきて約二週間。三日に一度のペースで換金を行っているが、その度にこの雰囲気になることを周囲の人達は嫌がっていた。


「は、はい。では査定を行いますのでこちらのナンバーチケットをもってお待ちください」


 この道、二十年の受付ベテランおじさんは緊張した面持ちで、彼にナンバーチケットを渡す。彼も荒くれ者。それこそマフィアといった裏社会の人間にも真摯に対応してきたが、目の前の男は違う。まるでこの世全てを恨んでいますと言わんばかりの目つきの悪さと雰囲気。下手な真似をすれば彼の腰につけている魔物の解体用ナイフで斬りつけられるのではないかと思う。現に初めて彼がここに訪れ、換金受付をした新人の受付嬢はあまりの怖さに彼に泣きついて交代を願う程だった。

 そして、目の前の男はその態度にイラついたのか、狼型のモンスター。レッドウルフの牙を受け付けの机に突き立てながら、「時間を取らせるな」と静かに言った。

 もちろん、そうなれば罪になるし、犯罪だ。現代法律や倫理までファンタジーではない。ちゃんと道徳もある。

 しかし、目の前の男は冒険者。明日、命が消えるかもしれない荒事を生業にしている人間だ。短気な性格かもしれない。冒険者の性格も多種多様だが、彼に至っては特に気性が荒いかもしれない。

 一度、彼の行動を見かねて世界で格付けされている上位ランクの冒険者が彼の行動を注意した。その冒険者は男よりもワンランク上の冒険者、オリバー・ギムレット。チーム、ホワイトローズの一人であり、モデル業も兼業するほどの美丈夫。この国では最上位とも言ってもいい百人越えの冒険者チームの一人であり、一小隊の隊長も務めることが出来る人格者だった。

 だが、そんな忠告も男は「関係無いだろう」と無愛想にオリバーに返した。それが気に入らなかったのか、オリバーは腰に掛けていたレイピアに手を。それを見た男もファイティングポーズを取る。一触即発の状態だったのだが、受付ベテランおじさんが、どんぶり勘定で査定して彼の電子銀行に入金をしたことを伝え、その場を収めた。

あのまま、一般人の枠を超えた冒険者がぶつかればどうなっていたかわからない。もしかしたら死人が出ていたかもしれない。そんな状況で場を収めたおじさんを称賛ものだった。だが、その三日後。男は再び換金にやって来た。その時、ダンジョンでの戦利品の一つを「迷惑料だ」と言って、握りこぶしほどの大きさの銀の塊をおじさんに押し付けて、帰っていった。意外と常識はある?と、思ったが、あの言動はどうにかならないだろうか。

 その直後、オリバーを含めたホワイトローズのチームがいくつもの戦利品を持ってやって来たが、彼等の表情は暗かった。

 何でも彼等の自信はあの男に砕かれたとのこと。

 ダンジョン攻略中に現れたキラービーという大きさ二メートルの巨大な蜂型モンスターとそれを率いる五メートルはあるクイーンビー。そんな集団に彼のチームメンバー数名が襲われた。その中にはオリバーもいた。

 突然の奇襲に彼等は負傷する。奴らの毒針は出血毒から麻痺毒の激痛。幻覚まで見る多種多様の毒を持っている。それに苦しめられているオリバー達を救ったのがニホンジンの男だった。

 彼の戦闘スタイルは手に持った光を吸い込むほど黒いナイフでモンスターを刺し殺す。それだけだった。モンスターは少なくても十数匹。しかも蜂型モンスターという事もあって、俊敏。不意打ちならまだしも正面からナイフ一本で立ち向かうのは無理だと誰もが思った。

 しかし、キラービーとクイーンビーは男に屠られた。中には胴体にナイフを突き立てて倒したものもあるが、殆どが首と跳ね飛ばすというまるで、一種の芸術のような一撃でモンスターを倒していった。

 それ以上に驚いたのは男の惨状だった。彼の迷彩服のあちこちにキラービーやクイーンビーの巨大な針が突き刺さっていた。刃渡り10センチはある蜂を体中に刺さっていた。急所を外してはいるが、これだけの量を刺されたら普通の人間なら毒で死んでいる。いや、その前に激痛でショック死だ。

 だが、男は回復の効果があるポーションを飲みながら針を抜いていく。その度に肉が抉れる音が聞こえたが、彼は大きな汗を流しながらも苦悶を上げることなく淡々とこなしていく。そして、対処が終わると「これはもらっていく。文句はないな」クイーンビーの死骸を担いで彼等の元を去って行った。確かに、この日、男はクイーンビーの死骸を持ってきた。

 換金の際は虚言が無いようにある程度の手続きを行うが、男に嘘はなかった。それはオリバーも同じ。男が自分達より下のランクだから無意識に見下していたが、その男に自分達は助けられたことにショックを受けていた。

 それは受付ベテランおじさんも同様だった。そのため、彼等は法に触れない程度に男について調べた。


 男の名前は、タカヒト・コガ。

 個人で冒険者をやっている日本人。


 冒険者ランクDと、中堅寄りのランクだが本人の戦闘能力はB相当の評価を受けており、ランクDに甘んじているのは本人の協調性の無さ。そのため、いくつものチームが協力してダンジョン攻略する任務。レイドをこなせないという点である。

 だが、それでもランクBの戦闘力を間近で見たオリバーはその力量差にショックを受けていた。なにより、あれだけの毒を受けても戦闘続行をしたのはおそらく、毒の抗体を得るための苦痛な訓練をこなしてきた。そして、痛みに耐える訓練もしてきたのだろう。そう納得せざるを得ない。

 このままではオリバーを含めた有力な冒険者が、冒険者を止めるかもしれない。受付ベテランおじさんがそう思って、声を掛けようとした。が、その必要はなかった。


 「…ふ。ふふふ。タキャヒィト・コーガ。コーガと呼ばせてもらおう。俺はお前に勝つ。今は無理でも必ずお前を追い越すっ」


 オリバーの人生は殆ど挫折などなかった。そう思ったことが無かった。

 だが、この日初めて挫折した。だが、そこで腐らなかった。あの動き、おそらくニホンのニンジャという職業の動きだろう。ニンジャはエリートスパイ。つまりは斥候職。正面から戦う事を是としてはいない。なのに、タカヒトは自分達を正面から救って見せた。

 ならば、自分に出来ないはずがない。いかなる訓練も乗り越えて必ずタカヒトを超える。そのためにも現在ランクCからランクBに昇格する。そして、ランクAになり、奴のピンチを救う。タカヒトがやったように今度は自分が背中を見せつけるのだ。


 「今日は反省会だ、皆。だが、我々はいつか必ずあいつを超えるぞ!」


 力強い叱咤。それを自分含めたチームに伝えたオリバー。彼等は一年後。その言葉通りランクBに上り詰め、更に数年後にはこの国有数のランクAの冒険者チームになる。




 そんな彼等の目標になったタカヒトはマンスリー契約しているそこそこお高いマンションに戻っていた。そして、部屋の鍵をかけて誰もいない玄関で蹲った


 「ぐぅううううっ、あの腐れモンスターが!」


 それは痛みを誰にも見せず一人になった事でもれだした弱音に見えるが、彼の心情は違った。


 いってぇっ!いってぇ!いってぇわ!!医者が診るよりいってぇわ!!よく平気な顔しているねじゃねえんだわ!顔に出ないだけなんだわ!というか出せないんですわよ!あまりにも痛すぎて、口から棘付きこん棒を生やすくらい悲鳴を上げたいわ!三分の一どころか3%も表に出ないだけだよ!こんちくしょうがぁあああっ!!ああ、赤ちゃん待遇で癒してほしい!甘々に甘やかしてくれるお姉ちゃんに虫歯になるまであまやかされてぇええええっ!おんぎゃああああああっ!痛みがぶり返してきたぁあああ!鎮痛剤ぃいいいいっ!全然効かない。もっと飲まなきゃ。これは本当に痛み止めなのかえ?


 状況と心情を同時視聴していたらお前誰だよ?字幕間違えてんぞ。と思われてもおかしくないほどタカヒトは苦しんでいた。

 彼は呪われている。その彼は呪いを【ツンコミュ】と呼んでいる。その言動が本人の意図としている言動がある程度逆に変化してしまう。


 例を挙げるならとフレンチな料理を食べるとしよう。

 すると、マナーは一通り出来る。しかし、その表情と態度が悪い。マナーは悪くはないのだが雰囲気が悪い。タカヒト的には満足だし、気分もいい。しかし、この呪いのせいで場の雰囲気を悪くする。

 しかも、「美味しかったです。また食べ来ますね」と、感想と感謝を伝えようとすると、口が勝手に「今度来る時までにこれ以上料理の腕を落とさない事だな」と変換されてしまう。言い方にもいろいろあるんだろうが、その中でもギリギリ感謝しているのだろうな?と、思わせるような変換になってしまう。


 この国の受付嬢に「時間を取らせるな」の真意は、「自分のために時間をとらせるな(謝罪)なんて申し訳ない(※省略)」。

 「関係ない」は「相手に自分の都合に合わせるのは(※省略)関係ないな。ほんとうにすまない(※省略)」。

 怒ったオリバー対してファイティングポーズは。まあまあ落ち着いて。それ怖いから引っ込めましょう。を過剰な反応で返しただけ。

 「迷惑料だ」は「本当に迷惑かけてすいませんでしたぁあああ!これ賄賂です!これで勘弁してください!」。

 キラービーの攻撃を受けてなお攻め続けていた時の心情は、「痛いし!きもいし!三回に一回しか攻撃当たらねえ!最上級の【呪い】っていうバッドステータスのお陰で【毒】とか【麻痺】はしなくても痛いもんは痛いんだよ!あー、逃げたい。超逃げたいわ。そこんとこどうなんですか俺の体?駄目ですか、そうですか」と、九割がた体の主導権を【呪い】に奪われたため強制バトル。

 クイーンビーの死骸を持っていく時は「俺も頑張ったんで、これ、貰っていいですかね?(相手は無反応なので)貰っていきます。あざーっす!」等。


 やることなす事、全て強がり、言葉足らずで反応している。

 幸いにもタカヒトは善寄りの人間であり、【ツンコミュ】による行動変換も幸いなことに悪行には繋がってはいない。

 だからと言っても限度はある。この【呪い】を解除するためにタカヒトは実に十年近く世界中を聖地巡礼ガチ。教会や神社へ出向いて【呪い】の解除を願い出ているが、この【呪い】のせいで一手間コミュケーションが大変な上に、あまりにも強力なのか神主や神父。聖職者といった神道系の冒険者にも解除が出来ない。というか、知り合いの聖職者に頼んで週に二、三回。【呪い】に効果的な聖水。別名ホーリーボトル(高額)というありがたいファンタジーなお薬を使用して、ようやく日常会話。デレのないツンデレ会話が出来るようになる。それでもマシになっているのだ。だが、根本的な治療方法は出来ない。それこそ、奇跡が起こらない限り。

 そう、奇跡を起こす願望器。ダンジョンコア。

 それを手に入れる為にタカヒトは世界中のダンジョンに挑んでは、聖地巡礼を行っている。すべてはこの【呪い】を解くために。

 そんなタカヒトの携帯端末に今、挑んでいるダンジョンが別のチームに攻略されたというメッセージが送られた。ダンジョンコアは踏破した者に与えられる。それは大体本人かその組織が使い、巨万の富か更なる力を得る為に使われる。中には莫大な報酬と引き換えに有力者や国に寄贈する事もある。

 ダンジョンコアは勿論、超がつくほど高額。タカヒトにはまだ手が出せない。というか一生かかっても無理な額だ。そうなれば残る手段は自力で入手するしかない。出来ればとあるチームに加盟したり、援助を求めたいところだが、タカヒトの想いに悪い方で応える【呪い】のせいで、泣き言は言えず、不遜な態度を取る。そのため、今までチームプレイという物をしたことが無い彼は大きく息を吐いて、次のダンジョン情報をチェックする。


 「次は…。ちょうどいい。ダンジョンに行くついでに薬も取ってくるか」

 次は…。わーい。フランスだぁ。エリーちゃんのところに行って癒されながら薬もらってこよーっ。あの子は聖女。というか俺にっとは天使だし。甘やかしてもらうんだー。


 体は大人。心は子ども(幼児退行)。その名は冒険者タカヒト。

 二十一歳の成人男性は十六歳のシスターに甘えに行くことを決意する。


作者がまともな主人公を書くわけないだろ!

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