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「バカにしちゃいけないよ」
まったく何でこんなものを
後生大事にしまってあるんだ
私は
こりゃ怖い物が出て来たと
掃除の手を止める
写真には
行く先を知らない二人が
無邪気に腕を組んで
手紙には
大雑把な文字で
「ごめん」と一言だけで
この二つを結ぶ間には
命懸けの恋があったはずなのに
今ではただの
厄介者でしかないのは
なぜだろう
少なくとも
あの頃の私には
捨てられない想い出だった
何度も捨てようとして
悩んで 苦しんで
それでも
捨てられなかった想い
どうすることもできないままの
あの苦しみの中を
どうやって生きて来たのか
もう良く覚えていないのだけど
いつの間にか
涙で枕を濡らすことも
思い出にすがることもなくなり
挙句の果てには
こんなものが残っている事すら忘れて
過ごしてきました
今の私には
あの頃の思いなど
到底分かるはずもない
時間の流れと並行して
流されていくものがあるみたいね
心の流れを
バカにしちゃいけないよ と
あの頃の自分に
笑いながらつぶやく
写真は灰皿の上へ
手紙は飛行機になって
軽くなった心も
風に乗る
【第34号掲載 「佳作」】




