表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/75

新しい仲間

 スリ師シーフとスマホ争奪鬼ごっこを行い、等価変換の新しい使い方を知った、次の日。


「こんちは。」


 ギルドで依頼を受けて森に向かおうとしていた宗太郎は、大通りで再びシーフと出会っていた。


「ッ!」


 思わず右ポケットを触る。ちゃんとスマホが入っていることを確認して、一応安心。


「もう盗らないよ。アンタが言ったんじゃない、スリするなって。」


 苦笑いしながらシーフが言う。


「じゃあ、俺に何の用なんだ?」


「大した用じゃないよ。ただ、しばらく依頼に同行させて貰えないかな、って。」


「依頼に、同行?」


「うん。スリをしちゃったお詫びと、ゴロツキから助けて貰ったお礼も兼ねて、手伝いでも出来ればなぁって。」


「手伝いねぇ...で?本音は?」


「アンタに付いていれば、金目の物にありつけるかなって思って。」


「おぉ...悪い意味で素直。そういう分かりやすいの、嫌いじゃないよ俺は。」


 そう返す。


「でも手伝いっつったって、具体的には何が出来るんだ?」


「えっと、まずボクには暗躍(スニーキング)っていうスキルがあるんだ。このスキルは自分と、あと1人くらいなら気配を消して目立たなくする事が出来る。これを使えば遭遇したらすぐ逃げるレアモンスターの生け捕りも夢じゃないよ?」


(まぁ、レアモンスターなんてそうそう出逢えるものじゃ無いけど...)


 そんな事実を隠しながら、シーフは自分のプレゼンを行う。


 説明を聞き、さてどうしようかと悩む宗太郎。この世界の事を色々聞ける人が増えるのはありがたいが、彼にはスマホを盗られた前科がある。信用して良いものか。


(まぁ、金目当てならレア素材の1つや2つ分の金をあげときゃスマホを盗る事も無いよな?査定眼使えばそれぐらい簡単に見つかるし。万が一また盗られてもスマホの場所が分かるなら地の果てまで追えば良いしな。うん。)


 そんな風に考え、結論を出す。


「うん、わかった。じゃあよろしく頼むよ。」


 そう軽く言う宗太郎。


「...自分で言うのも何だけど、もっと疑ったりとかしないの?」


 微妙な表情をするシーフ。


「相手の手の内とか考えるのは苦手なんだよ。あっでも、繰り返しになるけど俺のスマホを盗ったりしたら、またあの鬼ごっこだからな?」


「うっ...」


 ブルリと体を震わすシーフ。どうやら若干トラウマになっているようだ。


「ははは。まぁその様子なら大丈夫か。

 あぁそうだ、名前は何て言うんだ?シーフは本名じゃないだろ?」


 これだけ話して相手の通称しか知らない事に気が付く宗太郎。


「シーフでいいよ。そっちの方が慣れてる。」


「そっか、わかった。俺は宗太郎だ。加地宗太郎。じゃあシーフ、最初に言っておくけど俺は東の方の島国出身で、こっちには最近来たばっかりなんだ。分かんないことを色々聞くかもしれないけど、教えて貰っても良いか?」


 馬鹿正直に異世界から来たなどとは言えない為、そういう設定にする。


「うん、別に良いよ。」


 特に疑うこと無く、シーフは頷いた。


「サンキュ。じゃ早速なんだけど...」


 こうして2人は色々と話しながら森へ向かうのだった。




「なるほど。スキルには2種類あって、誰でも発現する可能性があるのが普通のスキル。ただ1人に先天的に宿って、他に使える人が居ないのがユニークスキルね。」


「そう。って、こんな基本的な事も知らないってソータローは一体どんな田舎から来たのさ?」


「すんげぇ田舎から。」


「ふーん。で、ユニークスキル持ちっていうのは大体そのユニークスキル以外はスキルが発現しないのが普通だよ。ユニークスキルに才能の容量を圧迫されてるからだって言われてる。まぁ歴史上には複数のユニークスキルを発現した天才がいたって話もあるけど、本当かどうかは分かんない。」


「へぇー。すげぇ人もいるもんだなぁ。じゃあ俺の等価変換もユニークスキルって奴に入るのかな?ステータスにユニークって書かれてるし。」


「ぶふっ!」


 シーフが急にむせる。


「ん?どうした?」


「いや、自分の持ってるスキルは隠すのが普通なんだよ。特にユニークスキルなんて、手の内を全部明かす様な物なんだから。だから人前では言っちゃ駄目だよ?」


「そうなのか。あれ?でもさっきシーフ、俺に自分の持ってるスキル教えてくれたよな?」


「あれは自分のスキルを明かして信頼して貰おうと思ってたんだけど、その様子じゃ通じて無かったんだね...」


 シーフはガックリと肩を落とした。

 と、そこで2人は森の入り口に到着した。


「さて、森に到着した訳だけど、どうする?暗躍(スニーキング)って奴はもう発動させた方がいいのか?」


 宗太郎がシーフに聞く。


「あぁ、うん。レアモンスターは警戒心が強い奴が多いから、もう発動させた方がいいけど...でも大丈夫?レアモンスターを見つけるって言っても、あいつらは本当に見つかりにくいよ?」


「あー、そこん所は大丈夫だ。俺にアテがあるから。シーフは俺にレアモンスターの名前を教えて、暗躍で俺らを隠してくれれば良いから。」


「アテ...?」


 シーフが首を捻る。


「うん。で、暗躍で2人隠すってどうすれば良いんだ?」


「簡単だよ。暗躍を持ってる人に触れてればいいんだ。」


「ふむ、触れる...じゃあ握手だな。」


 握手しようと手を出す宗太郎。


「っ...」


 差し出された手に、何故か戸惑いを見せるシーフ。


「ん、もしかして手汗とか気になるタイプだったか?だったらごめんな。」


 そう言って手汗を自分のズボンで拭う宗太郎。


「あぁいや、そういう訳じゃない。うん、大丈夫。」


 戸惑いを消し、宗太郎と手を繋ぐ。


暗躍(スニーキング)、発動。」


 シーフが小声でスキルを発動させる。

 宗太郎の感覚的にはあまり変わった感じはしない。しかし、スキルは発動しているのだろう。シーフがこちらを向き、大丈夫という様に頷いてきた。


「...」


 小声なら喋っても問題は無いらしいが、なんとなく無言になって2人は森の中に入るのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ