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皆空高校至上主義部!  作者: 三枝光吉
3/4

みんな憧れ、その部活

「それでは、10分の休憩の後、文科系の部活動の紹介を行います」


そうアナウンスが入ったのは説明会が始まって40分もしたころだ。


「やっくん、私カバディってやつ、すごくいいと思う」


「そんな体格でやれる競技ではねぇだろ」


「君は今可愛くて健気な幼馴染を一人失ったよ」


「相変わらずすぐ爆発する地雷ですねぇ」


どんだけ体型いじり嫌いやねん。


「まぁそれは置いといて、やっくんはどう?何か運動系で興味あるやつ、あった?」


「あー、まぁ種類が豊富過ぎてイマイチこれ、って奴がねぇんだよな。オーソドックスな部活も結構ガチでやってるし面白そうではあるんだけどなぁ」


「でも基本男子と女子で別れてるし、可愛くて健気で要領がいい完璧幼馴染的には?ちょっと不満ですけど?」


「完璧って自分で言えるその高慢さはすげぇな。身長伸ばしてこいよ(笑)」


「あ?」


「すいませんでした」


ここ最近見たことねぇ顔で凄んでるんだけどこいつこんな迫力あったか?


「ま、文化系の部活見てからじゃねぇかな。仮入部もほとんどの部活にあるし、ここで即決、なんてことはしなくてもいいしな」


「そうだねぇ。あ、休憩終わりじゃない?」


生徒がざわついているのが徐々に静まり、続いて文科系クラブについての説明が始まる。


漫研、科学部、料理クラブ、オーケストラ等々。よくあるものからまぁまぁ見たことない部活まである。


「我々空を飛部では、日夜人間がどうしたら空を飛ぶことができるかを科学している部活であります」


俺調べイチオシの空を飛部も当たり前だが文科系だった。まぁ内容はガッチガチのガチで空に対する追及をしているらしかった。予想以上だわ。そんなふざけた名前でかなりガチやんけ。


予想の斜め上を行っていた空を飛部にさらに好感度が上がったが、専門的な知識がないので泣く泣く彼らと青春を共に過ごすことはないだろう。さようなら空を飛部。陰ながら見守ってるぜ。


「それでは最後に、至上主義部の紹介です」


進行担当の女子生徒がそう紹介すると、次に登壇したのは先ほどの生徒会長その人である。


「先ほどぶりだね諸君。ここからは、私が部長を務める《至上主義部》について話そうと思う」


また変な部活だなとは思う。至上主義部て。語呂悪すぎでは?


「君たちには自らの芯となる主義主張はあるだろうか?学業、交友、恋愛、色々、自ら最も大切にしているモノがあるだろう。私達至上主義部では、そんなそれぞれが掲げる主義主張をお互いに晒し、知見を深めていく部活である。ただし、皆が皆入れるわけではない。己の信念が確固たるものと思う者のみ、我々の扉を叩いてほしい。以上だ」


何かパフォーマンスがあるわけでもない。活動実績が述べられたわけでもない。だが、生徒会長の言葉に正直胸が躍った。切磋琢磨し、お互いを高め合う。なんてすばらしい部活かと。だってそうだろう?()()()()()()()()()()()


正直、高校の部活は専門性が増す。運動系なら大会の規模は中学の比ではないだろうし、文科系でもコンクール等を目指しているのなら中学から続けている方が有利だろう。満足のいく青春を送る、というのは、高校から部活に入ろうとするこの身では非常に難しいのである。


しかしこの部活はどうか。己にある至上主義、曲げない信念さえあれば入れて、志の高い人たちとも付き合える。最高じゃないか?正直、どうすれば青春ができるか悩んでいた俺にとっては垂涎の部活である。


問題はその競争率だろうか。会長の言い分的には、この部活に入れるのは中々狭き門と思える。


ってか美人生徒会長に釣られる奴絶対いるだろ。その証拠に付近の男子生徒は皆生徒会長がいるっていう部活に興味津々といった感じだし。


「やっくんどう?部活、見つかった?」


「...まぁ、候補くらいはな。入れるかどうかはわかんねぇけど」


「えー、どこどこ?私もそこにしようかなぁ」


「至上主義部、ここいいんじゃないかな?事前に必要な経験とかないし、必要な物は自分の信念だろ?それさえあれば入れるんだし、やってみる価値はあるかな」


まぁ狭き門ではあるだろうけど。結局あの生徒会長が居る、という箔のせいで周りの男子学生どもはすでに至上主義部で持ち切りだ。


「えーあそこかぁ...」


「いや蒼は蒼で好きなところに行けよ?お前は中学からやってることもあるんだしさ。俺も無理なら違うところに行くし」


「いやだ。私、今度こそやっくんと同じ部活がいい」


「幼馴染離れ、そろそろしないか?」


こいつこんなに甘えたがりだったか?


「まぁ、競争率高そうだしダメ元さ」


「むぅ」


さて、とりあえず入りたい部活は見つかったし教室にでも戻るかな、と。


そこでふと、俺に対して視線があることに気付く。見ていたのはスーツを着込んだ教師だった。名前は...いや、見たことないな。一年の担当ではないのか?


なにか品定めするような目で見てるのが気になるが、教室に戻らないといけないのもまた事実。さっさと戻ろう。


...今思うと、この教師から目を付けられなければ、あんなことにはならなかったのかも、なぁ...

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