道中
検視官が婆ちゃんを連れていき本当に事件性がないか死因はなんなのか調べている間私達は涙を流し無言で犬達が散らかした部屋を片付けた。
その間に次々と婆ちゃんとの想い出が頭を駆け巡る。
(想い出…③)
高校を卒業し仕事をしながら大学に行き卒業し就職した私は成人式を境にお盆も正月も婆ちゃんの家に行けなくなっていた。
兄も家を出て行き仕事が忙しいらしく中々行き出せない様子だった。
独り身だからお盆や正月は必ず仕事にでないといけなく特に正月は休めない状態だった。
その代わり正月明けに1人車で婆ちゃんの家には行っていた。
「婆ちゃーん来たばーい!」
何時ものように玄関を開けそう言って家に入る。
「よー来たね?きつかったろ?寒かけん炬燵にはいんなっせ!」
これまた何時ものようにそう言って婆ちゃんが顔を出す。
(チーン)
婆ちゃんの家入り何時ものように仏壇に線香をあげ手を合わせる。
小さい頃からしてきた仕草は大人になっても覚えているもので体が勝手に動くものだ。
「さんかけど婆ちゃん風邪引いとらん?」
台所に顔出し私は婆ちゃんにそう言う。
「心配してくれてありがとね!」
婆ちゃんは赤酒の用意をしながら私にそう言う。
そんな婆ちゃんの小さくなった背中を見て
(婆ちゃんも歳をとったな…)
と思っていた。
家を見渡すと私が成人式の時の写真が大切に飾られている。
「明けましておめでとう!今年も宜しくね!」
「こちらこそ!」
婆ちゃんは赤酒を注ぎながらそう言い私は赤酒を飲む。
そして、暫く婆ちゃんとたわいもない世間話を沢山して一晩泊まり翌日ゆっくりして帰るのが社会人になってからの恒例行事になっていた。
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婆ちゃんが連れていかれてからどのくらいの時間がたったか…時計を確認する事すら出来ないくらい落ちていた私達に婆ちゃんの検視が終わったと連絡が来た。
母は父と一緒に警察署に婆ちゃんを迎えに行った。
「行かなんね…」
両親が家をでて一時間くらいだったか、葬儀場が決まり私と妹は車に乗り込み兄は親戚を迎えにそれぞれ出発した。
「婆ちゃん…眠ってりような顔だったね…」
私は妹に言う。
「だって…炬燵に足いれて帰ってきたときは本当に寝とらすだけだと思った…」
泣きながら妹が言う。
「婆ちゃんらしいね…」
「うん…」
妹と二人の車…何時もはアニメやゲームの話で絶えず笑って爆笑するのに今話すのは婆ちゃんとの想い出ばかり…
(あれすかっさんかったよね?買い物は何時も決まってたよね?何時も笑顔だったよね?話聞いて励ましてくれたよね?)
口を開けば二人して婆ちゃん婆ちゃん言って終いには二人してシクシクと泣き出した。
大切で大好きな婆ちゃんを突然失くしたこの悲しみは…この後悔は…時が過ぎても解決はしてくれないだろう…私は口には出さなかったが頭の中ではそれがグルグルと巡っていた。
そして再度思うのである。
【悪い夢であってくれ…早く夢から覚めてくれ…目が覚めたら婆ちゃんがどぎゃんしたと?って言って笑いかけてくれるそんな日常であってくれ…………と………】