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3.渓流の石と茶店
○ 渓流石点々 踏石撮香芹(流れの中の石を踏んでいけば、芹が取れるわ)
多謝水上石 教儂不沾裾(ありがとね。裾が濡れないもの)
前の個所と対照的に、彼女を見守る老人が踏んでいく石を教えてあげている情景が浮かびます。
儂は少女の一人称、あたしといったところです。
石の文字が五言の中で位置を変えながら3回出てくることで、「石点々」が視覚的にも印象付けられるわけです。
○ 一軒の茶見世の柳老いにけり
○ 茶店の老婆子儂を見て慇懃に
無恙を賀し且儂が春衣を美
3年ぶりの無事を喜ぶ茶店の老婆も、そこの柳も都会になじんだ彼女からは古ぼけ、老いぼれて見えます。
それは老人の内心の述懐でもあるでしょう。
それに対し、桜でもあしらった着物があでやかで、時の流れが浮かび上がります。