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冒険者講習 1

「そういうわけで、いつまでも頼りっぱなしじゃ駄目だと思ったんですよ俺は。」


 翌日。ギルドの受付で受付嬢ケリナに相談する宗太郎。ちなみにソフィはツルナとの用があるとの事で、今日は一緒ではない。


「なるほど、では加地様は頼りきりでは居たくない、と?」


「ええ。もっと知識をつけたり、レベルを上げたりしたいなって。」


「でしたら、ギルド主催で行っている講習会がありますよ。参加されてみますか?」


「講習会?」


「はい。モンスターの知識を学ぶ座学と、講師相手や生徒の冒険者同士の模擬戦等がありますよ。」


「おぉ!」


 自分の求めているものにうってつけのものがあり、宗太郎は歓喜の声を上げる。


「参加します!」


「分かりました。今日の講習はこの後すぐ始まりますので、しばらくお待ちください。」


「はい、ありがとうございます。」


 そうして講習会への参加を決めた宗太郎は、ギルド内の酒場の端の席でスマホゲームをして時間を潰すのだった。




「...思ったより人居ねえな。」


 数十分後。宗太郎はギルド別室の講習室で席に着いていた。

 部屋の中には長机が3つ並んでいる。椅子にはちらほらと人が座っていて、空席の方が目立っている。


(座学は人気無えのかな?まぁ俺が元居た世界でも授業とか勉強が好きな人間なんて少数派だったし、かく言う俺も授業中に隠れてスマホゲームやってるような人間だったからな...)


 そうこうしているうちに講師がやって来て、授業が始まる。


(さぁ、高校卒業して以来また授業を受けるなんて思ってなかったけど、どんなもんかな。)



 1時間後。


「んー!終わった終わったぁ!」


 大きく伸びをし、体をゴキゴキと鳴らしながら宗太郎は言う。


「いやー、人が少ない理由が分かる授業だったな。先生全然やる気無かったわ。」


 この授業の講師は持っているテキストを読み上げるだけの機械と化していたし、居眠りしている生徒が居ても注意する気配も無かった。


「それでもモンスターについての基本的な事は話してたし、知りたかった事は知れたかな。もう一度受けたいとは思わねーけど。」


 そう呟きながら、宗太郎は講習室を後にした。



 所変わってここはギルド裏手の修練場。

 円形の広場のような場所で、宗太郎は講習開始を待っていた。


(すげぇな、人が多い。さっきの座学とは大違いだ。)


 先程の座学は数人しか居なかったが、今ここには数十人近くの人が居る。

 あの内容だったのもあるし、やはり座学より実技の方が人気なのだろう。


(これだけ人が居るんなら、こっちの内容は期待出来そうかな。)


 宗太郎がそう思う。と、そこで男の講師が現れて、生徒達に向かって話し始めた。


「集まってるな。私が今日の講習を担当させてもらうドーマンという者だ。宜しく頼むぞ。」


 講師ドーマンが自己紹介する。すると生徒達がにわかにざわめき始めた。


「なぁなぁ、ドーマンさんって誰?有名な人?」


 宗太郎が近くに居た生徒に聞いてみる。


「知らないのかお前?ドーマンさんはAランク冒険者だぞ?」


「Aランク?」


 ランクといえば、ギルドに登録している冒険者の等級だったはずだ。ランクは下からE、D、C、B、A、Sなので、彼は上から2番目のランクに所属している事になる。要は実力者ということだ。

 宗太郎がこの世界に来た初日にケリナに教わった事を思い出していると、ドーマンが言葉を続ける。


「よし、まずは基本からだ。剣の素振りのやり方を教えるから、各自始めてみてくれ。」


 こうして実技講習が始まった。



 実技講習は、座学講習が何だったのかと思う程しっかりした物だった。

 剣の素振り練習、防御の練習、地面を転がった際の受け身の練習等、様々な動きの練習を行った。

 そしてしばらくして、ペアを組んでの組手練習が始まった。


「スキルを持ってる奴はまずはスキルを使わずに戦ってみてくれ。今は剣技を鍛える時間だからな。」


 ドーマンがそう注意する。

 宗太郎も木剣を持ち、さっきドーマンの事を聞いた生徒とペアを組んで組手を開始した。

 しかし。


「どりゃあ!」


「あだっ!」


 練習相手の木剣が宗太郎の頭を直撃する。木剣には組手用に布が巻かれているので大きな怪我はしないが、それなりに痛い。


「つぅー...」


「わ、悪い、大丈夫か?」


 地面に座り込んだ宗太郎を心配して練習相手が手を差し伸べてくれる。


「あぁ、大丈夫大丈夫。いい一撃だったよ。」


 その手を取って立ち上がる宗太郎。


(あぁー、そういや俺中学の時に体育でやった剣道もからっきしだったな...)


 そんな事を思い出す。だが泣き言は言ってられない。

 ペアを別の人と交代して挑み続けるも、宗太郎は黒星を重ねるのだった。



「そこまで!」


 ドーマンの声が響き、組手練習が終了する。


「いっつつつ...」


 宗太郎は体のあちこちを打たれ、淡くじんじんと痛んでいた。


「怪我してる奴は居ないか?教会の修道士の方に来て頂いているから、一応全員診察を受けて貰え。」


 ドーマンが全員に向かって話す。その後ろの方にはベテランらしき修道士と、若手に見える修道士の2人が居た。


(そっか、大怪我に至らない小さい怪我を、あの若手の修道士が治して治療の練習をするんだ。

 この講習は新人冒険者を鍛えると同時に、新人修道士の勉強の場でもあるんだ。)


 そう納得する。


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