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「弔辞〜胸に色鮮やかな花束を」

今更「おばあちゃん」なんて

照れ臭いよね

お互いに

私が生まれた日

あなたはまだ若かったから

「おばあちゃん」だなんて

呼ばれたくなかったんだよね

だからあなたは「オオママ」

「大きい」「ママ」だから「オオママ」

それはあなただけ

私がそう呼ぶのはあなただけ

これからも


あの家に行くと

いつも同じ歩幅で

同じ笑顔で

「よく来たね」って

「元気そうね」って

出迎えてくれた

それが当たり前で

いつもそこにある気でいたの

「私が死んだら

弔辞を読んでね」

あの日

真剣な顔をしたあなたからのお願いを

鼻で笑って

嫌だよ っていったけど

あなたがいなくなるなんて

思っていなかったから


オオママはいつも優しかった

優しかったから

いつもそれに甘えていたのよ

心配かけて

迷惑かけて

いつもつまらなそうな顔をして

困らせて来た


そんな私も

いつの間にか大人になって

あなたはどんどん

年を取っていったのに

「今日はもう疲れたから」とか

「仕事で忙しい」とか

自分に都合の良い理由をつけて

会いに行く足も遠のいた

ごめんね、ごめん

こんなに近くにいたのに

ごめんね、ごめん

ひどい孫でごめん

優しくなくてごめん


人はみんな流れに乗って

時の箱舟に乗って

人生と言う名の川を

ゆっくりゆっくり下っていく

川岸に

「思い出」と言う花を咲かせ

人生に彩りを添えていく

オオママと一緒に咲かせた花は

今もこの胸に

咲き誇っています

あなたが教えてくれた

大切な事

あなたの言葉

声や仕草を忘れない様に

ずっと忘れない様に

思い出の花を

いつも胸の花瓶に挿して

生きていこう

進む事しかできない私は

戻る事のできない道を

色鮮やかに

歩いて行こう


あなたの孫に生まれた事を

誇りに思います

私はこんなにも

おばあちゃん子だったのね

今はまだ

炭酸の抜けた

コーラみたいな私だけど

大丈夫

もう心配しないで

別れを涙で飾るのは

あなたに似合わないから

私の中に咲く

ありったけの「ありがとう」の花を

旅立つあなたに

届けておきます


【第37号掲載】

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