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第4話:悪夢の続き

ドォォォン………

ドォォン………


耳慣れないかすかな音が、和姫の意識を浮上させる。

何の音だろう。震動を伴うそれは、彼女を不快にさせる。

最近は現れないマフラーを弄ったバイクのそれとも違う。どちらかといえば花火が遠くで爆ぜているといった感じだろうか。

「う……ううぅ……」

身体全体が不自然に軋む。

目も開けないままで、付いた右掌に土のような感触があった。

そういえば、空気も土埃の臭いがしている。あと、何かが燻ぶる様な焦げ臭さと、血なまぐさい臭いが彼女を更に不快にさせた。

(そうだ………)

自分はとても『厭な夢』を見ていた。

こんな所に寝ているからあんな悪夢を見たのだ。両親が惨殺され、ビスクドールのような不気味な人間達が自分を捕まえようと無数の手を伸ばしてきた。

(あんな不気味な夢を見るなんて……)

一人胸でごちて、彼女はゆっくりと目を開けた。

寝起きすぐのせいか視界がぼやける。それでもここが外だというのはわかる。

どうして自分はこんな所に寝ているのだろう。女子高生がそこら辺で寝てても大丈夫なほど、自分の『日本くに』の治安がよくないことなどわかっているのに。

それにしても大地の感触があるということはここは公園か何かだろうか。それとも何処かの片田舎かもしれない。少なくとも彼女が知る『道路アスファルト』とは違っている。

彼女は動ききらない頭で考え、そして辺りを見回してみた。

「ここ………どこ……?」

自分の見知らぬ場所だ。それに明らかに日本ですらない。

どこかの町の中だと思われるが、そこらましじゅうに戦闘と思われる痕跡が残っている。辺りに残っているのは人間の肉片だろうか。それが先ほどまで、自分を不快にさせている『血生臭く焦げ臭い物体もの』の正体だろうか。

「あ……あ……っっ!!」

それらの光景が先ほどまで自分が見ていた悪夢を思い出させる。

違う、あれは、悪夢ゆめなどではない。目の前で起きた現実だ。

四肢が捥がれた両親の死体も、机の上に並べられたその頭部も、そしてそれを行った不気味な人間たちの姿も。

そして何より、その不気味な人間を自分は訳のわからない力で消した。

そこまで彼女は思い出した。しかしその直後の事が思い出せない。

誰か、知らない声が自分に呼びかけていたような気がした。

それから………それから?

彼女は頭を抱えながら身を起こすと、そのまま震えながら自らの身を丸めた。ハリネズミが外敵から自分を守るように小さく小さく蹲る。

こうしていれば、いつかこの悪夢は覚めて、また違う目覚めを齎してくれるかもしれない。

甘い期待を胸に和姫は一切の外界からの感覚を遮断しようとした。

幾許いくばくかの時間が過ぎただろう。不意にうずくまる彼女の腕が掴み上げられた。

体制を崩したまま尻餅をつくと、薄汚くまるで物乞いのようなぼろぼろの恰好をした男たちの姿が目に入った。彼らは露わになった彼女の顔に歓喜の声をあげる。

「これは、高く売れそうな『商品おんな』じゃ」

「人形師に持ってけば、いっぱい金もらえっぞ」

乾いた声がげらげら笑いながら彼女を値踏みする。

「わし等とは違う綺麗な髪じゃ」

「肌も潤っとる。値引きされんぞ」

後ろからかけられた声に和姫が振り返ると、やつれて性別も判らなくなった女性が羨ましそうに和姫の髪に手を伸ばしていた。

怯えて身を捩ると、涎を垂らした男がにへにへと笑いながら和姫の方を掴んだ。

「味見。しちゃけねぇのけぇ」

その言葉どおりに、肩を掴む男の股間は不気味に大きく膨れ上がっている。

「バカ言うな。お前ぇのそんなもん突っ込んだら価値なくなっちまう」

この一団のリーダーと思しき細身の男がものすごい勢いで、和姫の身体を自分の方へと引き寄せる。愚鈍なのか、先ほどまで肩を掴んでいた男は口惜しそうにゆっくりとした動きで地団駄を踏んだ。

和姫、第一の異世界に入りました。ここは乾いた世界です。

彼女がいるの『世界』の中でも最下層にあたる部分。第3話の操人形達は異世界への転送に失敗した模様です。

とりあえず、この話ではあまりにも即物的なえっちぃ部分は加えないようにするつもりですが、寸前ぐらいまで行くのは多めに見てください。

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