「女の幸せ」
女には三つ幸せがあるのよ
たから細くて長いタバコを吸うの
昔 隣に住んでた綺麗なお姉さんが
私に言った言葉を
ふと 思い出した
呼び出されたカフェで
友人のマシンガントークを
ただ聞いている
彼女が泣き出すと
とんでもないことを言い出しそうなので
彼女の気が済むまで
「うんうん」と相槌を打ちながら
ただ聞いている
細くて長いタバコに火をつけると
「ねぇ聞いてる?」と言う彼女の問いに
聞いてるよ と答える
女っていうのは
ただ聞いて欲しいだけで
誰かに話す時にはもう
答えは出てる
「夫は私を子供の母親としか見ていない」
だから他の男に走った訳ね
やってくれるね
優しい旦那様と可愛い子供との
平穏な生活を壊してまで
それ以上
何を望むと言うのだろう
子供に恵まれなくても
夫と静かに暮らしている私には
彼女の葛藤は到底理解出来ない
「女として愛されたい」と
ついに彼女は泣き出した
ああ そうか、なるほどね
女には
「女として愛される幸せ」
「妻としての幸せ」
「母親としての幸せ」がある
私は
母親としての幸せを知らないけれど
決して「不幸」だとは思わない
夫に愛されて
妻として愛に応える生活が
私はとても気に入っている
たからこれ以上何も望まないし
不幸だとも思わないけど
「女として愛されたい」彼女の幸せは
きっとそこにあるのね
女は
細くて長いタバコを吸いなさい
指先が綺麗に見えるように
男に見られていない時程
女である誇りを持つのよ
女には三つ幸せがあるけど
欲張るんじゃなくて
謙虚にね
幸せは「なる」ものではなくて
「幸せだ」と
思える心を手に入れる事
ないものねだりは
心を惑わすだけよ
昔 隣に住んでた
綺麗なお姉さんの言葉を
今ちょっと理解した
「幸せになりたい」と泣く彼女を見て
それはさて置き
こちらを見て
ヒソヒソと話すおば様達の視線は痛いし
彼女の涙を止める方法を
探しあぐねていると
「あなたは良いわね。
家庭に入って女捨ててるんだもん」
とまで言われる始末
捨てたつもりは毛頭ないけど
そうかもね と相槌を打つ
女って言うのは
ただ聞いて欲しいだけ
手に入らない欲求は不満となり
不満が募ると不幸だと感じる
そうね私は
彼女より幸せかも知れない
私が泣かせたわけではないけれど
机に突っ伏して泣いている彼女を前に
どうしていいか分からずに
途方に暮れてはいるけどね
【第40号 投稿 入選】




