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初依頼達成、初変換

 クロージャの街の門を出て少し歩き、森に辿り着いた宗太郎。彼は森の入り口でしばらく気圧されていた。

 といっても森が何か威圧感を放っているとかそう言うわけでは無い。気圧されていた理由は情報量の多さからだ。なぜなら宗太郎はクロージャの街からずっと査定眼を使ったままで、森に到着してすぐに森に存在する薬草やら毒消しの実やら毒キノコ、はては只の雑草や木々に至るまで様々なものに照準が当てられ、名前と金額が視界に入ってきたのだ。

 査定眼のある視界に慣らすため、宗太郎はしばらく森の中で周囲を見回す。

 雑草、雑草、薬草、薬草、毒キノコ、雑草、薬草、雑草...


「ん?」


 流し見をしていた宗太郎の視界に、他と少し違う物が映り混んだ。


 雑草:1G

 薬草:100G

 雑草:1G

 上級薬草:10000G

 薬草:100G


 見た目はほぼ同じなのに、他と比べてやけに高額な薬草があるのだ。


「これはあれだ、いわゆるレア素材って奴かな?」


 依頼で必要なのはただの薬草だが、ギルドでは素材の買い取りも行っているとケリナが言っていた。取っておいて損は無いだろう。

 その後査定眼の情報量にも慣れてきた宗太郎は依頼内容の薬草を集めながら、ついでに価格が高い素材も収集するのだった。




「いやー、大漁大漁!」


 数時間後。宗太郎は右脇に薬草を、左脇に高級素材達を抱えてギルドに戻っていた。 

 あの後も査定眼を使っていて気付いたが、見る対象が土の中や木の裏など多少隠れていても自動で照準を合わせてくれる。お陰で素材集めも大分捗ったのだ。


「ケリナさん。依頼の薬草と、あとこっちの素材の買い取りをお願いします、っと。」


 カウンターにドサドサと素材を置く。


「す、すごいですね。冒険者初日でこんなに持ってきた人は初めてですよ。」


 ケリナは引きつりかけた表情を戻しながら素材の鑑定を始める。


「まずは依頼の薬草ですが...はい、確かに10個ありますね。これで依頼達成です。

 後はこちらの素材達ですが...えっ?これって上級薬草?それに、トリュフ石にニジイロテングダケ、槍筍!?うそ...どれも滅多に見つからない希少素材なのに...」


「ケリナさん?」


「っ!す、すみません取り乱しました。では、これらの素材の買い取りですね。えーっと、これら全てで...5万9千Gになります。全て金貨で受け取られますか?」


「5万9千!結構しますね!金貨以外の貨幣も貰えますか?」


「はい、銀貨や銅貨でも受け取れますよ。」


「じゃあ、全部1種類ずつ使って支払って貰えます?小銭欲しいんで。」


「わかりました。」


 ケリナがカウンターから離れ、奥に向かう。しばらくして複数の袋を持って戻ってきた。


「はい、こちらが依頼報酬の千G、こちらが買取価格の5万9千G、合計6万Gとなります。」


 宗太郎が袋を受け取り、中身を確認する。するとまたも査定眼が働き、小銭の価値を測定した。


 小銅貨:1G

 中銅貨:5G

 大銅貨:10G

 小銀貨:50G

 大銀貨:100G

 小金貨:500G

 中金貨:1000G

 大金貨:10000G


(へぇ...五千円札に相当するものが無くて、千円札と一万円札が金貨になってるぐらいで、日本円とほぼ同じだな。)


 ケリナから袋を受け取り、ポケット...には入りきらないのでそのまま手に持つ。


「初依頼達成おめでとうございます。この後はどうされますか?二階の宿に泊まるのでしたらチェックインを行いますが...」


「あー、いえ、とりあえずそっちの酒場で食事します。もしかしたら泊まるかも知れないんでその時は宜しくお願いします。」


「畏まりました。」


 そう言ってカウンターから離れた宗太郎。酒場の端っこの席に移動し、なるべく目立たない様に座る。


「さて、と...」


 ケリナにはああ言ったが、ここに座った目的は食事ではない。この男が収入を手にいれて行う事は1つ。課金である。

 付属スキルである査定眼が使えたのだ。ならば今度はいよいよ等価変換を使って課金を行おうと思っているのである。

 早速スマホと大金貨1枚を取り出し、査定眼で大金貨を見つめる。すると価格のG表示の隣に、さらに日本円表示も現れる。


 大金貨:10000G:10000円


 やはりこの世界の1Gは1円と等しい様だ。スマホを起動し、課金画面に移って準備は万端。


(等価変換、発動!)


 そう頭の中で念じる。すると変化はすぐに起こった。

 左手に持っていた大金貨が消失し、右手に持ったスマホ画面に「一万円分を購入しました」と表示されたのだ。


(よっしゃ!成功だ!)


 思わず小さくガッツポーズを取る。これでこの世界の通貨でも課金が行える事が証明された。これからの依頼攻略にも気合いが入ろうというものだ。

 ルンルン気分で宿を取りに正面カウンターへ戻る宗太郎。その後ろ姿を見つめる1つの視線に、彼は気付くことは無かった。


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