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「小さな幸せ」

ゴミ袋を片手に

歩くあなたの後ろ姿を

ベランダから見送る

あなたは隣の奥さんに

軽く会釈して

足早に去る

洗濯物に紛れて

私はそんな

ありふれた朝の光景を

ぼんやりと眺めてる


古い友人たちの話は

いつも決まって夫の愚痴

私は「うんうん」と

相槌を打ちながら

ゴミ捨てをする夫だと

言い出せずにいる

女は他人の幸せに

興味を持たない事を

私は知っている

話題が変わると今度は

子育ての話

あなたの所はどうなの?と

聞かれると困るので

目立たない様に

コーヒーをすする

女は他人より

一つでも多く経験していると

賢者の様に語りだすのを

私は知っている


別に

多くを望んだわけじゃない

いつか私も当たり前の様に

人の親となり

彼女たちと幸せの共有が

できたはずだった

女の幸せとは

一体何なのか

家の事は全くせず

子育てもまかせっきりで

「ただの銀行」と夫を罵り

不満を募らせながらも

日に日に成長していく子供に

幸せを感じて過ごしていく

でもそんな幸せは

ただの私のないものねだり

それはまるで友達のように

私の話を聞いて

「うんうん」と相槌を打ってくれる

当たり前の様にゴミ捨てをして

当たり前の様に家事を手伝ってくれる

でもそんな理想の夫は

彼女たちのないものねだり


きっと誰もが

多くを望んだわけじゃない

日常に追われ流され

きっと忘れているだけ

幸せの尺度や定義が

人によって違うなら

色んな幸せが

あるのかも知れない

ゴミ袋を片手に

歩くあなたの後ろ姿を

ベランダから見送る

「いつもありがとう」と

叫ぶ私の声に振り向いて

恥ずかしそうに足早に去る

今日はお天気も良いし

洗濯物も早く乾くかしら

例え

私のないものねだりは

叶わないとしても

あなたと二人

寄り道をして

小さな幸せを

たくさん

積み上げることに決めました



【第35号投稿 佳作】

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