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幕間 裏路地の道具屋にて 2

 時間は少し戻って数日前。

 宗太郎とシーフもといソフィが教会に入院した翌日。


「ただいまー、ツルナばあちゃん、居るー?」


 教会を退院したソフィは、裏路地の道具屋に顔を出していた。


「ソフィ!」


 カウンターの奥から人が出てくる。この店の店主ツルナがソフィに走り寄り、その小さな体をしっかりと抱き締めた。


「むぎゅっ!」


「あぁ、良かったよソフィ!アンタが連れていかれた時はどうしようかと...」


「っぷは、大丈夫だよばあちゃん。」


「本当かい?教会に入院したんだろう?何処かまだ痛む所は無いかい?」


「大丈夫。ソータローが治してくれたから。」


「あの坊主が?あいつ治癒スキル持ちだったのかい?修道士っていう風には見えなかったけど...」


 ツルナが怪訝な顔をする。が、すぐに興味はソフィに移る。


「ともかく無事に帰ってきてくれて良かったよ。あの坊主には感謝しないとね。」


「あー、うん、ソータロー、ソータローね...」


「ん?どうかしたのかい?」


 なんとも煮え切らない反応をするソフィに再度怪訝な顔をするツルナ。


「どうかした...うん、どうにかなっちゃってるのかも。ねぇツルナばあちゃん、相談したい事があるんだけど。」


「相談?一体なんだい?」


 ツルナが首を傾げて問う。


「なんか、ソータローに助けられてから、ソータローの事が頭から離れないんだ。」


 そう言ってソフィは昨日何があったかを話し始めた。

 廃倉庫に連れ去られた事、宗太郎が助けに来た事、順調に戦っていたが、自分を人質にとられて宗太郎が手を出せなくなった事、袋叩きにあう宗太郎を助けようと拘束を逃れた事、背中を斬られた事、朧気な意識の中で宗太郎の声を聞いた事、その声と共に暖かい何かが流れ込んできて、気が付いたら怪我が治っていた事、宗太郎に抱き締められた事、その時に女である事がバレてしまった事等、色々と話した。

 ツルナは途中途中反応を示しながら、話を聞いてくれた。


「それでボクらはそれぞれ修道士と修道女に保護されて、教会の別々の病棟に入院したんだ。それ以来ソータローとは顔を合わせて無いんだけど、ふとした時にソータローの事考えちゃうし、寝ててもソータローの夢見るし、その度に何だか心臓がドキドキする感じがするの。ねぇツルナばあちゃん、これって何なの?死にかけた事による後遺症?でも嫌な感じは全然しないんだよ。」


 そう話し終えたソフィは不安そうな表情を浮かべてツルナに問いかける。

 対してツルナは呆れた様な表情を見せて、ソフィに教えてやる。


「そりゃお前さん...あの坊主にホの字なんじゃないか?っていうか確実にそうだろ。」


「ホの字?」


「あの坊主の事を好きになっちまったって事だよ。」


「好き...?」


 いまいちピンと来ていない様子のソフィ。


(しかしそうか...この子もついに惚れた腫れたに興味を持つ様になったか...ついこの間この子を変えてくれないかと考えていたもんだが、あの坊主にはそっちの意味でも感謝しないといけないね。)


 ツルナはしみじみとそう考える。


「よく分かんないよばあちゃん。」


 一方まだよく分かって無さそうな様子のソフィ。


「今すぐ分からなくてもいいさ。これから分かっていけば良いんだよ。」


 そう言ってソフィを諭す。


「これから...」


「あぁ。とりあえず今、お前さんはあの坊主とどうなりたい?」


「えっと...今までみたいに、一緒に依頼をこなしたり、レアモンスター捕まえに行ったりしたい。達成した後で、酒場で一緒に美味しいものとか食べれたら、もっと嬉しいかも。」


 ソフィはそんなささやかな願いを口にする。


(要は一緒に居たいって事だね。くぅう、親の贔屓目もあるだろうが、可愛い所あるじゃないか!)


 孫にも等しい子の甘酸っぱい初恋に悶えるツルナ。


「成る程ね。でもお前さんは自分が女だって事をあの坊主に黙っていたんだろう?もしかしたらその事が原因であの坊主とは距離が出来ちまうかも知れないねぇ。」


 だがそんな事はおくびにも出さず、敢えて冷たい事を言う。

 それを聞いたソフィはみるみるうちに愕然とした表情になり、踵を返して一言、


「謝ってくる!」


 そう言った。


「まぁ待ちな。お前さんと違って坊主は結構な怪我が残っていたんだろう?だったらまだ治療中で面会は出来ないはずさ。」


 今にも店を出ていこうとするソフィを窘める。


「それよりも好きな男が出来たってんなら、もっと女らしい格好したらどうだい?とりあえずサラシは外した方が良いと思うよ。」


「そうかな?」


 ツルナに問うソフィ。その後、ツルナに女らしさについてあれこれ教えて貰うも、1割も身に付かなかったソフィであった。


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