突然の知らせ
ノンフィクションではありますが人物名・団体名は仮名なのでご了承ください!
雪の降る昼下がり仕事をしていた私の携帯に仕事で使う道具を取りに兄と出掛けていた母から電話が来た。
「……どうしよう………婆ちゃんが………婆ちゃんが亡くなってた………」
母から泣きながら言われた言葉に私は最初意味が分からずにただ呆然となった。
「えっ……どういうこと?だって日曜日までは元気にしてたじゃん………わかった…わかった……父さんに言うから……一旦電話切るよ…」
私の家族は五人家族でその内の三人は父さんが経営してる会社で仕事をしていて今の仕事が家からかなりの時間がかかるのでその仕事が終るまでと言うことで貸し家で生活していた。
「父さん……」
仕事をしている父に私は声をかける。
「ん?」
父は作業を止め私を見た。
「婆ちゃんが………亡くなったって……母さんから……」
必死に涙を堪えながら私は父にそう告げる。
「はぁ?えっ………婆ちゃんが………」
父は仕事道具を置き泣きながら走り出した。
私は気が動転しながらもすぐに帰らないといけなくなった事を職場の上司にいいに行き、泣いている父と共に荷物を積込一旦借りている家に向かった。
借り家に付き荷物をまとめ一番下の妹に電話をかけた。
「帰ったら亡くなっとらしたと?辛かったね……すぐに帰ってくるからね…待っててね…」
「うん………ただいま~…って帰ったら……うつ伏せになっとらして………婆ちゃんって声かけても返事がなくて…………体触ったら…………冷たくなってて…」
泣きながら妹はそう話した。
母が帰って来て父と泣いた。
私は妹も心配だからと早く行こうと母達を促す。
母は兄が父は私が車に乗せて行くことにし急いで家を出た。
雪が降る中、車の中で私も父も涙に濡れ私の視界は涙でボヤける…しかし、急いで帰らないとと私は思い涙を拭いとにかく車を走らせた。
(想いで・・・①)
物心付く前から私達兄妹は婆ちゃんが大好きだったらしく物心付く頃には皆婆ちゃんっ子になっていた。
兄は斉條 明良(さいじょう あきら)
私は斉條 悠衣花
妹は斉條 舞花の三人兄妹だ。
両親が共働きで家に居ない時は婆ちゃんが電車とタクシーか母が迎えに行き家に来てくれていて学校での話をしたり婆ちゃんの買い物に着いて行ったりしていた。
その反対で婆ちゃんの家に電車で行っていた時もあった。
婆ちゃんはとても温厚で怒ったりした所なんて見たことがなかった。
「婆ちゃん…ただいまー!」
「お帰り!ゆいちゃん!」
「お腹すいたー!おにぎり作って!」
「はいはい」
婆ちゃんは微笑みながらいつものようにそう言って台所に立つ。
私は婆ちゃんが作るおにぎりが大好きで学校が終わり家に帰ると必ずそう言って婆ちゃんにおにぎりを作って貰っていた。
「うん!やっぱり婆ちゃんが作るおにぎりは美味しかばい!」
「ありがとね!そう言ってくれると嬉しかよ!」
婆ちゃんはニコニコしながら私にそう言ってくれる。
婆ちゃんが作った料理は全部美味しくて食べるだけで幸せが溢れてきた。
婆ちゃんの料理は魔法がかかっているみたいだった。
おにぎり以外にも煮しめやカレーも絶品だった。
「婆ちゃんの作る煮しめの味は中々出せんね?」
婆ちゃんが作る煮しめを食べながら母は口癖のように毎回そう口にしていた。
買い物に行くときの婆ちゃんはとても足が速かった。
私と買い物に行っても私の方が先に疲れていた。
その度に婆ちゃんは私の方を向きこう言っていた。
「あそこの木陰でちょっと休憩しようかね?」
近くの自動販売機でジュースを買って木陰で休憩する私を婆ちゃんは優しい顔で見ていた。
小学校を上がり中学生になってからはある程度の事は出きりようになり婆ちゃんが家に来ることが少なくなった。
夏休みは兄も私も部活で忙しく妹がよく婆ちゃんの家に2~3週間泊まっていたと思う。
それでもお盆には墓参りをし、正月には餅つきの手伝いをしに必ず婆ちゃんの家に行っていた。
婆ちゃんの作る煮しめを食べるのも中学の私の楽しみの1つでもあった。
正月、叔父さんが帰ってくるときもお年玉が貰えると喜んでいた記憶がある。
何年経っても婆ちゃんの料理は美味しくて婆ちゃんの家は落ち着く。
あまりの居心地の良さに私も含めてだけど家族全員お昼前まで寝ていたような記憶がある。
私は朝6時くらいに一度目を覚ますことが多々あったその度に台所からトントンと包丁がまな板にあたる音する。その音はリズム良く私の開けた目はまた閉じて2度目の眠りについていたのを今でも覚えている。
―――――――――――――――――――
色んな想い出が蘇りながら雪の道をひたすら走る。
(嘘であってくれ…冗談であってくれ…夢であってくれ…)
私は頭の中で何度もそう叫びながら止まらない涙を拭い拭い車を走らせた。
「遠すぎる…あまりにも遠すぎるよ…」
私はボソリとそう口にした。
「遠いね…早く行きたいのにね…」
そんな私の言葉を聞き父もそう言う。
気が付くと雪だった空はいつの間にか雨に変わって私達の心を表しているようだった。