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「七週間」

当たり前だった事が

当たり前ではなくなったあの日

渦巻く感情の正体を

突き止める余裕なんてなく

ただ呆然と空を仰ぐと

そこにはまだ

蕾にもならない桜の木が

静かに眠っていた


「この頃桜の花が咲くと

来年の桜は見られるかしらと

思う時があるのよ」

と、母は言う

いくら何でも

来年の桜は見られるよ

あなたが

せっかちなのは知ってるけど

そんなに

生き急ぐ事はないのよ

と、私は笑う

頼んだ事は

すぐにやって欲しい

欲しくなったら

今すぐ欲しい

そんなあなただから

別れも突然

遺言を口頭で、なんて

ドラマでしか見た事なかったわよ

こんな時まで

せっかちを発揮しなくても

良かったじゃない

下を向いたら

涙まで私から離れていくから

ただ呆然と空を仰ぐ


私は今まで

どうやって生きて来たんだっけ

あなたの笑い声

歩く仕草 喋り口調

不意に目に付く

メールのやり取り

いつでも何かを探してしまう

見つけ出しても

微笑みながら消えていく

当たり前だった日々の残像

繰り返す淋しさは

この心の脆い所へ


あれから七週間

いつの間にか咲き誇る

桜にさえ気付かずに

ああ、そっか

こうやって日々は

流れていくんだった

こんな私の姿を見たら

あなたは怒るでしょうね

きっと

せっかちなあなただから

いつまで泣いてるの

しっかりしなさいって

それなら

生きていかなくちゃ

あなたの時間は止まっても

生きていかなくては

そう、私には

残された時間が

まだまだあるのだから


そろそろ

覚悟しないとね

あなたのいない日々を

生きる覚悟

いつだって

泣けばどうにかなる訳でもないし

今を生きるのが

精一杯な私にとって

泣いてばかりでは

いられないから

あなたにも

見えていますか

今年も桜はまた咲き誇り

淋しくその花びらを

撒き散らしていきます

春なのに

もう春だから

荒れ狂う桜の花びらに紛れて

歌にも似た言葉が空に響けば

あなたは遠い旅に出る

南無阿弥陀仏に運ばれて

2025年 第45号 特別寄稿

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