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誘拐

 十数日後。その間、宗太郎はシーフと共に依頼を済ませたり、ゲームの新イベントが開催された為、数日間宿に缶詰したりして過ごしていた。

 今日もまたギルドの二階の泊まっている部屋から一階に降りて、ギルド前の待ち合わせ場所に向かう。


(いやー、イベント面白かったなぁ。前のイベントで溶鉱炉に沈んだアイツが今回のイベントのラストで復活して、一緒にイベントボスに立ち向かったのは胸が熱くなったぜ...)


 頭の中でイベントの反芻をして1人でニヤニヤする。

 と、そこでギルドの扉の前が騒がしくなっていることに気付いた。


(なんだ...?)


 気になって近づく宗太郎。どうやら騒ぎの原因はギルドの外にある様だ。


「あの、どうかしたんですか?」


 集まっている冒険者の1人に話しかけてみる。


「あぁ、そこの入り口の所で婆さんが助けを求めててな?」


「婆さん?」


 何か嫌な予感がして、人混みをかき分けて外に出る宗太郎。

 するとそこには、あの裏路地の道具屋の店主、ツルナの姿があった。


「頼む、助けておくれよ!」


「そ、そう言われても...」


 ツルナは冒険者の1人にすがって助けを求めている。

 助けを求められた冒険者は困り顔でどうしたものかと困惑している。


「あなたは...裏路地の道具屋の店主ですよね?どうしたんですか一体?」


 宗太郎がツルナに聞く。

 ツルナは宗太郎を見つけると直ぐに走り寄る。よく見れば頬にアザが出来ていて、来ている服も泥だらけだ。


「坊主!頼む、あの子を、あの子を助けてやってくれ!」


 そしてツルナは何が起きたかを話し始めた。




 時は少し前に遡る。

 元々薄暗いのが、早朝のため輪を掛けて暗い裏路地を2人の人影が歩いていた。


「悪いねぇ、アタシの買い物に付き合わせちまって。この後また例の坊主と約束してるんだろ?」


 荷物を抱えながらツルナは言う。


「これくらい大丈夫だよばあちゃん。それに待ち合わせまでまだ時間あるし。」


 そう言って荷物を抱え直すシーフ。

 2人はしばらく話しながら歩いていたが、路地の奥から3人のフードを被った男達が、まるで道を塞ぐように歩いてきたことで止まざるを得なくなった。

 道を戻ろうとするも、自分達が来た道からも3人の男達が現れて、計6人のフードを被った男達に取り囲まれる状態になるツルナとシーフ。


「小さい方のお前。スリ師のシーフだな。俺達と来て貰おうか。」


 フードの男の1人がそう言う。


(まずい、油断してた...)


 シーフが内心そうごちる。普段1人の時は暗躍(スニーキング)を発動して、こういう自分に恨みを持つ輩から隠れているのだが、最近は宗太郎と一緒にいる事も増えて暗躍を発動している時も少なくなっていたのが仇になってしまった。

 ツルナと共にその場を離脱しようと、ツルナの方に手を伸ばして暗躍を発動させようとする。


「...」


 しかしシーフの手がツルナに届く前に、ヒュッという何かが空を切る音と、バシィッという破裂音。


「がっ...!!」


 そしてツルナに伸ばしていたシーフの手に激痛。

 正面に居た男達の内、先頭の男がいつの間にか片手に鞭を持っている。その鞭でシーフは手を打たれたのだ。


「あんたら何すん...」


 そこまで言った所でツルナは近づいてきた男の1人に横っ面を裏拳で殴られ、裏路地の端にドシャッと倒れ込んだ。


「ばあちゃ...ムグッ!んー!んーッ!」


 ツルナを心配して前に出たシーフだったが、後ろに居た男の1人に羽交い締めにされ、口に布を当てられた。

 布には睡眠薬が付けられていた様で、しばらく暴れていたシーフは段々体から力が抜けて、やがて気絶してしまった。


「連れていけ。」


 鞭を持った男がそう指示をする。

 羽交い締めにしていた男がシーフを脇に抱え直し、他の男達と共に去っていく。


「ぐっ...」


 男達がシーフを連れて去っていく様子を、ツルナは地面に倒れ伏したまま見ていることしか出来なかった。




 話を聞き終え、宗太郎はその場に立ち尽くす。そんな宗太郎にツルナは畳み掛けるように言葉を重ねる。


「お前、あの子とここしばらく依頼を一緒にこなした仲だろう!?あの子に少しでも情を感じてるんだったら、どうかあの子を助けておくれよ!」


「...」


 宗太郎は黙り込む。ここ十数日の間のシーフと過ごした時間を思い出す。


「坊主?」


「...わかりました。俺にどこまで出来るかはわかりませんが、やれることはやってみます。それに...」


 そう言ってツルナに背を向けて歩き出す宗太郎。


「アイツが居ないとレアモンスター生け捕り出来なくて、課金用の金が稼げないもんな。」


 そんな冗談を言いながら、宗太郎は走り出すのだった。


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