「きっと大丈夫」
何故苦しむのですか
何故悲しむのですか
生きて行く事は
辛い事ですか
それでも
生まれてきた事は
傷付く為ではないはずだから
きっと大丈夫
雨の日ばかりが続かない様に
辛い事ばかりは
続かないから
母が時間を止めた時
電話の向こう側で
彼は「何で」と
繰り返すだけだった
あれから
彼は毎日をただ
ぼんやりと過ごしている
昭和生まれの
仕事人間だった父は
家事の一切ができない
昭和の女が遺されても
生活感が変わる訳じゃないが
昭和の男は
生活感がガラッと変わるから
心労がかさむんだって
誰かが言ってたけど
ああ、これが
生活力がないと言う事か
母が事あるごとに
父に頼んでもやってくれないから
動かすのは大変だ と
言っていたのが
今はよく分かる
毎日
実家と家を往復して
家事をこなす
今を生きるのが
精一杯な私にとって
かけがえのないものは
いくらでもあるから
感傷に浸っている暇はない
後ろ向きで泣いてばかりでは
母に怒られてしまう
私はいつの間に
こんなに逞しくなったのか、と
時々笑ってしまう
そんな私を他所に
彼は毎日を
ぼんやりと過ごしている
私は母の代わりに
家事をやる事はできても
母の代わりに
あなたの心の穴を
埋める事はできない
でも今はまだ
それで良い
いつの日か闇を抜け
輝かしい朝日に
目覚める事ができる人だから
きっと大丈夫
私をこんなにも逞しく
育ててくれたあなただもの
きっと大丈夫
あなたは一人じゃないから
きっと大丈夫
雨の日ばかりが続かない様に
辛い事ばかりは
続かないから
「生きる事」
そのささやかな願いが
あなたの夜明けを
導きます様に
2025年 45号 特別寄稿




