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第6話:人形の相違

「何、何なの?」

男達の表情の意味がわからない彼女は怯えるように身体を身悶えさせた。自分がヴァージンだと知れたとたんに緩んだ彼らの目元の真意がさっぱりわからない。

「こいつぁ思った以上に上物だ。絶対にあいつぁ近づけさせんな」

リーダーの男に両脇を抱えていた男達は改めて、気持ちを引き締める。

もしかしたら、いつもの商品の倍以上の価値で売れるかもしれない。そうすれば、2~3年、村は安泰でいるほどの収益がでる。その間に幾人かの子供でも養えれば、新たな戦力や更なる繁殖、そして商品として新たに村を支えてくれる子供が生まれる可能性だってある。

喜びを隠せない彼らの様子は和姫の不安を倍増させるのに十分だった。

「わ、わ……私、どうなるの?」

恐怖で歯の根が合わず、声が震えた。

男はそんな彼女の様子に、「何を今更」とばかりに肩を竦めて見せた。

「あんたは人形師ん所連れてく。そこで『生人形』の材料として買うて貰うつもりだ」

彼の答は、和姫の恐怖を募らせる。がくがくと震える身体を彼女はどうすることもできずにいた。

「……私も『襲撃者かれら』みたいな者に変えられるの?」

ドールという言葉から思い浮かんだのは自分の両親を殺した襲撃者達の姿。笑いながらも目は感情を浮かべず、どこか芝居がかった様相の化け物たち。

自分の両親を殺した者と同じ『存在もの』に変えられる事は彼女に嫌悪感を倍増させた。

「あぁ?彼らって、お前ぇ、『生人形ドール』見たことあんのか?」

「た……たぶん」

通常、生人形は上級階級の居住区しかいない。時々、中級階級に遣いとして出されることもあるが、下級階級まで降りてくることはない。

それを見たことがあるとなれば中級階級以上の人間が何かの事故でここにいる可能性も出てくる。中級階級ならまだいいが、上級階級の人間となると人形師に売れない可能性もある。

その場合、保護したことによる謝礼金だけの受け取りとなるが、そうなってくると値切られる要点が複数ある。特に先ほど、彼女を手篭めにしようとした男の話をされたら、報奨金を貰えるどころか村全体を一気に焼き尽くされる危険性さえでてきた。

男は内心諦めの溜息をつきつつ、和姫に質問を投げかける。

「どこで見かけたんだ?」

「私の家よ。そいつらに襲撃されたの」

先ほどまで怯えていた少女の内側から怒りのオーラが湧き上がってくるようだった。

それにしても『襲撃される』とはどういうことだろう。生人形を所持している者たちが大事なそれらを襲撃に使うことなどありえないはずだ。

そこで、彼ははたと気が付いた。

(もしかすっとぉ……)

無言で考え込むリーダー格の男に和姫だけではなく、彼女を捕まえている男達も不思議そうに首をかしげている。

「どういう輩だった?」

(?)

彼女は唐突な質問に驚きを隠しきれず、きょとんとした。

それから唐突に彼が何で考え込んでいたのか気づく。もしかしたら自分が知っている『人形みたいな人間達』と彼らの言う『生人形』は別物なのかもしれない。

「えっと……気持ち悪い笑みをずっと浮かべていて、感情のない姿の人間だったわ」

口元は全て笑っていたけど、その瞳は何の感情も映さないまるでよどんだガラス球みたいだった。

思い出すだけで気色悪くなるその整いすぎた容貌に、彼女は小さく身震いをした。

「指はどうなっとうた?」

「指?」

和姫は記憶の糸を辿る。

自分に伸ばされた手・手・手。

形だけで見れば綺麗なそれらは、まるで映画で見た吸血鬼の腕のように冷たさを感じた。

「白くて綺麗だったけど……どこか生命を感じなかったわ」

「ああ、そりゃ、違ぇわ」

和姫の言葉にリーダー格の男はほぅっと胸を撫で下ろした。

はっきり言って、今回と次回は説明の回です。

彼らの中では『生人形』の原料となる人間というのはふこうではありません。

魂は分離して人形に入れられ、仕事をすることになりますが肉体はきちんと培養液に入れられ保管されますし、何よりも『年季』があければ自分の身体に戻って普通に生活を送ることができるからです。もちろん奉公中・年季あけでも、最下層にいるよりも裕福な暮らしができます。

つまり綺麗に生まれてくれれば、子供も村も安泰になる。ゆえに子供は村にとり宝となり、食料は優先的に与えられる。さらに容姿が美しいの部類に入れば、他の子供からも隔離されて、村長格とおなじ教育まで受けさせて貰えます。

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